構造改革終え巣立つ、新たな成長段階に来た外食大手

すかいらーくは国内ファミレス最大手で、国内外で「ガスト」など20ブランド3144店舗を運営しています。予想外の決算から株価は下がっていますが、内容は悪くないと思います。

すかいらーく<3197>は国内ファミレス最大手で、国内外で「ガスト」など20ブランド3144店舗を運営しています。予想外の決算から株価は下がっていますが、内容は悪くないと思います。

すかいらーく<東証1部 3197>はファミリーレストランの業界最大手で「ガスト」をはじめ「バーミヤン」や「夢庵」など洋食・中華・和食のファミリーレストランを国内外で展開しています。2017年12月末時点の店舗数は、国内3092店舗、台湾52店舗の計3,144店舗(内訳は、ガスト1,367店、バーミヤン332店、ジョナサン301店、夢庵194店、しゃぶ葉181店、ステーキガスト137店、その他632店とガストが主力業態となっています)。この規模は、直営レストランチェーンとしては世界最大です。

多様な業態で展開する同社ですが、1970年の「スカイラーク1号店(当時はカタカナでした)」オープンから50余年で開発した業態はなんと100を超えます。

ファミリーレストランのリーディングカンパニー

同社は1981年、ファミレス大規模チェーンで初めてPOSシステム(日通工と共同開発)を全店に導入しました。注文受けが人手を伴う「手書き伝票」からボタン入力の「ハンディターミナル」に代わったほか、販売履歴や在庫管理、発注といった業務がシステム化されたことで、店舗運営の省人化と効率化が図られました。また、1990年代には更なる効率化が図られました。セルフサービスのドリンクバーにワイヤレス呼び出しベルは同社が始めた画期的システムで、現在のファミレス経営の礎となっています。

黄金時代で事業拡大、やり過ぎて不採算店舗増→MBOから構造改革へ

1970年代は、ファミレスが最も輝いていた時代です。同社は1978年には100店舗を達成。1992年には、テーブルサービスレストランとして初めて1000店舗出店を達成し、同時にガストへの業態転換をスタートさせました。すでに同社の業績はセルフ化を進め過ぎたこととメニューが刷新されなかったことなどが原因となって客離れが進んでいました。ところがこの調子で店舗拡大を続け、2002年にはついにグループ2000店舗を達成しました。ただし、これは称賛に値しません。というのは、外食産業における需要を無視した経営拡大だったからです。

1970年代から90年代までの外食産業は良かったです。年間1兆円ずつ市場が拡大し、1992年には30兆円を超えるまでになった黄金時代です。ところがバブル崩壊という経済環境もあって、これをピークに市場成長は止まり、縮小し始めたのでした。(ここ十数年は25兆円程度で安定的に推移しています)

同社はこうした外食産業の市場変化を無視した出店を思い切りやってしまったようです。しかも、展開するブランド同士が競争し食い合う何とも不毛な事態となっていました。

業績悪化に陥り、創業家は経営から背き、ついに2006年には経営再建のためMBOを実施。上場を廃止して野村證券系ファンドの傘下に入りました。ここから不採算業態や店舗の閉鎖を進めるなどの事業改革を進めていきます。2011年に、野村證券系から米ベイン・キャピタルに株式が譲渡されたことで外資系ファンドの傘下で構造改革が進められました。ファミレスの根幹から離れた物流やシステムなどの部門長には各業種から腕利きが招かれました。マクドナルドやユニクロ、スターバックス米国本社など、経営幹部はガストの生え抜き一色から、様変わりしたのでした。改革は加速し、2014年には再上場を果たしました。

そしてついに2017年には米ベイン・キャピタルが全ての株式を売却したことで、本格的に独り立ちすることになりました。成長に向けた積極的投資を進め、事業拡大に実に積極的になっています。

18年12月期は人件費や出店費用など先行投資嵩むが、収益性改善進む見通し

2017年12月期の業績は売上が1.4%増の3594億円、営業利益が10.1%減の281億円、純利益が7.1%減の169億円となっています。

既存店売上高は前年並み、既存店客数は約4億人で前年比1.6%減、一方既存店客単価は989円と前年を1.6%上回りました。

売上は微増にとどまりました。これは、既存店改革を実施するためにクーポン発行枚数を10分の1以下に削減したことが原因と見ています。また減益となったのは、従業員の人件費単価が上昇したことが影響したほか、株主優待拡充による費用増が原因となっています。

人件費の増加については、人手不足という外部環境が変わらない限り今後も継続すると思いますが、その分定着率がアップする施策を講じていたり、生産性が改善するようなシステムに刷新していたりとバックアップが取れていることから、懸念するまでもないと思います。株主優待の拡充について前向きな費用なので問題視しません。

同社は2017年11月に大株主のベイン・キャピタルがエグジットを完了しており、需給悪化も懸念されたくらいですから、むしろこのような施策は株主数の増加に繋がるのでポジティブです。

リモデルで時代ニーズに対応、システム刷新と社員教育で生産性向上へ

経営再建のために踏み切った2006年のMBO以来、野村証券系ファンド→ベイン・キャピタルと、ファンド傘下での経営をしてきた同社ですが、ついに昨年11月にファンド株主のエグジットが完了しました。ファンド下で負の精算、構造改革に取り組み、現在では成長に向けた基盤づくりを推し進めています。

18/12期計画では、200店舗のリモデルが掲げられています(内訳はガスト80店、夢庵・藍屋80店、その他40店)。

リモデルでは、時代に合わなくなった店舗デザインの改善や、1組当り人数の変化に合わせた席数配置の変更、分煙の強化、宴会需要への対応などに取り組んでいます。また、地域特性や消費者の好みの変化に対応するため、ブランド転換の実施を進めています。過去に行ったリモデルは、約5%の売上増という効果を生んでいることから、今期の売上増が期待できます。また、食器やユニフォームの更新などを実施する計画です。

こうした取り組みは、同社が食品スーパーを創業した頃を想起させます。創業者兄弟は、「誰が何の店をやってもすぐつぶれる土地」と言われた立地で、その地域特性やニーズに合った商品を置くことで成功しており、リモデルはここにルーツを持つのではないかと思います。

また同時に、従業員の店舗教育が充実しそうです。動画によるトレーニングツールの導入や教育・研修機会の拡充、クルー評価制度の見直しなどが実施されています。人手不足で人件費が上昇する中、一人の従業員の質を向上させ、定着率をあげるような取り組みが行われているのは好印象です。

先行投資が目白押しといったところで、費用が掛かりそうな点は留意しておく必要があります。

新たな取り組み:成長性の高い宅配サービス

また、宅配サービスが成長ドメインとなってきています。同社は、約1/3の店舗(約3,000店舗中の約900店舗)にて、宅配フードサービス「ルームサービス」を展開しています(宅配料金は無料で、最低1,500円からの注文から受け付可能)。

宅配サービスは、17/12期において8.8%の売上成長となりました。2018年には11%の成長を目指すとしています。2015年から2017年の3年間では年率平均7%の売上成長を記録しており、成長が加速していることが確認されました。

同社では、配達時間の短縮や生産性向上のための投資を進めると同時に、新しい取り組みとして他業態エリア配送の実験をしました。この実験では15-30%程度の売上増となったことから、宅配店舗全店で展開する予定です。既存店売上拡大へのカギとなりそうです。

構造改革の効果発現へ、新たな成長フェーズに来たと判断

精力的に進めている改装など、成長へ向けた先行投資が嵩みますが、今期18/12期には、前期に行った値上げ効果の通期寄与が見込まれるほか、前期を上回る新規出店の効果が期待できると思います。

人手不足の中では人件費の上昇は致し方ないところであり、同社ではシステム導入や教育・研修制度の実施に力を入れ、生産性を改善することで補おうとしています。宅配サービスなど既存店の強化による売上増が確認できれば、生産性向上の効果や新規出店効果による増収増益ペースが確保されると思います。

17/12月末時点の財務内容は、自己資本比率が39.3%、有利子負債が1292億円。150億円の現金等を考慮したネットDEレシオは0.91倍。流動比率0.6倍とパッと見は不安定ではありますが、有形固定資産を必要とする業態である事や人件費上昇を見据えた人材育成費、また時代に合わせた店舗づくりに取り組んでいることから懸念材料ではないと見ます。

17/12期実績ROEは14.1%(16/12期実績ROEは16.8%)

株価下落時において、株主優待は有望

以上、18年2月14日に発表された2017年12月期の業績は増収減益となりました。「ガスト」のメニュー見直し効果などで既存店売上が底堅く推移した一方、人件費の上昇や出店費用、また株主優待を拡充したことによる費用がかさんだことで利益が伸びませんでした。しかし、事業自体は好調であり、これが先行投資であることを踏まえると、悪い決算内容ではないと見ています。

株価が急落した今、利回りも上昇し、買いを検討しても良いタイミングなのではないでしょうか?

株主優待は6月と12月の年2回で、内容は優待食事券です。株価1485円で計算しますと、年間優待利回りは約4%と高く、約2.7%の年間予想配当利回りと合わせた総還元利回りは6.7%になります。ちなみに同社の株主還元は配当性向40%を目途としています。

・12月
100株以上の保有で3,000円相当
300株以上の保有で11,000円相当
500株以上の保有で18,000円相当
1,000株以上の保有で36,000円相当

・6月
100株以上の保有で3,000円相当
300株以上の保有で9,000円相当
500株以上の保有で15,000円相当
1,000株以上の保有で33,000円相当

創業時代:ファミレスを始めるまで

最後に余談ですが、社名の「すかいらーく」は、創業地が「ひばりが丘団地」だったことにちなんでつけられました(ひばり=“skylark”)。

同社の創業は1962年。東京都北多摩郡保谷町(現在は西東京市)ひばりが丘団地に、同社創業家となる横川4兄弟が始めたスーパーマーケット「ことぶき食品」に始まります。

ひばりが丘団地は、当時は「誰が何の店をやってもすぐつぶれる土地」と言われていました。4兄弟はここで創業から3年で6店舗まで広げることに成功しており、この土地についての酷評を吹き飛ばしました。(多すぎるシラスや大きすぎる海苔を小分け販売するなど(冷蔵庫がまだ普及していない時代なので)地域の特性を考えた商売が評判となったのでした。)

ただ、ことぶき食品時代は、1962年から1970年までのおよそ8年間と短く終わりました。高度経済成長期の中で、大型スーパー西友との競争には勝てず、経営が立ち行かなくなったのです。(大型スーパーは多店舗展開によるスケールメリットを活かした低価格で勝負でき、さらに郊外においては大型駐車場も強みに、勢力を拡大していました。)月商は120万円から30万円にまで落ち込んでしまい、赤字経営に陥ってしまいました。

同社はすぐに撤退を決断し、次の事業を模索しました。事業をするなら「必ず消費してなくなるものが良い」との考えから食べ物関係で転業することは決めていました。

国内で外食産業を見て回るも、食堂かレストランのどちらかに絞られる時代です。そんな中で兄弟は、経営の研究団体「ペガサスクラブ」が主催するアメリカ視察に参加し、自動車が普及して「ビッグボーイ」や「デニーズ」などの郊外型レストランが流行っていることに商機を捉えました。日本のマイカー時代を見据え、郊外型レストランへの事業転換を決断しました。

当初は飛ぶ鳥を落とす勢いの米マクドナルドとのライセンス契約を狙っていたそうですが、スーパーの資金を全て売っても資金が足りず、仕方なく喫茶店レストランで開業を果たしたのです。

参考:日本株通信

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