どの水準から円高?円安?米ドル/円105円は円高なのか?
よくニュースで「円高」「円安」と聞くことが多いことでしょう。どの水準から「円高」で、どの水準から「円安」なのか、気になった人はいるのではないでしょうか? 今回はその基準を一緒に考えていきたいと思います。ポイントはどこに視点を置くかで「円高」なのか、「円安」なのかが決まってきます。以下、話を簡単にするため、米ドルと円(ドル円)の為替で考えていきます。
ある地点の「円高」「円安」の為替をベースにする
今回は2000年以降の水準で考えていきたいと思います。歴史に名を残すイベントの際の水準と比べられることが多いのではないでしょうか。一つめは2007年~2008年のリーマンショックの前の水準です。2007年のドル円の為替レート最高値は124.11円でした。
二つめは、2012年12月から始まったアベノミクス相場のドル円の為替レート最高値は、2015年6月の125.85円でした。
よって、これから景気がどんどん良くなっていき、その結果120~125円の水準に近づいていくと考えれば、2018年2月16日13時時点の105.54円という水準はかなりの円高にあると言えます。
一方で、世界的に大きなショックであったリーマンショック後、2008年~2013年まではドル円の為替レートは80円~90円で推移しており、この円高傾向は異常と呼ばれていました。ちなみに、ドル円の為替レート最安値は、2011年の75.54円です。80円~90円で推移していた時から見れば、現在の水準はまだ円安に動いていると言えます。
どのイベントやタイミングを基準とするかによって、現在の水準が「円高」なのか、「円安」になのかは異なるということです。
購買力平価をベースにする
理論的に全く貿易障壁のない世界を想定、つまり国境がなく世界が一つと考えると、同じ製品の価格は一つであるという「一物一価の法則」が成り立ちます。この法則が成り立つ時の二国間の為替相場を「購買力平価」と言います。購買力平価のうち、現時点で異なる国の間で同じ製品を同じ価格で購入できる水準として算出されるものを「絶対的購買力平価」と言い、過去の一時点を起点として、その後の国間のインフレの差を調整して時系列に物価を均衡させる為替相場を算出するものを「相対的購買力平価」と言います。
そして、購買力平価はいくつかありますが、「消費者物価」は、消費者が実際に購入する段階での商品の小売価格をベースとした為替レートで、「企業物価」は、企国内の企業間取引の価格をベースとした為替レートです。
公益財団法人 国際通貨研究所の「ドル円購買力平価と実勢相場」によると、2018年1月末基準で、消費者物価ベースのドル円の為替レートは125.12円です。企業物価ベースのドル円の為替レートは95.42円です。
よって、2018年2月16日13時時点の105.54円は、消費者物価ベースから見れば「円高」ですし、企業物価ベースから見れば「円安」と言えます。
どちらの立場で見るかによって、現在の水準が「円高」なのか、「円安」になのかは異なるということになります。
景気循環をベースにする
景気の山や谷を作りだす要因として、在庫投資のサイクル(キチンの波:約4年)や設備投資のサイクル(ジュグラーの波:約10年)があります。この4年間や10年間の平均為替レートを算出して、それと比べて現在の水準が「円高」か「円安」かを判断するというものです。過去4年(2014年~2017年)で見ると、ドル円の平均為替レートは112円、過去10年(2008年~2017年)で見ると99円ですので、2018年2月16日13時時点の105.54円は、過去4年で見れば「円高」とも言えますし、過去10年で見れば「円安」と言えます。
「円高」か「円安」の国際的な基準はない
結論、どのイベントやタイミングを基準にするか、どういう立場なのかによって、「円高」か「円安」かは決まってくるのです。国際的な基準はありません。今回紹介した基準を参考に、自分なりの「円高」か「円安」の基準を持って戦略を立て、投資行動に活かしてみてはいかがでしょうか。