ヨーロッパの旅は鉄道
アルプスの名峰をバックに、インスブルック駅(オーストリア)で出発を待つドイツ鉄道の客車。ヨーロッパの旅は鉄道がおすすめ!
<目次>
- ヨーロッパの旅は鉄道
- ユーレイルパスは31か国の鉄道に乗り放題!
- 2019年からパスの種類が大幅に改定されました。
- ユーレイルパスの種類1:グローバルパス
- ユーレイルパスの種類2:フレキシーパス
- ユーレイルパスの種類3:1か国パス、地域パス
- ユーレイルパスの種類4:セレクトパス
- ユーレイルパスの種類5:セーバーパス
- ユーレイルパスの種類6:ユースパス
- ユーレイルパスの種類7:シニアパス
- ユーレイルパスの買い方、使い方
- 船も乗れます
- 私鉄は基本的には乗れません
- 全席指定列車の場合、予約が必要です
- 日本出発前に予約したい場合
- 様々な特典や割引があります
- どのくらい乗れば元が取れるのか
- 夜行列車を活用しよう!
ユーレイルパスは31か国の鉄道に乗り放題!
イタリアの国境駅で憩うフランスの高速鉄道TGV。パリから放射状に隣国へ路線を延ばしている。
利用範囲はほぼ全てのヨーロッパと言っても差し支えありませんので、逆にこのパスが使えない国を挙げておきましょう。
エストニア、ラトビア、ロシア、ベラルーシ、ウクライナ、モルドバ、アルバニア、コソボ、また鉄道がない国(アイスランド、マルタ、キプロス)です。
ロンドン・St Pancras駅で出発を待つユーロスター。海底トンネルを通ってパリまでわずか2時間半。ユーレイルパスで乗車できる(要座席予約)
イギリスは特に鉄道料金が高いですので、イギリスも含めて数か国周遊したいという場合にはユーレイルパスが非常に便利になりました。
スチーブンソンが製作したロコモーション1号。1825年9月27日、初の商用鉄道としてストックトン~ダーリントン間を走破した。その後の百数十年における世界の鉄道の進歩は目ざましい。
2019年からパスの種類が大幅に改定されました。
イギリスが加わって便利になった反面、2018年まで販売されていたセレクトパスやセーバーパスの販売がなくなり、選択肢が少なくなってしまいました。但し、すでにこれらのパスを購入済みの場合は、有効期限が到来するまで使用することはできます。今後は、複数の国にまたがって乗車する場合は(それがヨーロッパ鉄道旅行の醍醐味ですが)、必然的にグローバルパスを購入することになります。
ユーレイルパスの種類1:グローバルパス
ユーレイルグローバルパスはヨーロッパ31か国の鉄道が乗り放題!
最も基本となるタイプで、有効期間中全ての国で乗り放題となるパスです。15日間用、22日間用、1・2・3か月間用があります。
参考価格 5万5000円前後(2等15日間)、11万3000円前後(2等3か月間)
ユーレイルパスの種類2:フレキシーパス
フレキシーパスはパスを利用する日にちを選べるタイプ
フレキシーパスはパスを利用する日を自分で決めることができる便利なパスです。例えば5日間有効のパスなら、1/1、1/2、1/6、1/9、1/12といった具合に、列車を使わない日は避けて無駄なく使用することができます。ただし、その分お値段はちょっと高めで日数も少な目。3・5・7・10・15日間用があります(3・5・7日間用は1か月間以内、10・15日間用は2か月以内に使用を終える必要があります)。
パスを使う日を予め決める必要はなく、当日乗車前にパスの券面上に自分で使用日の日付を記入します。例えば5日間用であればマス目が5つありますので、その中に使用日を記入していきます。未記入の状態で乗車したり、鉛筆で記入したりすると、怖~い罰金が待っています!
参考価格 3万5000円前後(2等5日間)、6万2000円前後(2等15日間)
ユーレイルパスの種類3:1か国パス、地域パス
様々な国がその国で乗り放題となる1か国パスを販売している
またベネルクス(ベルギー、オランダ、ルクセンブルク)に関しては地域パスとなっており、言わば1か国の扱いでこれらの国を自由に行き来することができます。
さらに北欧についてはデンマーク、スウェーデン、ノルウェー、フィンランドの4か国を自由に回れるスカンジナビアパスも販売されています。
ほとんどのパスがフレキシータイプでの販売です。
ユーレイルパスの種類4:セレクトパス
※2019年以降、販売終了しています。はっきり言って、1回の旅行でヨーロッパ31か国全てを周る人なんてまずいません。セレクトパスは利用できる「国」を選べるタイプです。2か国用、3か国用、4か国用があり、選択する国は隣接していることが条件で、フレキシータイプのパスとなります。
料金は三段階あり、利用国の組み合わせによって料金が変わります。最も高い料金帯に属する国は、ドイツ、フランス、スイス、イタリア、オーストリアの5ヵ国です。また、「ベネルクス3国(ベルギー、オランダ、ルクセンブルク)」、「スロベニアとクロアチア」、「セルビアとモンテネグロ」はそれぞれ1か国としてカウントできるのでお得です。
参考価格 3万8000円前後(ドイツとフランス2等5日間)、5万5000円前後(ドイツとフランス2等10日間)
ユーレイルパスの種類5:セーバーパス
※2019年以降販売終了していますが、一部の1か国パス(ジャーマンレイルパス、ブリットレイルパス等)には存続しています。これは複数名が同一行動する場合に適用される、約15%割引のパスです。グローバルセーバー、フレキシーセーバー、セレクトセーバーなど上記のパスが割引になります。
欠点としては、例えば同行者の1人が「今日は調子悪いからホテルで休んでる~」なんて場合、同行者がパスを利用すれば、パス自体は1枚を複数名で共有しますので、(フレキシータイプの場合は)乗車していない人の分も含めて1日分カウントされてしまうことです。
ユーレイルパスの種類6:ユースパス
パスの使用開始時点で27才までの場合、ユースパスが利用でき、概ね23%割引となります。※パスの種類によって販売条件が異なる場合があります。
ユーレイルパスの種類7:シニアパス
パスの使用開始時点で60才以上の場合、シニアパスが利用でき、概ね10%割引となります。※パスの種類によって販売条件が異なる場合があります。
ユーレイルパスの買い方、使い方
パスの現地購入は割高となる上、パスの種類によっては購入できないものもあるので、日本の旅行代理店、もしくはオンラインでの事前購入がおすすめです。料金はどこで買っても概ね同じですが、多少の違いはあります。後述しますが、座席予約も一緒にできる代理店での購入が便利です。また、パスの送料が掛かる所もありますので、留意してください。パスを利用する前にバリデーション手続きを忘れずに。写真はエディンバラ、ウェーバリー駅の切符販売窓口。2019年、日本の技術で生まれた高速列車、「あずま(AZUMA)」が英国で走り出す!
現地に着いたら、使用開始前に「バリデーション」と呼ばれる使用開始手続きを窓口で行ってください。パスポートとパスを提示すると、券面上にスタンプが押され、使用可能な状態になります。この手続きをしないで乗車すると罰金となる他、バリデーション手続き後は、払い戻しはできません。
船も乗れます
ヘルシンキ港で出航を待つストックホルム行きの豪華フェリー。ユーレイルパスで割引がある。
対象航路についてはこちら
私鉄は基本的には乗れません
JAPAN RAIL PASSがJRしか使えないように、ユーレイルパスも各国の私鉄には基本的には乗車できません。ですが、実際には利用できる私鉄も少なからずあったりしますので一概には何とも言いづらいところです。また、各都市の地下鉄なども基本的に利用できません。悪名高いパリの地下鉄。世界で一番スリの多い場所。ユーレイルパスは使用不可。
ユーレイルパスで利用可能な私鉄はこちら
“世界一遅い特急列車”との愛称を持つ「氷河特急」。スイスアルプスの山の中を横断する絶景の旅。ユーレイルパスで乗車できる。
全席指定列車の場合、予約が必要です
TGVの1等座席。TGVは全席指定制のため、ユーレイルパス所持者でも座席予約が必要。
人影もまばらな夜のアッシジ駅(イタリア)。ヨーロッパの列車は基本的に空いている。
イタリアの高速鉄道フレッチャ・ロッサ(赤の矢)。フレッチャ・ルジェント(銀の矢)、フレッチャ・ビアンカ(白の矢)と共にイタリア各都市を縦横に結ぶ。
日本出発前に予約したい場合
そこで困るのが、行程上どうしても乗らなくてはならない全席指定列車がある場合です。現地に着いてから駅で予約したのでは満席になってしまうかもしれません。そんな時は日本から予約をすることも可能です。座席予約も行うことのできる旅行代理店でパスを買うと便利
様々な特典や割引があります
ユーレイルパスにはレストランやホテルの割引も
割引の対象となる施設についてはこちら
どのくらい乗れば元が取れるのか
ヨーロッパで最も人気と言っても良い観光路線、スイスのユングフラウ鉄道。ユーレイルパスで割引あり。写真はクライネシャイデック付近、名峰アイガーとメンヒをバックに。
実はヨーロッパの特急(に相当する)列車(通称ICと表記されるインターシティー、あるいは同等、もしくは格上の高速鉄道等)はインターネット等で早期に購入することによって、大幅な割引が受けられることが多々あります。残席数によって価格が変動するので、飛行機のLCCに近い感覚と言えるでしょう。3割4割は当たり前、半額以下のチケットだって決して珍しくありません(ただし、変更や払い戻しができないなどの制約が付くことがほとんどです)。JRと比べると割引のスケールが非常に大きいです。
一例として、パリからリヨン(約430キロ、所要2時間。おおよそ東京から米原間に相当)までのTGVを執筆時点の一か月後で検索してみました。2等のフレキシブル(払戻しや変更が自由)のチケットが最高値105ユーロに対して、制約付きの最安値の列車はなんと39ユーロ、しかも1等でも43ユーロという列車があります。それ以外の多くの列車でも2等が50ユーロ前後といったところでしょうか。
早朝のリヨン・パールデュ駅で出発を待つ始発のTGV。一般的に、利便性の低い時間の列車ほど、割引率が高い。
ただし、西ヨーロッパの中でも特に鉄道運賃が安いイタリアや、さらに東欧の方へ行けばもっと運賃が安いですので、元が取れるかどうかはまさにケースバイケースです。東京と新大阪を新幹線で往復しただけで1週間パス(29110円)の元が取れてしまいそうなJAPAN RAIL PASSほどのお得感は、正直なところユーレイルパスにはありません。これはJAPAN RAIL PASSがお得というよりは、JRの運賃が諸外国に比べてそもそも高すぎるという見方もできなくはありませんが。
芸術の国イタリアでは、列車はアーティスト?達から見れば走るキャンバス。技術の粋を集めた高速鉄道が哀れな姿に……
夜行列車を活用しよう!
白のボディーに赤のライン、ドイツの高速鉄道ICE。実は夜行のICEも運行されている。
実はユーレイルパスには夜行列車向けの特別ルールがあり、これまでは19時以降に出発する夜行列車に乗った場合、パスの利用日としては翌日の到着日のみカウントすれば良いことになっていました。
例えばフレキシータイプのパスでパリ発ミュンヘン行きの夜行列車に乗った場合、パスに記入する日付はミュンヘンに到着する出発翌日の日付だけでした。
※重要なルール変更
何十年も親しまれてきたこの19時ルールですが、2019年よりグローバルパス(フレキシー)に関しては到着日ではなく出発日をカウントすることになりました。但し、1か国パスについては従来通りの国もあり、注意が必要です。
また私の率直な危惧として、現地の車掌や係員にこのルール変更がすでに周知徹底されているとは思えませんので、何か言われる可能性があることは想定しておいた方が良いかもしれません。
夜行に乗って、目的地でその日はゆっくり観光したいという場合には今回の改定はプラスに作用しますが、目的地からさらに次の目的地へその日のうちに移動したいなどという場合には、パスがもう一日分必要になってしまいます。いずれにしても1日分の料金で2日にまたがって乗車できる夜行列車には、ユーレイルパスならではのメリットがあります。
寝ている間に目的地に着ける夜行列車。移動効率が良いだけでなく、旅情も深い優れた交通手段。
いろいろ工夫することでユーレイルパスはさらにおトクになりますので、上手にプランを立てて有効利用してください。