共済(都道府県民共済)の特徴
選択肢が多いと選べない、少ないと不安…。自分のことだからしっかり考えて選ぶものなのですが…
【1】 選択肢の少なさ
生命保険の商品は、死亡・医療・年金といった区分だけで両手に余ることが珍しくありません。加えて、保障額・期間・特約・保険料払い込み方法など、多くの組み合わせがあります。どこから手を付けたらいいのかわからなくなる人もいるでしょう。
一方、共済の選択肢は限られています。たとえば、申し込みができる満18歳から満64歳の人の場合、「総合保障型」「入院保障型」「総合保障型+入院保障型」の3つで、追加できる特約も4種類にとどまります。
総合保障型にも、掛け金により3つのコースがありますが、18歳から64歳まで均一料金で保障内容もシンプルなので、頭を抱えてしまうようなことにはなりにくいだろうと思います。
本来、選択肢が多いのは悪いことではないはずです。ただ、筆者は弊害を感じているのです。営業担当者などに「皆はどうしていますか?」「おすすめは何ですか?」と質問する人が少なくないからです。
自分自身の問題ですから、保険や共済の素人である「皆」の選択を真似ることはしないほうが良いはずです。営業担当者などの「おすすめ」も、できれば避けるほうが無難でしょう。お金そのものが商品である金融の世界では、手数料等の多寡が商品価値と直結しているからです。
これらは、行動経済学で言うところの「情報負荷」が人の判断を妨げていると思われる例です。私は、営業担当者などの説明が不要なくらい明快な商品やサービスが望ましいと考えます。
【2】 掛け金の安さ
保険や共済で加入者に還元されるのは、保険料・掛け金から運営側の経費を引いた残りのお金です。つまり、加入者全体の収支は、原則、マイナスになります。広く長く利用するほどお金が失われやすい仕組みなのですから、保険料負担などは抑えるに越したことはありません。
保障内容等の面から「『安かろう・悪かろう』ではいけない」と言う人もいますが、保障の対象を、たとえば子育て世代の急死のような「頻発はしないが重大な事態」に限定すれば、安い料金でも手厚い保障が可能になるはずです。
その点、保険や共済の現行商品には疑問があります。1日目からの入院保障など、「発生しやすいが重大ではない事態」を対象にしているからです。
それでも、共済では掛け金2,000円程度の商品が主流です。一生涯の保障を提供していないことや貯蓄性がないことが要因でしょう。また別の機会に詳述しますが、この2点は実は、長所なのです。
【3】 割戻金
一般に、保険も共済も、加入者が出し合うお金で、不測の事態に遭遇した人などを支えることから「助け合い」の仕組みであると説明されます。
とはいえ、それも加入者に還元されるお金の割合次第でしょう。たとえば、保険料には、保険会社の運営に要する費用が見込みで含まれています。人が死亡する確率や入院する確率、運用による収益も見込みで保険料に反映されています。したがって、運営費の割合などは「助け合い」のあり方を考える際、重要な情報です。にもかかわらず、関連情報を開示している保険会社は、筆者が知る限り1社だけです。
実際、複数の保険の専門家によると、売れ筋の「医療保険」で保険料に含まれる運営費の割合は30%程度だそうです。大手の死亡保険では50%超に達すると試算できる商品もあります。これでは「助け合い」どころか「大胆な課金システム」にも見えてしまいます。不測の事態に備える商品であるがゆえに、価格の妥当性が不問にされやすくなっているのではないでしょうか。
共済(都道府県民共済)では、単年度決算の剰余金を「割戻金」として加入者に還元しています。たとえば、平成28年度決算では、掛け金の約30%が払い戻しされています。各種給付金とあわせると、掛け金の約84%が加入者に還元されていることがわかります。
保険会社の中にも、決算時の剰余金を配当金として加入者に還元するところはあります。先日も、新聞記事では大手生保の増配を伝えていましたが、紙面で紹介された契約例では、年間保険料の5%程度でした。
各社のディスクロージャー(公開情報)を見ても、トータルで加入者に還元されるお金の割合はよくわかりません。長期契約が大半である保険と、1年更新の共済の単純比較はできないとしても、お金の流れの「透明性」に関しては、共済に分があると思います。
ここまで書いてきたように、筆者は、共済の特徴について、おおむね好意的に評価しています。より良質な「助け合い」の仕組みについて考える際のヒントが含まれていると思うからです。読者の皆さんにとっても参考になると嬉しいです。
※この記事は、掲載当初協賛を受けて制作したものです。