スクーターの国、台湾のナンバーワンメーカー キムコ
日本から飛行機で約4時間の立地と親日家が多いことなどで観光地としても人気の台湾。実は台湾はバイクの普及率が非常に高く、二人に一人はバイクを所有しているバイク大国です。そんな台湾のバイクメーカーと言えばキムコ。キムコは過去にはホンダと技術協力を結んで、台湾国内でホンダブランド製品の製造・販売を行っていました。そのキムコが販売する150ccスクーターがRacing S150です。日本では150ccクラスの人気が徐々に高まりつつあり、ホンダのPCX150やヤマハのNMAX155、トリシティ155、マジェスティSなど選択肢が増えつつあります。
果たして、バイク大国台湾の150ccクーターの性能とは? 今回も一週間都内の通勤で試乗してインプレッションします。
スマートウォッチいらず!Noodoe(ヌードー)がすごい!
まず注目してほしいのは、スマートフォンとBluetooth接続することでRacing S150のメーターに様々な情報を表示することが可能なNoodoe(ヌードー)テクノロジーです。使用するにはスマートフォンにNoodoeアプリをダウンロードして使います。iPhone、Androidのどちらもアプリが用意されているのでご安心を。私も色々使ってみましたが、便利に感じたのは自分がいる地域の気温やこれからの天気がわかる機能です。Racing S150は三連メーターになっていますが、真ん中のディスプレイにNoodoeアプリで設定した情報を表示することが可能です。また、ラインやメールなどの受診も通知されるのでスマートウォッチと同じような用途で使えます。周辺のガソリンスタンドの方向なども知ることができるので、ガソリンが少なくなってきた時に便利です。
また今後追加される機能として「ナビ」も準備されているようです。今まではハンドル周りにナビゲーションシステムを装着するか、スマートフォンをアダプターで装着しGoogleマップなどの地図アプリを利用しているユーザーが多かったはず。
しかし、Noodoeならバイクのメーターにナビ情報が表示されるようになるので後付け感がありませんし、何よりハンドル周りがすっきり。スマートフォンが落下するリスクを考える必要もないので画期的といえます。更に、バイクが置いてある場所を表示する「iPhoneを探す」のような機能も搭載されており、万が一盗難などにあった際は車両を探す一助になりそうです。
Racing S150のユーティリティ装備をチェック
日常の足として大事なのはユーティリティ装備。まずシート下ラゲッジスペースですが、深さは浅めで幅は広い形状になっています。公式にはXLサイズのフルフェイスも収まるということになっています。私が試乗時に使っていたSHOEIのJ-FORCE4は収めることができましたが、シートを閉める時に少し力を入れる必要がありました。ヘルメットに傷がつかないか少し心配でしたが、シート裏にクッション素材が張り付けてあるので傷にはならなそうです。また、シートはエンジンがかかった状態でも開けることができる仕様になっています。日本のスクーターのほとんどはエンジンがかかった状態ではシートが開けることができないですが、ちょっとした物の出し入れができるのが意外と便利。
サイドスタンドとメインスタンドは標準装備ですが、日本のスクーターのようにサイドスタンドを出すとエンジンがストップする機構は備わっていません。この点は賛否両論ありそう。サイドスタンドを出したまま走行すると危険ですが、シート下の物をエンジンを止めなくても出せるのに、スタンドを出してエンジンがストップしてしまったら前述の機構の意味がなくなってしまいます。
メインキーの横にはUSBチャージャーがあります。バイク走行中には振動があるので自己責任にはなりますが、チャージャーの下部分には500mlのペットボトルが余裕ではいる収納スペースがあるので、充電中のスマホはここに入れておいても良いかもしれません。心配ならクッション材を入れておくのもありでしょう。
ちょっとした買い物の際に便利なコンビニフックも装備されています。積載量の表記は3キロ。日本のスクーターのコンビニフックの積載量は1キロぐらいになっていることが多いので、かなり余裕があります。
シートはクッション性があり厚めですが左右が絞り込まれており足の上げ下げをしやすい設計になっています。スペック表を見るとシート高は790mmなので決して低くはありませんが、身長165cmの筆者でも片足はベッタリついたので不安はありません。
Racing S150の足回りはスポーティー
Racing S150で走り出してすぐに感じたのが、前後のサスペンションの固さ。スクーターは乗り心地を重視して柔らかいセッティングになっていることが多いですが「Racing」という名前通りスポーティーなセッティングになっています。ただ個人的には凹凸のある一般道であればもう少し柔らかくても良いかなという印象。ただ、リアサスペンションは初期のサスペンションの沈み込み量を調整するプリロード調整機構が備わっています。色々なスクーターを試乗していますが、サスペンションの調整機構が備わっているスクーターは非常にまれです。柔らかく調整してみると乗り心地が非常によくなりました。ただし、マフラーがついている右側は工具を入れにくく、調整がちょっと大変でした。
ブレーキはフロント、リア共にディスクブレーキ。リアはドラムブレーキを採用している車種も多いので豪華な印象。しかも2ポッドキャリパーを採用しています。そのためブレーキのかけ始めから「ガツン」とかなり強力に制動します。これだけ強力なブレーキシステムなら、ブレーキがロックしてしまうのを緩和するABS付も選択肢としてほしいところです。
パワフルなエンジンで圧倒的な加速感
Racing S150には可変バルブ機構が備わっています。6500rpmを境に、低回転時は燃費に優れ、高回転時はパワフルな走りを実現する機構なのですが、実際に走ってみるとアクセルを開けた瞬間から勢いよくエンジン回転が上がり、走行中はほとんど8000rpm以下になることがありません。エンジンの回転と共にアッという間に80km/hぐらいまで加速します。高速道路も走ることができる排気量なので走ってみましたが、90km/hぐらいまではすぐに到達するのですが、それ以上になると加速がかなり鈍化します。100km/hでも巡航することは可能でしたが車格も小さいですし、前後タイヤ共に日本では125ccクラスに装備されることが多い前後12インチのフロント110mm、リア120mm幅が採用されているので、魅力はフットワークの軽さといえるでしょう。
ただ一点ウィークポイントとしては、常にエンジンが高回転状態なので燃費はあまりよくありません。試乗中に何度か給油しましたが、感覚としては30km/L前後でした。ガソリンタンク容量は5.7Lなので大体150kmぐらい走行したら給油するような感じです。
先進の機能、カスタムバイク感、圧倒的な走行性能が楽しい一台あ
アプリでメーターに表示できる項目を変更できる先進装備は、現状では日本のスクーターで採用されている車種はありませんし、ミラーやリアウインカーなどのデザインはノーマルとは思えない「攻めたデザイン」。カスタム感を醸し出しています。
加速にも優れていますし、サスペンションのセッティングもスポーティなので、走行性能をアップさせるようなカスタムを後から行わなくても充分に性能を楽しむことができます。
惜しむべくは連続航行距離が若干短い点ですが、街中で使うには充分といえます。また、これだけの装備を備えながら価格は意外とリーズナブル。Racing S150の販売価格は33万4800円。ライバル車両を見てみるとマジェスティSは37万2600円。NMAX155は37万8000円となっています。
輸入車でここまで価格を抑えてきたのはお見事。ただ、台湾国内ではABS付を選択できるようになっていますので、日本でもABS付も選べるようになってほしいところです。
KYMCO Racing S150関連リンク
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