古くて新しい「忖度」という言葉から連想されるストレス

世間で生きることは「忖度」との対峙。だからこそ、「忖度ストレス」をマネジメントできることが重要

世間で生きることは「忖度」との対峙。だからこそ、「忖度ストレス」をマネジメントできるようになろう

多くの流行語が一時的なブームで終わる中、2017年に新語・流行語大賞に選ばれた「忖度」は、この先も定着していく印象の強い言葉です。この言葉は古くからある日本語ですが、2017年に生じた「森友・加計問題」を機に報道で頻回に使われ、一般に広く流布しました。

『デジタル大辞泉』(小学館)によると、忖度とは「他人の心をおしはかること。また、おしはかって相手に配慮すること」。つまり、言葉で確認せずとも他人の思いや希望を汲み取り、気遣いをすることです。

このように、単語元来の意味には、よいイメージも悪いイメージもありません。しかし、この言葉にネガティブなトーンで使われやすい背景には、「忖度」が必要とされる場面で日常的に多くのエネルギーが消耗されること、また、忖度が人間関係の難しさの中核に位置するものになっていることが挙げられるのではないでしょうか。

「この人は顔では笑っているけど、心ではどう思っているのだろう?」「あの場面ではもっと気を利かせて、○○した方が良かったのだろうか」といったことに、人は日々「忖度」を繰り返し、気疲れしているものです。その背景には、雇用の流動性や短期間雇用の増加に象徴されるように、人と人とが長期的で盤石な信頼関係を築きにくい現代の社会状況が、少なからず影響しているものと考えられます。

このように、忖度にストレスを覚えやすい状況は現代を生きる日本人に共通するものであり、こうした背景が”古くて新しい”「忖度」という言葉の流布につながっているものと思われます。

老いも若きも、逃れられない「忖度ストレス」

では、私たちが身近な生活で直面する「忖度ストレス」には、どのようなものがあるのでしょう?

まず、多くの人が思い浮かべるのが職場における人間関係上のストレスでしょう。新しい上司やスタッフが入職する際には多くの人が忖度ストレスに振り回されますし、取引先との付き合いや新しい仕事の開拓を行う際には、顧客ニーズへの忖度を求められます。雇用の不安定性と流動性が高まる中、自身のポジションを確保するには、上司の思惑を常に忖度しなければなりません。このように職業生活を続ける上で、忖度ストレスとの対峙は避けて通れないものになっています。

家族関係においても、忖度ストレスはたびたび生じます。「嫁姑問題」をはじめとする義理の親子関係の難しさは、昔からある忖度ストレスの代表例ですし、長い夫婦生活や親子関係においても、忖度ストレスは度々生じます。さらに現代においては、パートナー間、家族間の関係でもお互いの領域にはむやみに踏み込まない傾向があります。このことにより、個人のプライバシーが守られる安堵感を享受できると共に、互いの気持ちを忖度しなくてはならない場面も増えているものと思います。

子どもたちも同様に、日々忖度ストレスの中で生活しています。学校生活では、「自分は教室の仲間にどう思われているのだろう」「あの時、自分は場の空気にうまく合わせられたのだろうか」といった思いが繰り返し生じます。子どもたちはこうした思いに振り回されながらも、修学という自分の課題を果たすべく日々奮闘しています。特に、個々が親しむ文化の多様化により、共通の話題を通じて存分に語り合う友人との出会いを見つけにくい現代においては、子どもたちの人間関係は浅薄なものになりがちです。こうしたなか、お互いの気持ちを忖度せざるを得ない場面も増えているように思われます。

このように、人と人との関わり方が一時的でドライなものへと変化しがちな現代においては、お互いの本音を多方面から忖度しなければならない場面が増えていることを実感します。だからこそ私たちは「忖度ストレス」に強くなり、また、このストレスと上手に付き合っていくことが必要になります。

そのためには集団生活、個人生活という2つの領域において、忖度ストレスのマネジメントを続けていくことが重要になります。以下に、それぞれのマネジメントにおける重要ポイントを2つずつお伝えします。

集団生活における「忖度ストレス」マネジメント

1. 良好な関係性を築いて「忖度上手」になる
「忖度上手」になるためには、相手の思惑を理解しやすい状況にしていくことが必要になります。そのためには、関わる人々との良好な関係性を築くことが重要です。良好な関係性は、笑顔であいさつする、わからないことは自分から尋ねる、感謝とねぎらいの言葉をかける、といった小さな働きかけの繰り返しによって築かれていきます。このようにして関係性が良好になると、無駄な忖度にエネルギーを費やさずに済むようになります。

2. わからないことは言葉でしっかり確認する
相手の意図が分からない時には、言葉でしっかり確認することが大切です。メールやSNSのみに頼らず、時には直接話して疑問に思っていることを言葉で確認しあうことが重要になります。この労を惜しむとお互いの思惑がずれていき、無駄な忖度と疑心暗鬼が繰り返されてしまいます。

個人生活におけるでできる「忖度ストレス」マネジメント

忖度しなくてよい相手とのひとときは、忖度ストレスを癒せる重要な時間

忖度しなくてもよい相手とのひとときが、忖度ストレスを癒す時間になる

1. 忖度ストレスから離れ、心からほっとできる時間を持つ
日中は職場で忖度、帰宅後は家族に忖度、休日には友人に忖度……といった日常を繰り返しているようでは、気を休める時間も取れません。ときには誰とも会わず、一人でゆっくりと好きなことに時間を費やす時間が、忖度ストレスを癒し、心のエネルギーをチャージするためには必要です。

2. 忖度をしなくて済む相手とのひとときを大切にする
忖度しなくて済む相手と過ごすと、心に安心感が生まれます。思いの丈を存分に吐き出せる相手を持つことは、心の安定に必要なことです。あるいは何も語らなくても、そばにいるだけで思いを分かり合える相手と過ごすことも、とても大切です。忖度しなくて済む相手と共にいれば、一緒にテレビを見たり、食事をとったりするだけでも癒されるものです。そうした相手とのひとときを大切にしましょう。


「忖度ストレス」をマネジメントするには、以上のように集団生活と個人生活という2つの領域での工夫や心がけを続けていくことが大切です。上記の4ポイントを日常生活にぜひ取り入れ、忖度ストレスと上手に付き合っていきましょう。
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