ここに大きな落とし穴があります。同じ立つのでも、いわゆる朝立ちと、性的な興奮によるものとでは種類が違うからです。結論を先にいえば、朝立ちしてもEDになることは珍しくありません。今回はその理由を探ります。
勃起を促すのに欠かせない「性的な興奮」
同じ勃起でも「朝立ち」は性的な興奮とは関係なく、目覚める直前に起こる生物学的な現象
海綿体は、平滑筋という自分の意思では動かせない筋肉と血管とで形作られています。流れ込む血液のコントロールは神経が受け持っています。この神経を介して脳からペニスに性的興奮が伝わると、ペニスの中のある化学物質(サイクリックGMP)の分泌を促します。
この化学物質はペニスの中の動脈を広げるように働きます。その作用で大量の血液が流れ込み、海綿体を満たしてペニスは固くなります。これが勃起のメカニズムです。大切なことは、その始まりが「性的な興奮」にあるということです。
ペニスの中の化学物質の分泌が少ないか、この化学物質を壊す酵素の分泌量が多いと、勃起を保つのに必要な血液が流出します。すると勃起しないか、すぐに萎えてしまいます。この症状がEDです。
朝立ちは一種の生物学的な現象のひとつ
健康な男性の勃起が性的な興奮から始まるのに対し、朝立ちは性的な関わりのない一種の生物学的現象として起こります。長時間正座した後のしびれや、あくびなどの仲間です。多くの男性が経験するように、朝立ちは睡眠中に起きる勃起現象です。健康な男性は一晩に平均8回ほどの勃起を繰り返しています。睡眠には深い眠りと浅い眠り(レム睡眠)があります。このうち、最後のレム睡眠の時に起きるのが朝立ちです。
健康な男性はレム睡眠時に何度も勃起しますが、目覚める直前の勃起は明け方から朝にかけて起きるので、その時間帯に合わせて「朝立ち」と呼ばれます。冒頭で触れたように、この勃起は性的な夢や興奮でもたらされるものではありません。ですから、本来の勃起とは、その状態になるメカニズムが違うのです。
5つの段階から成り立つオトコの性行動
EDかどうかを見極める目安は、ペニスが立つ・立たないではなく、性交ができるかどうか
ですから、性欲とは無関係に勃起することがあるし、勃起していないにもかかわらず射精することもあります。また、性欲は十分あるのに勃起できないこともあります。勃起は複雑なメカニズムによってコントロールされているのです。
では、なぜ朝立ちしてもEDになることが珍しくないのでしょうか? その答は、EDの定義にあります。
簡単にいうと、EDは「性交時に十分な勃起が得られないため、あるいはそれが維持できないため、満足な性交が行えない状態」です。キーワードは「性交」です。
つまり、朝立ちのようにただ「立つ」だけではなく、立った状態を保ちながら性交が成功しなければなりません。要するに、立つ・立たないではなく、性交できるかどうかが、EDかどうかを見極める大切な目安となります。
健全な勃起を助けるように働くED治療薬
健康な勃起の成り立ちのところで説明しましたが、なんらかの理由でペニスの静脈から血液が流れ出すために、勃起を維持できなくなったり、勃起してもすぐに萎えたりするのがEDです。EDになると、性欲は十分あるのにまったく勃起しない、勃起しても十分な硬さが得られない、一旦は挿入しても途中で柔らかくなるといった事態を招きます。その原因はすでに触れたように、ペニスの中の化学物質を破壊する酵素が邪魔をすることによります。
ED治療薬は、この酵素の働きを弱めることで、たとえわずかな量の化学物質でも立派に勃起できるように手助けをします。ED治療薬はストレスや心配事など、精神的な理由によるものには特によく効くので、医師の適切な指導の下で処方してもらうとよいでしょう。
>>朝立ちは、男の健康のバロメーター