「やってるふり」でドヤ顔
夫たちは妻の不機嫌が怖いあまり、一生懸命自分を抑えて家事を手伝い、妻の言いなりになっていると、以前の記事(「イマドキ夫たちの家庭処世術とは」)で書いた。ところが妻たちにしてみれば、「家事はやってるふり」「一部をとらえて、全部やっているかのような態度をとるのがムカつく」などの声が多数聞こえてきた。そこで、妻たちが夫にムカつくのはどういうときなのかを尋ねてみた。「ウチの夫は、ゴミ出しだけはしてくれるんです。でもあくまでも、私が分別して玄関に置いたゴミを“出す”だけ。それなのに我が家のゴミ担当は自分だと思ってる。近所の奥さんたちにも『だんなさん、エラいわね』なんて言われてドヤ顔。それがむかつくんですよね。ゴミ収集日も実は知らないくせに」
アユミさん(38歳)は、苦笑しながらそう言った。夫がやっているのは、ゴミに関わる一連の作業において「ゴミを集積場に持っていくだけ」のこと。家の中のゴミ箱をあけて分別し、曜日を確認して玄関に置いておくのはアユミさんがやっているのだ。それなのに、「ちゃんと家事をやっている」という顔をする夫が「許せない」のだという。
「ゴミを持っていくだけだから、子供にさせてもいいんですけどね。夫のほうが早く家を出るから、夫に持って行かせているんです。家事をやっている部類には入らないことだと私は思っています」
なるほど、玄関に置いてあるゴミを無視するよりはマシ、という程度なのだろう。
「しかも帰ってきたとき、『今朝、ゴミ置き場でさ』と近所の奥さんに褒められたとか、いつも家庭的ですねって言われたとか、そういうことを私に自慢するわけですよ。ほんとにあの奥さんがそんなこと言ったの、盛ってるでしょと思うことが多々あります(笑)」
子供のような夫の自慢話を聞くのも大変だとお察しする。
「ごく一部」しかやらないのが、夫の「家事分担」
たとえば料理を作ると宣言して、後片付けはしないままキッチンが鍋やフライパンで山になっている。それでいて、「男の料理だからしかたがないよ」と本人に開き直られたら、妻がムカつくのは当然。「それでも料理作っただけいいでしょ、褒めて褒めてという顔をするのが夫という生きもの」
マユミさん(40歳)はため息とともにそう話す。
「休みの日は、『今日は僕が掃除するから』と張り切るんですが、ものをどけずに掃除機をかけるだけ。だからものをどかすとまたゴミが出る。掃除を全部やってくれるんだと思っていたら、拭き掃除は彼にとって掃除ではないらしい。テレビ台とか出窓の枠なんかは汚れたまま。こういうところはちゃんと拭いてよというと、『拭かなくても大丈夫だよ』と謎の返答。彼に掃除を任せて、私は作り置きのおかずを準備しなくちゃと思っているのに、結局、気になって掃除に手を出さざるを得なくなる。彼は『そんな神経質にならなくても』と言うけど、神経質にさせてるのは誰だよと言いたくなりますね」
マユミさんのようにともにフルタイムで働き、子供も育てている場合は、特に夫の家事がふじゅうぶんだと二度手間になると彼女は怒る。
「全部きちんとできなくても、たとえばリビングだけ完璧にきれいにしてくれれば、そのほうがまだマシ。全体的に手を抜かれると、結局、全部やり直さないといけなくなる」
そしてお決まりの「ドヤ顔」に、さらに神経を逆なでされるのが妻なのだ。
「ろくに掃除もしていないのに、子供に向かって『今日はお父さんが全部掃除したんだぞ、汚すな』って。お父さん、すごいなんて言われてにやけて。子供に、お父さんはろくにお掃除できなかったのよと言うわけにもいかないから、ストレスがたまります(笑)」
妻たちは、ただ文句を言っているだけではない。どうせやるなら、二度手間にならないようにしてほしいと願っているのだ。自分がやるべきことは何か、どうしたらうまく家事の分担ができてお互いがラクになれるのか。そのあたりは、夫婦で冷静に話し合うべきなのかもしれない。家庭は妻だけのものではなく、家族全員のものなのだから。