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「秘境駅」めぐり入門編!簡単に行ける秘境駅10選

「秘境駅」が鉄道ファンを中心にブームとなり、テレビや雑誌でも取り上げられることが多くなった。しかし、その名のように、人里離れた辺鄙(へんぴ)な場所にあることが多いので、訪れるのはなかなか大変だ。そんな中で、比較的気楽に訪問できそうな駅を秘境駅ランキング1位の北海道・小幌駅や、秘境駅が多いとされる飯田線をはじめ10か所選んで取り上げてみた。これで、あなたも「秘境駅」に行ける!

野田 隆

執筆者:野田 隆

鉄道ガイド

「秘境駅」とは? 一度は行きたいおすすめ駅まとめ

小幌駅

「秘境駅へ行こう!」ランキング1位の小幌駅(室蘭本線)。特急列車から撮影するのも至難の業だ


「秘境駅」とは、降りてみたものの周囲を見渡しても人家がない駅、したがって利用者が極めて少ない、停車する列車も少ない。駅舎や待合室が古びていて風格がある、駅へのアクセスが不便で、徒歩でしか行けない、スイッチバックなど隣接して鉄道遺産がある、といった特徴を備えている駅のことだ。その道の大家で、「秘境駅」という言葉を広めたとされる牛山隆信氏は「秘境駅」関連の著書が多数あり、氏が作成したサイト「秘境駅へ行こう!」は、「秘境駅」訪問のバイブルとして大いに参考になる。
 

観光列車で「秘境駅」を訪問。

「秘境駅」に数分間停車して、その雰囲気を安易に楽しめる観光列車がいくつか走っている。初心者は、こうした列車に乗って訪問すれば、その魅力の一端を垣間見ることができるだろう。まずは、観光列車で訪問可能な「秘境駅」を挙げてみた。
 

秘境駅01_坪尻(JR土讃線、徳島県)

坪尻駅

土讃線の坪尻駅はスイッチバックのある秘境駅だ


「秘境駅へ行こう!」では6位にランクされ(以下、2018年版の順位を記す。2017年版と変更があったものについては、参考までに2017年度の順位も記した)、地元では「日本屈指の秘境駅」とPRされる四国有数の秘境駅。土讃線が琴平を出発後、四国の背骨である讃岐山脈を貫く猪鼻トンネルを出たあたりにある無人駅で、スイッチバックがある。

普通列車でも通過する列車が存在し、一日に停車する列車は、下り6本、上り5本のみ。3時間ほど列車が停車しない時間帯もある。駅前に車でアクセスしようにも道がなく、最寄りの国道までけものみちのような小道を登っていく必要がある(夏場は、まむしが出没するので要注意との看板も立っている)。
観光客で賑わう坪尻駅

観光列車が到着すると、大勢の観光客でホームは賑わう


しかし、2017年春より運転を開始した観光列車「四国まんなか千年ものがたり」が数分間停車してホームに降りることが可能なので、訪問することは容易になった。
 

秘境駅02_大畑、矢岳、真幸(JR肥薩線、熊本県、真幸は宮崎県)

真幸駅

京都のお寺の石庭を思わせる真幸駅構内


人吉から吉松に至るJR肥薩線のうち「山線」と呼ばれる矢岳越えの区間。霧島連山を望む「日本三大車窓」として有名な地点を通過する。大畑はスイッチバックとループ線、真幸はスイッチバックのある駅だ。現在は、駅周辺に人家がほとんどなく「秘境」となっているけれど、観光列車「いさぶろう・しんぺい」が、1日2往復し、これら3つの駅に数分ずつ停車するので、すっかり有名になり、訪問するのは簡単になった。
大畑駅駅名標

古びた駅名標も魅力的な大畑駅


観光列車以外の列車は、朝夕に3往復あるだけで、観光客で込み合うのを避けると訪問は、大変である。「秘境駅へ行こう!」のランキングは、大畑=21位、矢岳=36位、真幸=28位 
 

秘境駅03_飯田線の7つの「秘境駅」(長野県、小和田駅のみ静岡県)

飯田線・小和田駅

皇太子妃・雅子さまの旧姓(おわだ)と同じ漢字としても注目された小和田(こわだ)駅


「秘境駅」の宝庫と言われるJR飯田線は、中部天竜と天竜峡の間の険しい山岳地帯に7つもの秘境駅が点在する。駅名と「秘境駅へ行こう!」のランキングは、以下の通り。

小和田(こわだ)=3位、中井侍(なかいさむらい)=14位、伊那小沢=81(2017年度は85位)、17_為栗(してぐり)=17位、田本=4位、金野=7位、千代=26位

いずれも、一日に8~9往復程度の電車しか停車しないので、まとめて訪問するのは難しいけれど、毎年、春と秋に運転される急行「飯田線秘境駅号」というイベント列車を利用すると、半日で、すべての駅をまわれる。

 

アクセスが比較的容易な「秘境駅」

以上は、観光列車利用による秘境駅訪問であるが、秘境駅は、誰もいない時に訪問してこそ価値があると考える人もいるだろう。大勢の人と一緒にホームに降り立っても、秘境感は、あまり感じることができないかもしれない。そんな人のために、比較的アクセスの容易な「秘境駅」を紹介してみよう。
 

秘境駅04_首都圏から近い久我原(いすみ鉄道、千葉県)

久我原駅

千葉県にある秘境駅・久我原


「秘境駅へ行こう!」のランキング=48位(2017年は50位)(以下すべて2018年版のランキング順位。2017年版と異同があったものについては、その旨記した)

旧国鉄時代のディーゼルカーを観光用に走らせている千葉県のいすみ鉄道。その拠点駅とも言うべき大多喜駅から上総中野へ向けて3駅10分程乗ったところにあるのが、久我原駅だ。山の中にあり、駅から見渡すと人家はほとんど見えない。国道から、やや離れたところにあるので、車の音も聞こえず静かである。

三育学院大学がネーミングライツ(命名権)を得て駅名に付いているものの、大学は駅から徒歩20分程かかり、鉄道利用は不便なので通学に使う学生は、ほとんどいないと思われる。列車本数は、1時間~1時間半に1本程度だが、下り列車で降りて、終点上総中野駅で折り返してくる列車を待つのなら、最短40分程度の滞在で済む。
(例:下り上総中野行きで13時33分に到着、上り大原行きで14時06分に出発すれば滞在時間は33分で済む)
 

秘境駅05_上有住(かみありす)(JR釜石線、岩手県) 50位(2017年は51位)

SL銀河

上有住駅を発車する「SL銀河」


滝観洞(ろうかんどう)という鍾乳洞の入り口が駅近くにあるので、休日は観光客の姿も見えるが、列車利用者は少ない。春から秋にかけての週末は、観光列車「SL銀河」が停車するけれど、停車時間は短いので、数分間の滞在で済ますことはできない。しかも、「SL銀河」は土曜が下り、日曜が上りという変則的なダイヤなので、片道は普通列車を利用することになる。列車本数が少ないので、時刻表を調べてから下車したい。
 

秘境駅06_東鹿越(ひがししかごえ)(JR根室本線、北海道) 66位(2017年は70位)

東鹿越駅

人の気配のない東鹿越駅の駅舎


根室本線の富良野と新得の間に位置する。かなやま湖に面し、反対側は鉱業所があるものの人家はなく、利用者はゼロに近い状況が続いていた。列車本数が少ない上に、上下列車を上手く利用して訪問するのも厳しく難易度の高い駅だった。

ところが、2016年の災害でこのあたりの区間が不通になったことから、東鹿越駅と新得駅の間で代行バスが運転されることになり、通過客は、この駅で乗り継ぐ必要に迫られ、訪問することが正常時より楽になった。
ディーゼルカー

東鹿越駅で折り返すディーゼルカー


富良野方面からの列車に乗り、この駅で折り返す10分ほどの時間を利用するか、新得から代行バスに乗り、この駅で列車に乗り継ぐ場合は、道路状況を勘案して乗り継ぎに10分程度の余裕があるので、駆け足ながら駅を観察する時間が取れる。東鹿越駅に列車で到着して代行バスに乗り換える場合は5分程でバスが発車してしまうので、駅ウォッチングの時間はほとんどない。

JR北海道は、この区間を単独では維持困難な路線としていて、不通区間の復旧工事さえ行っていない。富良野~新得間は廃止になる可能性も高いので、訪問するならお早めに。
 

秘境駅07_佐久広瀬(JR小海線、長野県) 68位(2017年は72位)

佐久広瀬駅

千曲川のせせらぎが聞こえる佐久広瀬駅


高原列車で名高いJR小海線にある秘境駅。ホームから見渡すと、北側にはトンネルがあり、東側を千曲川が流れていて、秘境感たっぷりだ。西側を道路が走っているものの、かなり高度があるので、ホームからは見えず、秘境感を損なうことはない。

列車本数は、平均すると1時間半から2時間に1本だが、上下列車をうまく組み合わせると、30分~1時間程度の滞在時間で済むので、手軽に訪問できるだろう。
(例:上り小淵沢行きで13時28分に到着、下り小諸行きで14時02分に出発すれば滞在時間は34分で済む)
 

秘境駅08_面白山高原(JR仙山線、山形県) 74位(2017年は78位)

面白山高原駅

ホームを跨ぐ陸橋からは「藤花の滝」が見える面白山高原駅


駅前にスキー場があり、冬季は道路が封鎖されるので、電車で行くスキー場として知られ、シーズンには賑わっていたが、東日本大震災の影響でリフトが使えなくなり、その後も営業再開していない。春や秋は駅周辺の渓谷の散策で訪れる人もいるが、人家がなく、秘境感たっぷりの駅である。

電化路線で、電車は2時間ほど間隔が開く時間帯もあるものの、上下列車を組み合わせれば30分程の滞在時間で済む。紅葉の時期などは、時間をかけて周辺を散策するのもおすすめである。
(例:上り仙台行きで15時22分に到着、下り山形行きで15時54分に出発すれば滞在時間は32分で済む)
 

秘境駅09_保津峡(JR山陰本線、京都府) 154位(2017年は157位)

保津峡駅

渓谷をまたぐ位置にホームがある保津峡駅


京都駅から山陰本線(通称、嵯峨野線)の普通電車で20分程。保津峡をまたぐ形でホームが延びている。ホームからの景観は素晴らしい。下りホームからは、嵯峨野観光鉄道のトロッコ列車が走るのも見え、気楽な撮影スポットとしても知られる。ただし、ホームの狭いところもあり、時折、特急電車が高速で通過するので注意したい。

改札口周辺には何もなく秘境感たっぷり。とても京都市のはずれとは思えない(ホームは京都市と亀岡市にまたがっている)。

トロッコ列車の走る嵯峨野観光鉄道のトロッコ保津峡駅へは山道を歩いて10分程だ。春や秋のハイキングには手ごろで、電車は昼間で1時間に3本ほど。間隔があくときでも30分程度なので、お手軽に訪問できる秘境駅であろう。
 

秘境駅10_中根(ひたちなか海浜鉄道、茨城県) 175位(2017年は178位)

中根駅

田園地帯の中にポツンとたたずむ中根駅


JR常磐線で水戸の次、特急も停車する勝田駅から分岐するひたちなか海浜鉄道湊線に乗り換えて10分程、広々とした田園地帯の真ん中にポツンとあるホームが1本、線路も1本だけの小さな駅だ。人家もほとんど見当たらず北海道の原野のようだと評する人もいる。

ラッシュ時以外は1両だけのディーゼルカーが行き来し、時折レトロな車両もやってくる。40分に1本程度のダイヤでローカル線にしては本数が多いので安心だ。2つ先の那珂湊(なかみなと)駅で上下の列車がすれ違うので、最短10分程の滞在時間とすることも可能だ。

以上は、あくまで初心者向きの秘境駅訪問ガイドである。これに飽き足らなくなれば、「秘境駅へ行こう!」の上位にランクされる本格的な秘境駅を探訪することを目指そう。もちろん、列車本数は少ないし、大都会から離れた辺鄙(へんぴ)な駅も多い。駅前にコンビニや自販機などあるはずもないので、事前に飲食物を購入してから列車に乗ること。さらに、列車ダイヤを綿密に調べて、ぬかりない計画のもとで実行するのが望ましいことは言うまでもない。
 
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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