株式戦略マル秘レポート/戸松信博の「海外投資、注目銘柄はここ!」

アリババの株価が急落!買いのチャンスか?

テンセントと並ぶ中国の2大IT企業、アリババの株価が急落しています。決算発表後に下落し、世界株安の影響で急落へとつながりました。この株価急落は買いチャンスなのかどうかを検証します!

戸松 信博

執筆者:戸松 信博

外国株・中国株ガイド

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アリババ<BABA>は決算発表後に株価急落

テンセントと並ぶ中国の2大IT企業、アリババの株価が急落しています。今回はこの株価急落が買いチャンスなのかどうかを検証します!

テンセントと並ぶ中国の2大IT企業、アリババの株価が急落しています。今回はこの株価急落が買いチャンスなのかどうかを検証します!

全ての中国株の中で(本土、香港、米国上場を含む)、テンセント(00700)とアリババ(BABA)の大きさは突出しており(ペトロチャイナやチャイナモバイルの2倍超)、共に日本円で50兆円を超える両社の株価は抜きつ抜かれつで競い合っています。昨年両社の株価パフォーマンスは素晴らしい成績で、テンセントが+114.0%高、アリババ+94.4%高と、この規模で約2倍になりました。

両社は中国の二大巨頭というより、世界のベスト7に入る銘柄で、アップル、アルファベット(グーグル)、アマゾン、フェイスブック、マイクロソフトに肩を並べる存在です。このうちアップルとマイクロソフト以外は20年前に存在すらしなかったか、ごく小さな新興企業に過ぎませんでした。

これらがあっという間に世界最大の時価総額企業となったことで、インターネットの時代となった事を表すのは勿論、今後は独占的に取得するデータを、AIを使って如何にマネタイズできるかという事になります。各社はデータ取得の為、ユーザーと繋がり続けるコンテンツの充実・買収に懸命です。

テンセントは「微信(WeChat)」で10億人と繋がっており、ゲーム、映像、ニュース、SSNのほか、決済分野にも進出し、人々との日常的な関わりを強めます。後を追うアリババのモバイル月間アクティブ・ユーザー数が5億8,000万人に増え(2017年9月末より+3,100万人)、うち4割が日常的に利用するデイリー・アクティブ・ユーザーで、この比率は増えてきており、動画・ニュースなどのメディアサービスも買収で充実し、アリペイ・ウォレット(支付宝銭包)のユーザー数は倍増する勢いです。

そのアリババの株価は2018年に入っても好調に推移し、1月末の終値は204.29ドル、年初来18%ほど上昇していました。しかし2月1日に発表された同社第3四半期(10-12月期)は、予想を超える売上成長だったものの、発表当日の株価は5.9%安と沈み、さらに2日以降は米国株全体が急落したこともあって大きく株価が下げています。

単に大きく上がり過ぎた株価の反動安が出ているところかもしれませんが、決算内容をレビューしておきたいと思います。

2017年4-12月累計決算は予想を上回る売上

2017年4-12月期の累計決算は売上が57.3%増の1883億元、営業利益が56.0%増の601億元、純利益が70.8%増の564億元となっています。

アリババは3月決算期銘柄となります。売上の86%、利益の全てを出すeコマース部門は、主力の天猫(Tmall)が好調を持続し、その総取扱高は前年同期比+43%増となりました。上半期の+49%増からはやや減速しましたが、中国においてネット通販の勢いは衰えていません。アクティブ・ユーザー数も第3四半期に16%増加し、伸び加速しています。海外取引部門も順調に伸びています。

マーケットプレイスにおける手数料収入は第3四半期に33%伸びましたが、同社は出展者から得る手数料を抑えています。代わりに1クリックあたり得る広告収入など、データをマーケティングに活かすことで得られる顧客管理収入に力を入れており、こちらは同四半期に+39%増となりました。

クラウドコンピューティング部門は大幅な成長が続いています。アマゾンにおいて、クラウド事業のAWS(アマゾンクラウドサービス)が大きな成長ドライバーとなっているように、この部門の将来性は大いに期待できます。ただ今のところまだ先行投資段階にて営業損益は20億円の赤字で、前年より拡大しています。

動画共有サイトの「YOUKU(優酷」や「Tudou(土豆)」、UC Web(UC優視)などを運営するデジタルメディア&エンターテインメント部門は、加入者が大幅に増えています。ただ広告収入の伸びは抑えられ、こちらも依然として赤字を続けます。

売上の大幅拡大によって、販売管理費や研究開発費用の比率が減少、そのことで営業利益率や純利益率(税率も減少)も改善し、好決算であったと思います。

売上高は市場予想平均を4%上回る伸びを見せました。一方で、最終一株利益についてはほぼ市場平均通り(0.7%下回る水準)に留まりました。第1、第2四半期がそれぞれ同25%以上超過して着地したことからすれば物足りなかったかもしれません。

背景には主力のeコマース部門の利益率が大きく下がったことがあります。同社は物流のCainiao(菜鳥)を連結し、投資が嵩んでいます。販促費用も増えており、全体に事業投資が利益率を低下させている模様です。

(3)財務グラフと株価チャート
直販型のアマゾンや中国で競合するJD.comと違い、マーケットプレイスの運営に徹する同社はアセットライト型のビジネスモデルとなります。ただしそれはeコマース事業におけるモデルであって、近年の買収によって資産規模は非常に大きくなっています。

ただアセットライト型ビジネスにより、設備投資などの資本的支出は抑えられ、多くのフリーキャッシュフローを生みだすことができます。

無配を続けているため、潤沢なキャッシュフローを買収に向ける事ができます。それでも現金残高は有利子負債を超えるほど残っています。

50%を超える売上成長の続く同社ですが、PERは18年3月期予想で33倍と高めです。割安な時期が長く続いただけに割高感もあるところですが、高い成長が続くのであれば十分許容される範囲と思います。テンセントも同様に高PERになってきています。

株価は昨年大幅高でしたが、ほぼ夏頃に高値位置に達しており、以降は調整ベースを横に歩んでいるという様子です。今回決算直前に期待から上昇し、フラットベースを上に抜けるかに見えましたが、増益ペースが高い期待に追い付かず、今回は上抜け失敗となった様子です。

先行投資費用が膨らむ時期は利益増ペースが落ちることで、株価は調整することが多い

決算は先行投資によって利益は予想内に留まったものの、引き続き売上はハイペースで伸びあがっています。同社は通期の売上成長予想を、従来の49~53%増としていたところから、55~56%増へ上方修正しました。またアリペイを運営するアント・フィナンシャルの株式33%を取得する事も発表しましたが、株価はネガティブな反応となりました。

アマゾンもそうでしたが、やはり先行投資費用が膨らむ時期は利益増ペースが落ちることで、株価は調整することが多いと思います。ただ、投資が実ったアマゾンの株価はその後大幅高で推移しており、アリババについても事業投資の成果を長期的に見て行きたいところと思います。

現在同社はeコマース部門のみが黒字であり、他部門の赤字が一部を相殺する形です。eコマースだけに専念すればもっと増益になるはずですが、有望事業に先行投資を行っている段階です。これらが黒字化すればeコマース部門の黒字がフルに生き、他部門と合わせて大幅増益となって行けます。

参考:中国株通信

※記載されている情報は、正確かつ信頼しうると判断した情報源から入手しておりますが、その正確性または完全性を保証したものではありません。予告無く変更される場合があります。また、資産運用、投資はリスクを伴います。投資に関する最終判断は、御自身の責任でお願い申し上げます。
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