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Z900RSは、有名人にも人気のZ1やZ2をオマージュしたバイク
何十年も前に販売されていたバイクが現在でも圧倒的な人気と知名度を持っていることが稀にあります。カワサキの900Super4、通称Z1(ゼットワン)や750RSやZ750FOUR、通称Z2(ゼットツー)は、1970年代初頭に販売されていたバイクにも関わらず、今でも大変な人気車両で、中古車市場ではプレミア価格で取引されています。
Z1やZ2は様々な漫画などにも登場しており私が知っている限りでも楠みちはる氏の著作「あいつとララバイ」や藤沢とおる氏の「湘南純愛組」やその続編の「GTO」などでも登場しています。
特にGTOは、実写ドラマ化や映画化されたので知っている人も多いはず。2012年にリメイクされたGTOが放送された際には主人公役の元EXILEのAKIRA氏がZ2に乗って登場していたようです。芸能人にもファンが多くお笑い芸人のケンドーコバヤシさんはZ1を所有していることを出演した番組で公表しており、俳優の高橋克典さんはZ2を所有していることを雑誌のインタビューで公表しています。ファンの心を掴んではなさないカワサキの名車Z1、Z2。その名車の名前を引き継ぐ形で発表されたのがZ900RSです。名前どおりデザインはZ1やZ2をオマージュしています。
そもそもZ900RSがオマージュしたZ1とZ2の関係性って?
Z1やZ2が販売されていた当時、日本ではメーカーの自主規制によって750ccを超える排気量のバイクは販売できませんでした。Z1は903ccのエンジンを搭載したバイクなのでメインマーケットは欧米市場でした。Z2は、日本の自主規制に合わせて排気量を落として作られた日本向けのバイクということになります。そのため現在日本で販売されているZ1は逆輸入された車両か、海外で販売されたZ1の中古車を輸入したバイクということになります。
Z900RSの装備をチェック
Z1はリリース当時、優れた性能が海外市場で賞賛されました。いくらZ1が優れたバイクと言っても40年以上前のバイクですから、今乗っても感動することは無いかもしれません。そこでカワサキはデザインをZ1に寄せつつも現代の技術を投入し快適で楽しいバイクに仕上げてきました。その結果、Z900RSは当時とは若干異なる外観となりましたが、旧車が好きな人だけでなく若い人が乗っても違和感なく楽しめる仕様となっています。
まずヘッドライトは伝統的な丸目一灯デザインとしつつもLEDを採用しました。それだけでなくウインカー、ストップランプまで灯火類は全てLED。テールランプはZ1を彷彿させるオーバルデザイン、ウインカーはシャープなデザインが採用されており丸型の大きなウインカーを採用していたZ1と比べると異なるポイントです。
Z900RSの快適性をアップする数々の装備とは?
ライダーをアシストする装備としてはアシスト&スリッパークラッチ。クラッチ操作を軽くし、ギアを落とした際に過度なエンジンブレーキがかかることでリアタイヤがロックするのを緩和するシステムです。今や様々なメーカーがこのシステムを導入していますが、カワサキは導入が早かったためシステムが成熟しており900ccのバイクとは思えないほどにクラッチの操作が軽く感じる仕上がりとなっています。
KTRC(カワサキトラクションコントロール)が搭載されている点も見逃せません。モードは1と2、そしてオフの3つのモードが選択可能です。モード1は加速を優先しているので多少のスリップは許容するモード。モード2は滑りやすいマンホールや踏み切り、砂利道などの悪路を走行する際にも不安なく切り抜けられるというもの。
初めてZ900RSに試乗した日は、東京都心で記録的な積雪を記録した翌々日のことでした。比較的気温が高かったこともあり、大通りは雪がほとんど溶けていましたが、それでも車のタイヤが設置しない道路の真ん中に雪が残っていましたし、路面はチェーンをつけた車がアスファルトを削っているため、砂利が浮いている状態でした。
ある程度滑りそうな道は避けていましたが、それでもKTRCが作動するようなシチュエーションが何度かありました。しかし作動時は極端にガクガクするわけでもなくスムーズに走行が可能でした。
Z900RSの乗り心地は?
早速エンジンをかけてみると迫力のある重厚な音をエンジンとマフラーが奏でます。カワサキはZ900RSのマフラーに排気系のサウンドチューニングを施したと発表しています。確かに重厚感のある迫力のサウンドですが、加速時に聞こえてくるのはマフラーの排気音ではなく、エアクリーナーの吸気音です。
アクセルを開けると同時に「きゅーーーーん」という吸気の音が鳴り響きます。ターボを搭載した車の吸気音のようなイメージです。個人的にはマフラーのサウンドよりも吸気のサウンドの方がスポーティーな印象を強く感じました。
Z900RSのエンジンは、111ps/8500rpmを出力する948cc4気筒エンジンを搭載しています。Z1やZ2は空冷エンジンを搭載していましたが、Z900RSは水冷エンジンを搭載。ただしエンジンのシリンダー部分には、空冷エンジンをイメージさせるフィンが設けられています。
走り出しのトルクは充分。発進時はクラッチを緩めればスルスルっと加速します。車体が215kgとこのクラスにしては軽量なこともあり、加速はなかなか元気なイメージ。CB1300SFやXJR1300などのビッグネイキッドのおおらかな加速とは違い、アクセルに鋭く反応する印象です。
加速の体感的にはヤマハのXSR900やスズキのGSX-S1000に近く伝統的なネイキッドの特性というよりは最近のストリートファイター系バイクの動きに近い印象を受けます。
前後のサスペンションは柔らかめで、リアショックは初期の沈み込み量を調整するプリロードと伸び側の減衰力調整が可能となっています。前述したXSR900やGSX-S1000などは初期のセッティングは硬めにセッティングされていて、街中では若干扱いにくく感じるシチュエーションもありますが、Z900RSは街中での使い勝手もバツグン(GSX-S1000はセッティングでかなり柔らかくすることが可能)。
Z900RSのシート高は800mmと決して低くはないのですが、前述したようにサスペンションが柔らかめなのでバイクに跨るとスッとサスペンションが沈み込みます。また、シート幅が狭いので股が広がらずにスッと足をおろすことが可能。筆者の身長は165cmですが足つき性の不安はあまりありませんでした。ただあと20mm~30mmぐらい下げてくれれば女性や身長が低い人でも不安はないでしょう。
Z900RSのブレーキやハンドリングは?
Z900RSのブレーキシステムは、フロントにダブルディスクの対向4ピストンラジアルマウントキャリパー、リアはシングルディスクにシングルピストンキャリパーを採用しています。スーパースポーツバイクなどにも採用されることがある構成のブレーキシステムですが、街中でも扱いにくいことはありません。制動力に優れつつも扱いやすい印象です。ハンドリングも非常に軽く街中のタイトなコーナーやUターン時も不安がありません。大型初心者でも扱いやすく仕上がっています。
ライバルはXSR900だが、扱いやすさならZ900RSに軍配が上がる
Z900RSはオーセンティックなデザインと軽量な車体、更に元気なエンジンという特徴を持ったバイクです。似たようなバイクと言えばヤマハのXSR900。こちらも同じ特徴を持っています。XSR900のほうが最高出力は5PS高く、車重は20kg軽量です。エンジンの特性はパワーモードで変えることができますが、最もパワフルなAモードは加速が鋭く慣れるまではちょっと怖いかもしれません。
Z900RSも加速はかなり鋭いのですがXSR900よりも車重があることもあり若干マイルドに感じます。前後のサスペンションもXSR900が固めなのに対してZ900RSは柔らかめで街中でも乗り心地が良く扱いやすい印象でした。
また、この2台はスペック表では燃費が大体同じぐらいですが、タンク容量がZ900RSの方が3L大きくなっています。私のように街中の通勤とたまのツーリングがバイクのおもな用途の場合は、断然Z900RSの方がオススメです。ですがスポーツ走行重視ならXSR900の方が限界は高いでしょう。伝説のバイクをオマージュして誕生したZ900RS。思った以上にフレンドリーで扱いやすいバイクでした。
Z900RSのバリエーションモデル
Z900RSにはバリエーションモデルがラインナップされています。フロントカウルとローポジションハンドル、カフェレーサースタイルの段付シートが特徴的なCAFEレーサー仕様です。カウルが装着されているのでツーリング向けともいえますが、シート形状の見直しによってシート高が20mm高く設定されています。足つきが気になる人はZ900RSの方がお勧めです。
Z900RSを少しカスタムするなら
Z900RS CAFEに装着されているビキニカウルの風防効果やスタイルは良いのだけれど足つき性が不安という方は後付けでビキニカウルを装着しちゃうのがお勧め。カフェレーサースタイルっぽい丸型も良いですが、ウインドプロテクション効果を重視した縦に長いタイプのカウルはツーリング向けです。
最近ではリアキャリアを装着する人も多いですが、ネイキッドバイクのリア周りに装着する物と言えば、昔はタンデムグリップでした。私も始めて購入したネイキッドバイクには装着していましたが、Z900RSのオーセンティックなデザインにはよく似合います。