長生きリスクに備える!生命保険会社がトンチン保険を発売
2017年9月、国は「人生100年時代構想会議」を設置、人生100年時代を見据えた経済・社会システムを実現するための政策のグランドデザインに係る検討を行い始めました。今や、人生は100年超で考えないといけないということですね。今後、国がどのようなグランドデザインを描き、どんな政策を実現していくかは見守るとして、個人レベルの問題に落とし込むと、老後の生活費の確保に自助努力が必要だということは理解できるでしょう。
さて、トンチン保険は、17世紀のイタリア人の銀行家ロレンツォ・トンティ氏が考案した制度で、早く亡くなった人が払ったお金を長生きしている人に払うものです。実は、公的年金は、トンチン保険と同じようなしくみで、トンチン性(長生きのお得度)は非常に優れています。しかし、公的年金の原資である現役時代の保険料と税金は、高齢化で先細りになり、給付を減らしていかざるを得ない状況です。
ですから、公的年金だけで老後の生活費を賄うのはまずムリです。何らかの自助努力で不足分を補う必要があります。その自助努力の選択肢の1つになり得るのが、生命保険会社のトンチン保険(トンチン年金ともいう)なのです。
ここ2年ほどで、トンチン保険のしくみを取り入れた年金保険が4つ登場しています。日本生命「グランエイジ」、第一生命「ながいき物語」、かんぽ生命「長寿のしあわせ」、太陽生命「100歳時代年金」です。
80代後半から90代半ばまで生きないとモトが取れない
4商品に共通した特徴は、保険料払込期間中の死亡保障は行わず、解約返戻金は従来の年金保険の7割程度に抑えることで年金額を大きく(トンチン性を高く)していることです。このため、保険料払込期間中のどの時点で死亡・解約しても元本割れします。それに、かなり長生きしないと払った保険料のモトすら取れません。また、契約できるのは50歳からという点も共通です。年金の受け取り方は、「グランエイジ」と「ながいき物語」、「100歳時代年金」は、保障期間付終身年金と確定年金があり、「長寿のしあわせ」は保証期間付有期年金(最長30年)と、商品性はやや異なります。
年金の受取総額が払った保険料と同額になるモトが取れる年齢は、性別と契約条件で異なりますが、おおむね、80代後半から90代半ばです。
トンチン保険は、公的年金同様、死ぬまで年金がもらえる(長寿のしあわせを除く)安心感はありますが、相当、長生きしないと入った意味がない、低金利を長期固定することになる、インフレになると年金の価値が下がる、他の金融商品や国の制度と比べて有利なわけではないことを承知して、利用を検討しましょう。