各国による独自デジタル通貨発行の動き
2018年に入り、各国が国独自の仮想通貨(デジタル通貨)を発行する動きが活発化しています。ここでは、これまでの各国の取り組みをまとめてご紹介したいと思います。まず、2018年以降大きな話題となった、ベネズエラ政府発行の「ペトロ」があります。ベネズエラ政府は自国の原油で通貨を担保すると説明していますが、実際に通貨と交換可能なのは自国通貨ボリバルだけで、そのボリバルはハイパーインフレにより暴落している状態であり、またベネズエラ政府(マドゥロ大統領)への国際的信用が低い状況にあるため、専門家からの懐疑的な声が絶えない仮想通貨となっています。
ロシアでは、再選を果たしたプーチン大統領自らが仮想通貨「cryptoruble(クリプトルーブル)」の発行を指示・決定したと伝えられています。ロシアはマネーロンダリングの温床になりかねないとして、仮想通貨市場への警戒感を露わにしている国のひとつですが、政府管理の閉ざされた中での仮想通貨発は管理が行き届くこと、税徴収のメリットを考え積極的のようです。
このロシアと同じような状況にあるのが中国です。中国では仮想通貨の人民元での取引停止、取引所の閉鎖など厳しい規制を敷いていますが、ブロックチェーン技術による独自の仮想通貨発行の研究を続けています。中国国内のフィンテック企業にブロックチェーン技術の学習を奨励しており、国家独自のコイン作成への土台作りは進んでいる状態のようです。
トルコではトルコの民主主義者行動党の副議長、アフメト・ケナン・タンリクス議員が、国に仮想通貨の発行を求める報告書を作成し、「Turkcoin(トルココイン)」を提案しました。政府系ファンド(トルコ航空、イスタンブール証券取引所、国営宝くじ、ジラート銀行等)によって担保される証券のようなものとされています。今後の動向が注目されます。
マーシャル諸島共和国でも独自の仮想通貨発行の法案が可決しました。この「ソブリン(SOV)」は、ICO(新規仮想通貨発行)を通じて配布される予定で、米ドルとともに流通することを予定しています。
カンボジア政府も独自の仮想通貨「Entapay」発行を検討していると伝えられています。カンボジアでは米ドルが流通しているため、独自の仮想通貨がどのように活用されていくのかその行方や方法が注目を集めています。
国家政策として外国人にもネット上でエストニア国民に準ずる行政サービスを提供し国境を超えた国作りを目指すエストニアは、ICOで「エストコイン」の発行を目指しています。しかし、ユーロに紐づくコインという点でヨーロッパ中央銀行が難色を示しており、スケジュールの発表はまだありません。
その他、ドバイ政府の「emCash」、イングランド中央銀行とイングランド政府の「仮想通貨RS」など、国独自の仮想通貨の発行決定、発行予定、発行計画を行っている国が数多くあり、その数は増加すると予想されます。
独自仮想通貨発行の背景にある各国の思惑も経済状況も様々ですが、この現象は仮想通貨が金融市場にとって無視できない存在になってきていることの証明ともいえるかもしれません。