資産運用/資産運用の注意点とリスク

信用取引の仕組みとは?空売りや保証金…危険はある?

手持ちの資金が足りなくて、希望する株式投資ができない……。投資家の中にはそんな悩みを抱える人もいるでしょう。そんなときに、証券会社に担保として保証金を渡すことで、自己資金以上の取引ができるのが「信用取引」です。信用取引を利用する際はメリットはもちろん、金利や手数料といったコスト、追証等のリスクを理解しておくことが非常に大切です。ここでは、信用取引について知っておきたい情報を詳しく解説していきます。

執筆者:All About 編集部

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・信用取引の「信用」とは?
・制度信用取引と一般信用取引の違い
・信用取引のルール・返済やコストについて知る
・信用取引にはどんなメリットがあるのか
・信用取引のリスク・どうして危険と言われる?


 

信用取引の「信用」とは?

信用取引とは、まさに名称のとおり、「自分を信用してもらいお金を借りて取引をすること」を指します。一般的な現物取引の場合、株式を購入する際にその分の資金を全額用意する必要があります。それに対して信用取引では、足りない資金を証券会社から借りることで、取引することが可能になります。
信用取引とはその名の通り、自分を信用してもらいお金を借りて取引をすることです

信用取引とはその名の通り、自分を信用してもらいお金を借りて取引をすることです


ただし、当然ただで資金を借りることはできません。現金や株式といった「委託保証金」を担保として証券会社に預けることで、証券会社から資金を借りて株式を購入したり(=信用買い)、株式を借りてそれを売却したり(=空売り)することができるのです。信用買いでは、自己資金(担保)の約3.3倍の取引が可能になります。一方で空売りは、証券会社から借りた株式を売り、それを安く買い戻すことで利益を得ることができます。ちなみに信用取引は現物取引と同じ市場で取引をされており、投資対象も同じです。

なお、信用取引をするのに必要な委託保証金の比率は委託保証金率と呼ばれ、法令で30%以上と定められています。比率だけでなく金額にも基準があり、最低でも30万円が必要です。たとえば委託保証金率が30%で、60万円の信用取引をしようと思ったら、計算では60万円の30%=18万円となります。しかし、最低保証金額は30万円以上と定められているので、この例では30万円の委託保証金が必要となるのです。

■信用取引とは……
・信用を元に証券会社から資金を借りて取引すること
・担保として委託保証金が必要
・担保の約3.3倍の取引が可能
・委託保証金は最低でも30万円、かつ取引額の30%以上が必要

 

制度信用取引と一般信用取引の違い

信用取引には「制度信用取引」「一般信用取引」の2種類があります。制度信用取引とは、証券取引所が公表している「制度信用銘柄選定基準」を満たした銘柄のみを対象として行われる信用取引で、取引が可能な銘柄や、借り入れた現金・株式と金利の返済期限が6カ月以内といったことが証券取引所によって決められています。一般的に信用取引といえばこの制度信用取引を指すことが多く、厳しい選定基準をクリアしていることから金利は低めに設定されています。

それに対して一般信用取引では、各証券会社が独自で銘柄を選定し、返済期限などを決めて行われる取引で、取引が可能な銘柄や返済期限は証券会社ごとにそれぞれ異なります。制度信用取引と違い返済期限が6カ月以内と限定されておらずより長期的な取引が可能な一方で、金利は高めに設定されているのが特徴です。
 
  制度信用取引 一般信用取引
取引ルール 証券取引所が決定 証券会社が決定
対象銘柄 制度信用銘柄のみ 原則、全上場銘柄
返済期限 最長6カ月 証券会社やサービスによる(無制限が多い)
信用金利 低め 高め
 

信用取引のルール・返済やコストについて知る

信用取引では借りた資金の返済やコスト等についても知っておく必要があります。押さえておくべきポイントについて見ていきましょう。

■信用取引で借りた資金の返済方法
信用取引で借りた資金は必ず返済する必要がありますが、返済方法は信用買いと空売りでそれぞれ2種類あります。まず信用買いをした場合、購入した株式を売却し借りた資金を返済する「売り返済」と、購入した株式の代金を返済し、現物の株式を引き取る「現引き」という方法があります。また空売りの場合には、売った株式を買い戻して返済する「買い戻し」と、借りた株式と同銘柄・同数を引き渡して返済に充当する「現渡し」という方法があります。
 
信用買いの場合 「売り返済」or「現引き」
空売りの場合 「買い戻し」or「現渡し」

■信用取引にかかる金利や手数料
信用取引を行うには、売買手数料や金利、貸株料がかかります。売買手数料は証券会社に支払う手数料で、現物取引の場合にも支払うものです。一方で金利、貸株料は、現金や株式を借りるために支払うお金です。取引が長期になるほどこれらのコストがかさむため、取引の期間には注意を払う必要があります。また、かかるコストは証券会社によって金額が違うため、取引をする証券会社を選ぶ際にチェックをするのも大切です。
 
販売手数料 証券会社に支払う
金利・貸株料 借りる際に支払う

■追加証拠金(追証)ルール
信用取引をするうえで必要な委託保証金の割合を「最低保証金維持率」といいますが、これを下回ってしまったときには委託保証金を追加で預け入れなければなりません。この仕組みが「追加証拠金=追証(おいしょう)」です。追証になるパターンとしては、信用取引している株式が大きく値崩れし、担保まで減ってしまう場合や、担保にしている株式の価格が下落し、担保の価値が下がる場合などがあります。

 

信用取引にはどんなメリットがあるのか

■レバレッジによる資金効率
信用取引のメリットの1つは、「レバレッジ」の効果がもたらす資金効率の良さです。レバレッジとはいわゆる「テコの原理」のことで、少額の投資資金で大きなリターンが期待できることを意味します。すでに説明したように、信用買いでは、自己資産の約3.3倍の取引ができます。したがって購入した株式の価値が上昇すれば、大きな利益を得ることができるのです。また資金力が増えることによって、銘柄選択の幅が広がるという利点もあります。

■空売りによる差益
もう1つのメリットが、「空売り」ができることです。現物取引では株式を安く買い、高く売ることで利益を得ることができますが、空売りでは、株価が高いとき(=株価が下がりそうなタイミング)に証券会社から株式を借りて売却し、価格が下落したところで買い戻すことでその差益を狙うことができます。株価下落の局面でも利益を狙えるのは、現物取引にはない信用取引ならではの魅力といえるでしょう。

 

信用取引のリスク・どうして危険と言われる?

■レバレッジによる自己資金以上の損失
信用取引のメリットとしてレバレッジの効果を挙げましたが、これはいわば諸刃の剣。リターンの可能性が大きい分、相応のリスクも伴います。つまり、信用取引には自己資金の3倍以上の取引ができて、大きな利益を狙えるメリットがありますが、逆に株価が大きく値下がりすれば、自己資金を超える損失が発生し、大きな負債を抱える恐れがあるのです。したがって、どれだけレバレッジをかけるかについては、注意深く決める必要があります。

追証の期限
もう1つのリスクが、上でも説明した「追証」です。委託金の最低保証金維持率を下回り、追証が発生してしまった場合には、その翌々営業日までに追加の資金を預け入れなければなりません。もしそれができないと、保有している株式などが自動で売却され、返却にあてられることになります。追証のリスクヘッジとして、レバレッジをかけすぎない、株価の影響を受けないように保証金は株式よりも現金を多く入れておく、早めの損切りをするといったことも考えておきましょう。
レバレッジをかけすぎた結果、予想以上の値下がりで膨大な資金追加が必要になる場合もあります

レバレッジをかけすぎた結果、予想外の値下がりで膨大な資金追加が必要になる場合もあります

 

信用取引ではリスク管理が重要!

ここまで見てきたように、信用取引は自己資金以上の取引が可能で、レバレッジ効果や空売りで利益を得るチャンスがあるなど、現物取引にはないメリットがあります。しかしその一方で、レバレッジや追証による損失が発生する可能性など、信用取引ならではのリスクも存在します。これらの両面を踏まえたうえで、信用取引の活用を検討するとよいでしょう。

(監修:酒井富士子/経済ジャーナリスト・オールアバウトマネーガイド)

※投資はリスクを伴います。投資に関する最終判断は、御自身の責任でお願いします。

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