とはいえ、この記事を読んで「割安株投資をやっていれば、簡単に儲かる!」と勘違いしてしまった方もちらほら居るようですので、今回は、割安株投資の難点についても取り上げることにしました。
2010年以降、割安株投資(バリュー投資)の成績は振るわない
経済学者のKenneth R. Frenchのデータライブラリに掲載されたデータ(1)を分析してみたところ米国株市場において、割安株投資は、1960年代から、50年近く有効性を保ってきました。これは日本株式市場においても同様で、割安株投資の有効性は確認されてきました。特に割安株投資が有効だったのは、2000年から2009年までの10年間で、この期間に割安株投資を始めた方は、大きな利益を残したことでしょう。
しかし、2010年代に入ってからここ10年近く、割安株投資の成績は振るっていません。米国株市場、日本株式市場ともに、「割安株を買うよりも、割高株を買った方が株価が上がりやすい!」という、不思議な現象が起きています。
ITバブル期と同じ現象が起きている
実は、割安株投資のパフォーマンスが優れなかった前例は、他にもあります。その好例が、1990年代後半の、ITバブル期でした。この時期は、次々に上場するIT企業が人気で、割安株の人気は低かった時期でした。ITバブル期は、割安株はほとんど値が上がらず、その代わりに、割高な新興IT企業の株価が、次々に上がっていきました。結果として、米国株市場では、割安株投資はほとんど効果がなく、日本株市場においては、割安株投資は逆効果でさえありました。
2010年以降の株式市場は、「スマートフォンバブル」「SNSバブル」とさえ揶揄できそうな、ITバブル期と似たような特徴が見え隠れしています。このような背景もあり、割安株が注目を浴びにくい市況が続いてきたのでしょう。
割安株投資(バリュー投資)は死んだのか?
とはいえ、ぼくはここで「割安株投資はもう古い」「これからは割高な株を買いましょう!」と言いたいわけではありません。割安株投資は、未だに有効性を保っていると思います。割安株投資は、ぼくが知る限り、もっとも信憑性の高い資産運用術の1つです。 しかし、「割安株投資は有効だと思う」というぼくの見解以上に、ここで強調したいのは、「10年以上、運用成績が振るわない時期があった」という事実です。
ITバブル期には、投資の神様ウォーレン・バフェットは、バブルに乗ることはせず、割安株投資の姿勢を貫きました。当時の投資家達は、バフェットの頑なな様子を見て「時代遅れ」とさえ言いました。
しかし、彼らは近いうちに、自分たちの過ちに気づくことになります。
ITバブル崩壊後、バフェットのことをバカにしていた投資家たちは、バブル崩壊によって多額の資産を失いました。それと同時に、バフェットの賢明さ、聡明さを身をもって知ることとなったのです。
この例を踏まえ、ぼくは、割安株投資は今でも有効だと思います。単純に、「今の市況と合わない」というだけで、いずれ再び、その真価を発揮すると思います。
とはいえ、「10年以上、逆効果でさえあった時期がある」手法であることを、忘れてはいけません。安易に「確実に儲かる!」「簡単に儲かる!」と過信すべきでないことは、言うまでもないでしょう。
まとめ
多くの方は、「短期間でドカンと大儲けしたい!」と期待し、「この方法を使えば確実に金持ちになれる!」などの幻想を抱いています。その幻想は過信を招き、過信は失敗を招くことになるでしょう。資産運用が重要であることは言うまでもありませんが、だからといって過信が許される訳ではありません。これから割安株投資を始める予定の方は、過度な期待を抱くことなく、冷静な態度で投資に臨んでもらいたいものです。
●参考文献
- データ:Kenneth R. French, "Fama/French 5 Factors", Data Library, U.S. Research Returns Data (Downloadable Files), 2018年12月4日時点
- データ:Kenneth R. French, "Fama/French Japanese 5 Factors", Data Library, Developed Market Factors and Returns, 2018年12月4日時点