家計簿・家計管理

家計コンサルタント・八ツ井慶子さんが語る!消費増税の乗り越え方

2019年10月、消費税が10%にアップする予定です。では、そのため家計防衛として何をすべきか。そしてすべきではないのか。老後資金づくりとして加入者数が100万を超えた話題の「iDeCo」とあわせて、家計コンサルタントの八ツ井慶子さんが解説します。

あるじゃん 編集部

執筆者:あるじゃん 編集部

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2019年10月、消費税が10%にアップする予定です。では、そのため家計防衛として何をすべきか。そしてすべきではないのか。老後資金づくりとして加入者数が100万を超えた話題の「iDeCo」とあわせて、家計コンサルタントの八ツ井慶子さんが解説します。
 

「悪い支出」をいかに減らせるかがポイント

消費税が上がるということは、支出が変わらなければ、増税分の家計支出が上がるということ。そのための対策として考えられるのは、支出を減らす、収入を増やす、運用で増やす。この3つしかありません。

この中でもっとも後まわしにしたいのが、運用で増やすということ。マーケットの動向に大きく左右されるため、自分の力ではコントロールできません。コントロールできないもので、家計を良くしようという考え方はオススメできません。
 
では、収入アップはどうでしょう。実はこれも容易ではありません。そもそも希望どおり昇給できるかわかりませんし、天引きされる税や社会保険料は右肩上がりの傾向です。そこで、長寿を味方にして「長く働く」という方法があります。つまり、生涯賃金を増やすということ。そのためには、自分に合った仕事を見つけて就くことが大事となります。

 
いかに悪い支出を減らし、良い支出の割合を高めていていけるか

いかに悪い支出を減らし、良い支出の割合を高めていていけるか




そして最後は、支出の削減。家計改善の点から見れば、支出には2種類しかありません。「良い支出」と「悪い支出」です。「必要な支出」と「不要な支出」とも言えるでしょう。自分もしくは家族にとって悪い支出にいかに気づき、いかに悪い支出を減らし、良い支出の割合を高めていていけるかどうか。思い切っていえば支出削減はそれに尽きると言えます。
 
実は、消費増税でもっとも影響を受けるのは、普段からキッチリ家計管理をし、無駄な支出が少ない世帯となります。削る部分がないからです。逆に、家計に無駄がある人は、この増税を嘆くのではなく、家計を見直すキッカケになると前向きにとらえてください。
 

 安易な「増税前の駆け込み購入」はしない

消費税アップでもうひとつ。
増税で消費が落ち込まないよう、売る側、企業もキャンペーンや還元セールなどの対策を取るでしょう。安いからと言って不要なものまで買うことは無意味ですが、いつも支出しているものであれば、やはり安い方が得。そういった情報を得られるよう、アンテナは張っておくことも家計防衛につながります。
 
それとよく話題になるのが、増税前の駆け込み購入。中でも住宅は価格が大きいだけに検討している人もいるでしょう。しかし、ライフプランにおいて購入がちょうどその時期というのであれば別ですが、無理にその時期に合わせて買うことは賛成しかねます。

総務省統計局が5年ごとに行っている「住宅・土地統計調査」の2013年調査によれば、全国の空き家数は820万戸。空き家率は住宅総数の13.5%を占めます。次の調査結果(2018年)の発表は速報でも2019年の夏以降でしょうが、住宅は足りているのに、年間100万戸の住宅が新たに作られています。これでは空き家率は確実に増加しているはず。
 
ここ数年、住宅価格はちょっとしたバブルとなっていますが、供給数から見れば明らかに過剰。このまま価格が高止まりするとは考えにくいのです。

住宅はそうは言っても高額ですから、増税分の2 %は決して少額ではありません。しかし、価格が大きいだけに下落したときの下落幅も大きいのが住宅です。増税分程度は、不動産市況によって簡単に変動します。焦る必要はありません。
 

今後も継続的に働くならiDeCoはメリットあり

最後に、iDeCo(イデコ=個人型確定拠出年金)についても触れます。増税で一層家計を取り巻く環境がきびしくなる中、利用するメリットはあるのでしょうか。

iDeCoの大きなメリットは、税制優遇制度があるという点です。毎月の掛金が全額所得控除の対象となるため、所得税、住民税の節税につながります(他に「運用益の非課税」「受け取り時の控除」もある)。よく「iDeCoの効果は15%の利回りに相当する」と言われるのも、そのメリットを指します。例えば、上限額の月2万3000円(企業年金制度のない企業の従業員など)を積み立てた場合、年間で27万6000円。それが所得控除され、その15%のおよそ4万円の税金が軽減されるというわけです。

ただし、iDeCoを行うことで各種手数料コスト(年間数千円。金融機関によって異なる)が発生するため、実際の効果はもう少し低くなります。それでも、一定の節税効果があり、今後も働き続けるのであれば、それを支払ってでも余りあるメリットといえます。

では、デメリットは何でしょうか。iDeCoは、老後資金づくりに特化した制度です。そのため、積み立てた資金は、原則60歳以降でなくては引き出せません。それをデメリットととらえることもできますが、一方で強制的に資金づくりをすることにもなるわけです。無理のない積立額を設定するなど、上手にその効果を活かすことができれば、一概にデメリットとは言えないでしょう。

それよりも、注意したいのは「長期運用は利益が出る」と考えがちな点。仮に、iDeCoを40歳から始めれば、投資期間は20年。その長さゆえにリスクを気にすることなく、資産が増えるとは、もはや言えない時代かもしれないということです。iDeCoには定期預金型など、元本保証の商品も選択できますが、投資信託などでリスクを取った運用を考えるなら、その点は気をつけたいところです。

そもそも、なぜ国は税制優遇をしてまで、国民に運用を促しているのでしょうか。厚生年金基金の解散をはじめ、機関投資家でも運用難の時代です。それだけ、専門家であってもリスクを取って増やすことが難しい時代です。将来が不安であれば、運用よりも先に取り組みたいのは家計改善(収支コントロール)です。その上で、余裕資金で運用という順番は忘れないでいただきたいなと思います。

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教えてくれたのは……
八ツ井慶子さん
 
 

 

家計コンサルタント。法政大学経済学部経済学科卒業。2001年4月より「家計の見直し相談センター」の相談員として家計コンサルタントとしての活動を始める。13年7月に独立し、「生活マネー相談室」を設立。個人相談を中心に、講演、執筆、取材などの活動を展開。これまで1000世帯を超える相談実績をもつ。著書に『ムダづかい女子が幸せになる38のルール』『レシート○×チェックでズボラなあなたのお金が貯まり出す』など。テレビ、新聞、雑誌などでも活躍中



取材・文/清水京武
 
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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