2017年にデザイン変更! スモールDUKEシリーズの長兄「390DUKE」はどんな走り?
オフロードのイメージが強いバイクメーカーKTMが販売する、ネイキッドスポーツのDUKE(デューク)シリーズ。その中でも排気量125cc、250cc、390ccの3つ車両は「スモールDUKEシリーズ」と呼ばれ、なんとフレームが共通なのにエンジンの排気量が異なります。125ccと250ccでフレームが共通なバイクと言えば、ホンダ(HONDA)のCB125RとCB250Rがあります。また250ccと400ccでフレームが共通のバイクと言えば、カワサキ(Kawasaki)のニンジャ250と400が前例としてありました。しかし125ccと390ccという、排気量の差の大きい車両のフレームが共通となると、正直どうなの?というのが390DUKEに試乗する前の印象でした。
KTMの本社はオーストリアにありますが、KTMのスモールDUKEシリーズの生産国はインド。ヨーロッパから輸入するのに比べて、インドからの輸入は関税などのコストが安いことから、スモールDUKEシリーズの価格は比較的リーズナブル。そのため最近は、通勤で見かける機会も徐々に増えてきている印象です。
2017年のモデルチェンジでデザインが変わったことでも話題になったKTMの390DUKE。都内の通勤で1週間試乗したインプレッションをお届けします。
390DUKEの装備をチェック!
KTM 390DUKEの装備でまず特徴的なのが、ヘッドライトデザイン。明るく高級感のあるLEDヘッドライトが納まっていますが、フチにはデイタイムライニングライトが設置され、センターが区切られたデザインです。筆者が友人に390DUKEの写真を見せたところ、「仮面ライダーみたいだね」とコメントをもらいました。うん……確かに見えなくもない。ヘッドライトASSY(ユニット)自体は薄く、横から見るとコンパクトで驚きます。ちなみにテールやウインカー類も、ヘッドライド同様にLEDを採用しています。 サスペンションにはホワイトパワー製のものを採用。ホワイトパワー社は現在KTMと同じグループ企業ですが、他の二輪メーカーにもサスペンションを供給していることでも有名です。390DUKEのサスペンションは、初期の沈み込み量を調整するプリロード調整機構のみ備わっていますが、跨った感じはやや固めの印象。もう少し沈み込むようにセッティングできるようなので、試乗中に調整してみることにしました。 TFTのフルカラー液晶のメーターパネルは非常に明るく、視認性も抜群。小さめのタブレットぐらいの大きさはあります。周囲の光の状態によって自動的にディスプレイの色を調節する機能が備わっているので、常に見やすくなっています。スマホと連動させて使用できるKTM MY RIDEも、ディスプレイで操作可能。インカムを使っていれば、着信やオーディオプレーヤーのコントロールもディスプレイで可能ですが、今回の試乗では使用しませんでした。 ABSは標準装備ですが、リア側のみオフにするスーパーモトモードにしたり、前後ABSをカットしたりすることも可能です。クラッチには、アンチホッピングクラッチを採用。最近の日本車に採用されることの多いスリッパー&アシストクラッチのように、クラッチ操作を軽くしギアダウン時のリアタイヤのロックを緩和します。 ブレーキには、BYBREの4ポッドラジアルマウントキャリパーを採用しています。BYBREとは、ブレーキのメーカーとして有名なBREMBOのBRICおよび、ASEAN地域の中型排気量向け専用ブランドです。セルスイッチには、一度押せばエンジンがかかるまで自動でセルモーターが回転するシステムを採用。国内ではスズキが採用していることが多い機構で、とても便利です。 国内では排気ガス規制や騒音規制がどんどん厳しくなっているため、マフラーも大型なものが多いですが、390DUKEのマフラーは非常にコンパクト。ただしエキパイは太めで、途中から大型の膨脹室を抱えています。
390DUKEの足つきと燃費は?
今回の390DUKEの試乗では、高速域での加速性能を確認するために高速道路を一区間だけ走りました。メインは街中での走行のみでしたが、燃費は25.7km/L。ガソリンタンクの容量は13.4Lなので、計算上の連続航行距離は344.38km。比較的燃費は良い方と言えるでしょう。 カタログを見てみると、シート高は830mmと記載されています。海外メーカーのバイクの場合、シート幅が広くシート高の数値以上に足つき性を悪く感じることもありますが、390DUKEのシート幅は、国内メーカーと同程度。そのため股が開き気味になることはなく、足をおろす際にステップなどが当たることもありません。しかしサスペンションはやや硬めになっているので、シートに座ってもあまり沈み込みません。 しばらく試乗した後にプリロードを調整し、初期の沈み込みが最も大きいセッティングにしてみましたが、あまり大きく変わることはありませんでした。しかし390DUKEの車両重量は163kg。同クラスのバイクと比べても軽量です。身長165cmの筆者が跨ると片足が半分つく程度でしたが、不安は感じませんでした。扱いやすい車体とパワフルなエンジンが楽しい!
国内モデルで400ccクラスの単気筒エンジン搭載バイクと言えば、ヤマハのSR400。クラシックな名車で、トコトコとゆったりした走りが気持ち良いバイクです。390DUKEは、そんなSR400とは全く性格が異なります。とにかくエンジンが鋭く回るので、エンジンを高回転させて走ると気持ち良く感じるバイクです。400ccクラスの中でもトップクラスに車体が軽いので、加速、減速、全てが非常に軽く動きます。390DUKEに採用されている373cc水冷4ストロークDOHC4バルブ単気筒エンジンは、9000rpmで43PSを出力する、少し癖のあるエンジンです。アクセルを開けるととにかくシャープに吹き上がり高回転に達するのですが、回転が落ちると比較的早めにギクシャクし始めるので早めのシフトダウンが必要です。特に街中をゆったりと3速ぐらいで走行している際に回転が2000回転ぐらいまで落ち込むと、エンジンがギクシャクし、慌ててシフトダウンするというケースが試乗中からよくありました。
ハンドリングや車体を倒してのコーナリングはとにかく動きが軽く、やや硬めに感じたサスペンションも粘りのある良い動きをします。Uターンなどの小回りは、回転が落ちるとエンジンがギクシャクするので、1速で半クラッチを使いながら走行すると簡単にできます。とにかくエンジンの癖に慣れて適切なギアに入れながら走れば、とても楽しく扱いやすいバイクです。
高速道路の走行では、剛性不足は一切感じられませんでした。前後サスペンションの動きが良く、エンジンは4000rpmぐらいから盛り上がり始め、7000rpm付近になるとロケットのように加速するので気持ち良く走行することができます。ただ車体が軽いため、横風にはやや弱い印象です。
390DUKEは高速ツーリングより下道ツーリングがおすすめ
390DUKEのエンジンはパワフルで車体も軽量なので、100km/hの連続走行も問題なくこなせます。しかしやっぱり走行していて楽しいのは、軽量な車体を活かした下道ツーリングや山道の走行。それに通勤、通学なんかも楽しくできちゃいます。筆者は通勤時にも試乗したのですが、その際いつもは通らない道を走ってみたり、細い道にあえて入ってみたりしました。Uターンがしづらい狭い道でも、390DUKEは車体重量が軽く取りまわしがラクラク。トラクションコントロールはついていませんが、舗装されていない道も「ちょっと入ってみよう」と思えてしまうのは、車体のコントロール性が極めて良いからです。
休日は目的地を決めずに3時間ほど下道をあちこち走行してみましたが、新しい発見も多く、楽しく走ることができました。390DUKEに乗るのに気負いは必要ありません。一方、いざとなればパワフルなエンジンと軽量な車体でスパルタンに走ることもできちゃう万能バイクでもあります。
390DUKEを少しカスタムするなら
390DUKEをカスタムの定番・フェンダーレス化するなら、リフレクターも変更しちゃいましょう。ノーマルのリフレクターはプッシュピンで止まっており、走行時にビビリ音が鳴って気になりました。ノーマルでも格好の良いマフラーが装着されていますが、音を変えたいならJMCAの認証を取得しているヤマモトレーシング製がおすすめ。ヨーロッパ系のバイクだとアクラポビッチが定番ですが、認証を取得していないモデルも多いので注意が必要。JMCAの認証プレートがサイレンサー裏に装着されていないと、取り締まりされちゃいます。
390DUKEスペック
通称名:390DUKE全長・前幅・全高:カタログ記載なし
車両重量:163kg
カラー:オレンジ/ホワイト
シート高:830mm
価格:62万円