「お客様が損をしない契約」と思っていたが……

お客様の損が少ない、これが一番いい保険だと―――

お客様の損が少ない、これが一番いい保険だと―――

「『掛け捨て』ではありません。将来、保険料の大半が戻ってきます。お客様の損が少ない、これが一番いい保険だと思います」

先日、都内喫茶店の隣席で生命保険の提案書を示しながら、営業マンが熱く語っていました。私自身、同じようなことを言いながら営業をしていた時期があるため、苦い思いを抱えて聞いていました。

一般に加入者が保険や各種共済で支払う掛け金が、契約期間終了時や中途解約時まで何事もなく過ごした人に1円も払い戻しされない商品(あるいは契約)を「掛け捨て」といいます。

一方、「掛け捨て」でないことがアピールされる商品には、相当額の払戻金があります。たとえば、一生涯の死亡保障がある「終身保険」です。契約期間中はいつ死亡しても、それまで払った保険料総額を上回る保険金が支払われ、老後に解約すると保険料総額を上回る払戻金(解約返戻金)が支払われることもあります。

そのため、かつての私も「お客様が損をしない契約」だと思っていたのです。ところが、大きな間違いでした。あえて損得という言葉を使うと、掛け捨てではない保険のほうが損が大きくなりやすいのです。

「保障部分」と「積立部分」に分解できる終身保険

終身保険イメージ

 

上の図1は、ある保険会社のホームページにある「終身保険」の説明図を参考に作成したものです。点線は保険料総額で実線が解約返戻金です。この図だけを見ると、やはり保険料が戻ってくる点に魅力を感じる人もいるかもしれません。
終身保険イメージ

 

しかし、払戻金の曲線に沿って図を分解してみるとどうでしょうか? 保険金額が1,000万円の終身保険は、加入者が今日・明日にでもなくなった場合に1,000万円を支払うための(掛け捨ての)保障部分と、将来1,000万円の死亡保険金を支払うために保険料の相当額を蓄えておく積立部分からできています。

積立部分が増えるにつれ、保障部分が小さくなるのは、万が一の際、双方を合算して1,000万円の保険金支払いができればいいからです。契約期間の途中で解約した際にもそれなりの払戻金があり、先に書いたとおり老後に保険料総額を上回る額に達するケースもあるのは、積立部分があるためです。

だからと言って得しているわけではありません。1の図でわかるように、積立部分のお金が保険料払い込み額を下回る期間が長いのは、保障部分に要する費用があることに加え、その他の費用もかかっているからです。

特に保険会社の営業担当者や代理店に支払われる手数料は、契約初年度の保険料総額の数十パーセントに達します。金融商品の中では破格の高さです。しかも「保険料×歩合=手数料」であることが多いため、保障部分に加えて積立部分もある保険のほうが保険料自体が高くなるぶん、手数料も高額になりやすいのです。

消費者に想像してほしいのは「お金の流れ」です。保険会社は保険料を主に長期の国債で運用します。ということは、加入者は保険会社に高い手数料を払って国債を買ってもらっているようなことになるわけです。「そんなことをするくらいなら自分で国債を買うほうが賢い」と考えられるでしょう。

次のページでは「保障部分にかかる費用は本当にタダ?」を考えます。