新しいフォルツァはどんな進化を遂げた?
フォルツァ フロントビュー
一時は大きなブームとなったビッグスクーター。ホンダのフォルツァはビッグスクーターブームを牽引した一台です。ブームのピーク時はスピーカーや走行モードの変更機構など豪華装備を備えた仕様でしたが、ブーム収束後は価格の高さが目立ってしまうことに。
各社ビッグスクーターの販売台数は伸び悩みモデルチェンジしないままでしたが、ホンダは2013年にフォルツァSiをリリース。歴代フォルツァのデザインを踏襲しつつ装備をシンプルにし、直前のフォルツァZ(MF10)のリリース時の販売価格が69万3000円だったところを53万9700円まで引き下げました。価格が大幅に下がった要因はシンプルにした装備の他に、国内生産からタイ生産に切り替えた事が挙げられます。
モードチェンジなどは装備されなくなりましたが走りはしっかりと進化させ、ビッグスクーターに本来求められていた「運転が簡単で楽しく、収納スペースが広くて便利な乗り物」という特徴を見直したような一台となっていました。
そして2018年に再びモデルチェンジを果たしてリリースされたニューフォルツァ。果たしてどのような進化を遂げたのか、一週間通勤に使ってインプレッションをお届けします。
フォルツァの価格はどうなった?
先代フォルツァはタイ生産に切り替えることで大幅な値下げに成功しました。新型フォルツァも生産国は同じくタイ生産となっています。しかし先代フォルツァのリリース当時に比べて円高傾向が強まり海外生産のメリットが薄まりつつある事と、排気ガス規制が厳しくなったことで対策が必要となり製造コストが高くなっています。結果、新型フォルツァの販売価格は64万6920円(税込み)。かなり値上がりしましたがABSは標準装備となりました。先代フォルツァのABS付モデルは58万9050円ですので、実質5万7870円の値上がりという事になります。果たして、この値上がり価格は妥当なのか? まずは新しいフォルツァの装備を確認してみました。
新型フォルツァの装備をチェック
装備が大幅にシンプルになった先代フォルツァでしたが、今回のモデルチェンジでは主に使い勝手をアップさせる装備に進化が見られます。まずスマートキーシステム。ビッグスクーター全盛期のモデルにも搭載された装備ですが、スマートキーを持っているだけでエンジンのオン、オフやハンドルロック、シートオープンやフューエルタンクの開閉が可能です。フロント左側にはインナーボックスが配置され、中にはアクセサリーソケットが装備されておりスマートフォンなどの充電が可能。ただしスマホを充電しながら走るなら振動対策は必要と思いました。ウインカーやテールランプ、ヘッドライトなどの灯火類は全てLEDを採用。特にヘッドライトの白い光は高級感があり、明るさも一般的なバルブに比べて明るい印象です。
ビッグスクーターにとって大事なシート下ラゲッジスペースはフルフェイスヘルメット二個を納める事ができる大容量で、セパレートプレートが付属。前後で仕切ったり、仕切りをなくして広く使ったりすることが出来ます。
比較的長めのウインドスクリーンは電動で140mmの稼動範囲を無段階で調整可能。利便性が求められるビッグスクーターでは、後からロングスクリーンを購入して取り付けるユーザーも多いですが、その必要はなさそうです。一番下の状態ではヘルメットから上の風は緩和されませんでしたが、一番上にするとヘルメットにあたる風も緩和させる事ができたので効果は絶大です。
そして安全面ではトルクコントロールが採用されました。ABSがブレーキをロックするのを緩和させるのに対して、トルクコントロールは路面が濡れていたり、荒れていたりした場合に後輪が滑ってスリップするのを緩和させる装備です。
フォルツァのシート高は高くなったが足つき性はどうだ?
先代フォルツァのシート高が715mmだったのに対し、現行モデルは780mmと大幅に高くなりました。シート前方は比較的絞り込まれているものの、シート幅は広いので若干股が広がり足つき性は数値より高く感じます。先代フォルツァと比べると足つき性は悪くなっていますが車両重量は10kgほど軽くなっているので身長165cmの筆者でも不安感はありません。片足ならべったりつきます。リアサスペンションには初期の沈み込みを調整するプリロード機構が備わっています。初期状態よりも更に沈み込み量を大きく設定する事ができるので足つき性が気になる人はプリロードも調整してみると良いでしょう。
新しいフォルツァ 走りはどう変わった?
先代フォルツァの加速感は、PCXのようにフラットでした。現行のフォルツァのエンジンの特性も変わりありません。スペックを見てみても23PS/7500rpmと、先代・現行で変更がありません。大きく変更されたのは足回り。まずタイヤが前後共に1インチずつ径が大きくなっています。現行はフロントが15インチ、リアは14インチになりました。タイヤ幅はフロント120mm、リア140mmで変更がありません。サスペンションは前後共に固めのセッティングになりました。
リアサスペンションはプリロードの調整を最も初期の沈み込み量が大きいセッティングにしてみましたが、それでも先代と比べるとやや固めの印象を受けました。スポーティーに走る時の安定感は増した印象ですが、街乗りではもう少し柔らかい方が運転しやすく乗り心地は良いといえるでしょう。ただ直進走行時の安定性は増しており、コーナリング時も先代に比べて倒しこみが軽くなった印象があります。
ブレーキは前後ともシングルディスクブレーキですが、リアブレーキも比較的よく効くのでABSが標準装備なのはありがたいところ。実際に試乗中にちょっと強めにリアブレーキをかけたところABSが作動しました。以前に比べてABS作動中のガクガク感は弱くなっており、使い勝手が向上しています。
フォルツァの燃費や街中での使い勝手はどうだ?
今回はフォルツァを5日間ほど通勤で使用させていただき、走行距離は250km程度となりました。初日にガソリンを満タンにして実燃費を測定してみたところ31km/Lとなりました。ストップ&ゴーの多い街中の走行ですし試乗テストですので、あえてアクセルを多めに開けたりしたこともありますので燃費は上々と言えるでしょう。
ただ街中に限って言えば、以前のモデルの方が走りの面では良かった点もあります。それは前後のサスペンションのセッティング。違和感を感じるほどではありませんが、前後共に硬くなりスポーティーな走行にもある程度耐えられる方向性に進化しています。
前後タイヤ共に大きくなりコーナリング時には寝かしこみやすくなりましたが、シート高は高くなりライダーがまたがった際のサスペンションの沈み込み量も小さくなりました。結果、足つき性は悪くなった為、街中でのストップ&ゴーは先代フォルツァの方が楽だったのです。
しかしトルクコントロールやABSが装備された事で確実に「安心感」は増していますし、硬くなった足回りも「汎用性が増した」と考える事ができます。5万7870円の値上げ分は装備を考えれば妥当と言ってよいでしょう。
個人的にオススメなのは、日常的な通勤だけでなくツーリングなどマルチに使いたいユーザー層です。豪華になった装備やより洗練されたデザインは以前のモデルに比べても所有欲を満たす仕様となっています。
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