自分一人では問題なくできるのに、相手がいるとダメになるのが心因性の典型的な特徴
これらのうち、最も多いのは心因性です。朝勃ちがあり、一人ではできるのに、相手がいるとダメになるのが心因性の典型的な特徴です。精神的なものであるため、そのほとんどが「勃たなかったらどうしようか症候群」とでもいうべきものです。
EDは病気ではなく、症状であると心得よ
すべての病気は必ず原因がある、と書きましたが、厳密にいうとEDは「症状」であって、特定の「病気」ではありません。かぜをひいた時に熱が出るように、ある原因が元になってEDという症状が出るのです。簡単にいうと、勃起はペニスの海綿体に血液が溜まって起こります。しかし、EDになるとさまざまな理由で血液がうまく溜まらなくなります。理由の一つは、血管や神経に障害がある場合。もう一つは、血液を溜めるシステムがうまく働かない場合です。
血管の障害から起こるEDの多くは生活習慣病が引き金になっています。糖尿病や高血圧、喫煙習慣など、血管にダメージを与えることでリスクはぐんと高まります。ですから、EDは病気ではありませんが、血管の病気であることは間違いありません。
生活習慣病ばかりでなく、加齢に伴う動脈硬化もEDを招くリスク要因です。脳梗塞や心筋梗塞のように、動脈硬化からくる病気は生命に関わります。直接生命には関わりませんが、EDもペニスの血管の動脈硬化の一つなのです。
若い人に多い「初回性交の失敗体験」
主に他の病気が原因となって起こるEDに対して、疲れやストレス、プレッシャーなど、精神的な事柄を原因とするのが心因性です。筆者のクリニックを訪れる患者さんのほとんどが心因性特有の症状を訴えます。実際、若い患者さんは高齢者に比べて血管も神経系も正常であることが多いので、全体としても心因性の患者さんの割合が高まると思います。
心因性は過度の緊張やストレス、夫婦関係のズレ、過去の失敗の記憶などから起こります。たいていの場合、ペニスそのものがダメになるのではなく、精神的な理由でうまくいかないのが実態です。
世代別で若い層に多いのが、初回の性交の失敗体験が尾を引いているケースです。いざ事に及ぼうとするたびに「悪夢」がよみがえり、スイッチがオフになる患者さんは少なくありません。長いごぶさたの後でうまくいかなかったことに阻まれる場合もあります。
失敗のフラッシュバックは繊細さの証し?
緊張やストレスばかりでなく、過去の「悪夢」がEDを引き起こすことも多い
働き盛りの層では、仕事上のストレスや不安、家庭内の問題、夫婦間の行き違いなど、「その気」になる以前のさまざまなプレッシャーによるEDが増える傾向にあります。その結果、心ならずも中折れしてゲームセットしてしまうのです。また、パートナーの期待に応えようとするあまり、気持ちが空回りしてうまくいかないケースもあります。
取り上げた一つひとつの症状は異なりますが、共通するのは「勃たなかったらどうしようか」という先回りの不安がもたらす症候群と考えてよいでしょう。
EDが離婚原因として認められることも
定年後の年齢層になると、社会との関わりが薄くなったり、仕事という大きなやりがいを失ったりすることによる一種の喪失感が引き金になることもあります。人によっては、うつ傾向が表れることもあります。EDが見過ごせないのは、子どもを望みながら性交ができないために懐妊できないということがあるからです。実際、EDは男性不妊の原因の2割を占めるという調査結果があります。EDを離婚原因として認める判例もあります。
往々にして、男性は繊細であるばかりでなくプライドも高いので、EDによる衰えが心身両面の自信喪失につながることも珍しくありません。
ED治療薬は、勃起を手助けすることで男性としての自信を後押しする効果があります。医師の適切な指導の下で処方してもらえば「勃たなかったらどうしようか」という不安から解放されることでしょう。
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