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KLX250のオフロードスピリッツを引き継いだVERSYS-X 250(ヴェルシスX 250)
カワサキの250ccオフロードモデルといえば「KLX250」。バリエーションモデルとして、17インチホイールとロードタイヤを装備したモタードモデルの「DトラッカーX」がラインナップされていました。しかし、新しい排気ガス規制に対応できず、上記2台はカタログ落ちが決定。代わりに250ccにラインナップされたのがVERSYS-X 250です。装備を見てみると、本格的なオフロード走行を想定した装備ではありませんが、砂利道程度であれば走破できる性能を備えた旅特化型バイク。いわゆるアドベンチャーモデルといえます。
ヴェルシスという名称は国内ではあまり馴染みがありませんが、海外向けにはVERSYS650とVERSYS1000というモデルが販売されていましたが、VERSYS1000は2019年に正式に国内導入されました。
カワサキといえば、近年はフルカウルスポーツモデルの「ニンジャ」ブランドとストリートファイターモデルの「Z」ブランドに力を入れている印象が強いです。しかし、排気量別に三車種をラインナップするカワサキ、VERSYSブランドにも力が入っているように感じます。
今回は、ヴェルシスX250に旅を快適にする装備を追加した「VERSYS-X 250TOURER」をお借りして一週間都内の通勤に使用しました。
VERSYS-X 250TOURERで追加された装備とは?
VERSYS-X 250TOURERに追加されている装備はパニアケース、エンジンガード、ハンドガード、DCソケット、センタースタンドの5点です。VERSYS-X 250TOURERは標準モデルと比べて5万4000円(税込み)と高い価格設定になっていますが、5点のパーツを後から購入すると11万2927円(税込み)となります。
5万4000円で11万2927円分のオプションパーツを追加できるわけですし、実際に後から装着しようとしたら取りつけ工賃が別途かかりますから、予算が許すならVERSYS-X 250TOURERを選ぶのがオススメです。
それでは、追加装備をそれぞれ確認してみましょう。パニアケースの開閉はメインキーで可能。容量も充分です。マニュアルには最大積載量の記載はありませんでしたが、しっかりとボルトで固定するタイプなので、ある程度重い物も積載できそうです。ボルト4本での固定なので脱着は比較的簡単ですが、個人的には鍵で簡単に脱着可能になる機構であれば更に使い勝手が良かったと思います。
転倒時に車体を守るエンジンガードは、転倒してしまった際にバイクを起こすのにも便利なので特に女性やビギナーにはオススメ。メンテナンス性がアップするセンタースタンドもありがたい装備です。
ハンドガードは元々オフロード走行時に枝などから手を守る用途として使われていましたが、風除けとしても優秀。試乗したのが2月だったこともあり、指先が冷えるのを防いでくれました。
DCソケットはメーター横に設定されていました。ハンドルやメーター周りにスマホなどをマウントするユーザーは多いと思いますが、この位置なら電源を取るのにも便利です。
VERSYS-X 250の標準装備もチェック
VERSYS-X 250の標準装備もチェックしてみましょう。まずヘッドライト上にマウントされたウインドスクリーン。ほぼ直立に装着されており風除け効果はバツグン。体の中心に当る風を緩和して疲労を軽減します。
次にリアキャリア。荷物の積載量を増やすリアキャリアが標準装備なのはありがたいのですが、今やリアボックスを装着するユーザーも多いはず。VERSYS-X 250のリアキャリアには穴が四箇所しか空いていないので取り付けするリアボックスによっては苦労しそうです。ここら辺はもう少し汎用性を意識して欲しかったところです。
クラッチレバーを軽くし、シフトダウン時に急激なエンジンブレーキによってリアタイヤがロックするのを緩和させるアシスト&スリッパークラッチも標準装備。カワサキはいち早くこの機構を様々な車種に装備させています。排気量の大きいバイクに比べて250ccクラスのクラッチは軽めですが、同機構を取り入れることで更に軽くなっています。クラッチ操作の頻度が多くなる街中の走行も快適に操作できます。
VERSYS-X 250の足つき性をチェック
シート高は815mmと決して低い数値ではありませんが、シートが絞り込まれているので乗車時に股が広がらずに足をおろすことができます。また、サスペンションが柔らかめなので、シートに座るとスッとサスペンションが沈みシート高が下がります。筆者は身長165cmですが車両重量が軽いこともあり足つき性に不安を感じることはありませんでした。ただ、パニアケースがついていることで乗り降りする際に足がパニアケースにあたってしまうことがありました。乗り降りする際にはサイドスタンドを立てた状態で左側のステップに足を置いて勢いよく乗ることでパニアケースに足が当るのを防ぐことができます。パニアケースが装着してあった事で乗り降りが億劫だったのは否めません。ヴェルシスX250を街乗りで使う際にはパニアケースは外してリアボックスなどにした方が使い勝手が良さそうです。
VERSYS-X 250は先代のオフロードバイクとは違った乗り心地
カワサキのオフロードバイク「KLX250」はサスペンションが前後共に硬め。調整はできますが、柔らかめに設定しても比較的硬く感じる印象でした。そのため高速道路やオフロードを走るのには良いのですが、街中を走るには乗り心地が悪く感じました。
それに対してVERSYS-X 250は前後共にサスペンションは比較的柔らかいので街中でも乗り心地は良好。フロント19インチ、リア17インチのタイヤは本格的なブロックタイヤというよりはオンロードよりのパターンが採用されているのでゴツゴツ感もありません。
エンジンは並列2気筒エンジンを搭載しており最高出力は33PS/11500rpm。250ccクラスとしては標準的な馬力ですが、走り出しの低回転域のトルクが若干弱め。逆に5000rpm以上回すとスルスルと加速していきますのでエンジンの回転数をある程度上げてからギアチェンジしていったほうが気持ちよく加速します。
ブレーキ時に車輪のロックを緩和するABSはVERSYS-X 250、TOURER共に標準装備。リアブレーキを強めにかけるとABSが効きやすい感じがしましたが、作動時にバランスを崩すこともなく安心感があります。
VERSYS-X 250の燃費と連続航行距離は?
燃料タンクは17Lの大型タンクが採用されており、実燃費に近いといわれているWMTCモードではカタログ上24.8km/Lとなっています。計算上400km以上走行が可能なのでツーリングにはピッタリです。コーナリング時もハンドリングは素直で走りやすく山道なども軽快に走行することが出来そうです。ハンドルポジションもかなりアップポジションなのでUターンする際などにもポジションに余裕がありライトユーザーも扱いやすそうです。VERSYS-X 250は本格的なオフロードはきついが旅バイクしては最高の一台
ここ数年アドベンチャーバイクが徐々にラインナップに増えてきている印象がありますが、それぞれに個性がありオフロードの走破性もバイクによって様々です。例えばホンダのCRF250RALLYはオフロードの走行性能が高めですし、スズキのVストローム250はオンロードの走行に適していると言えます。VERSYS-X 250はオフロード性能はあまり高くはありません。ロードバイクとしてのキャラクターの方が強い一台です。
しかし、250ccとしては大き目のガソリンタンクや一般的なロードバイクよりはストロークが長めの前後サスペンション、楽なハンドルポジションや快適なウインドスクリーンなど、旅バイクとして必要なアイテムはしっかりと装備されています。林道などを走る本格的なオフロード走行を視野に入れているのであればオススメできませんが、街乗りから長距離のツーリングまで気軽に使える旅の相棒を求めているならピッタリの一台と言えるでしょう。
VERSYS-X 250をちょっとカスタムするなら
VERSYS-X 250のスクリーンステーを使ってみやすい場所にスマートフォンやナビゲーションシステムをマウントするバーを装着する為のステーです。ナビやスマホの画面を確認する際に視点の移動が少ないのもポイントです。
VERSYS-X 250のマフラーを交換するなら素材にチタンを採用し軽量で見た目も美しいオーバーのスリップオンマフラーかオフロードバイクのエキパイ部分だけを交換して気持ちよく走れるようにするSP忠男のパワーボックスパイプのどちらかがお勧めです。もちろん両方共に認証マフラーなので公道走行可能です。