3代目新型シトロエンC3が日本上陸
2002年に誕生した初代、2009年登場の2代目に続き、2017年夏に3代目にスイッチしたシトロエンC3。プジョー208とブランド違いの兄弟車ではあるものの、見た目も走りもシトロエンらしく違いが演出されていて、さらに高級ラインの「DS(DS3)」もあるから異なる味付けをするのも大変そうだし、実際にブランドによる差を巧みに演出する腕の良さには本当に驚かされる。
新型シトロエンC3は、さらにその差が乗り味で顕著で、先代よりもしなやかさが増した乗り心地は、低速から高速域まで変わることのない美点だ。
かつてのシトロエンといえば、ハイドロ(ハイドロニューマチック)による「空飛ぶ魔法の絨毯」と使い古された感のある喩えもされてきた。
新型シトロエンC3に乗りながら「最後のハイドロ(ハイドラクティブサスペンション/ハイドラクティブ3プラス)モデル」となったシトロエンC5(試乗したのはワゴンのツーリング)に2015年に試乗した記憶を呼び起こしてみた。正確にいうと、シトロエンというとどうしても乗り味が気になってしまうのだが。
私が最後に乗ったハイドロモデルは、リヤに大きな荷室をもつツーリングであり、しかも空荷で乗ったこともあってか「魔法の絨毯」のような乗り味ではなかった。さらに、ほかの金属バネやエアサスペンション搭載車が相対的に乗り心地を引き上げてきたこともあるかもしれないが、これは「とろけるような乗り味だ!!」とは感じられなかったのだ。
クラスを超えた乗り心地の良さ
写真の内装は、導入限定車の「C3 SHINE Debut Edition」なので、「C3 SHINE」とは一部異なるが、先代よりも室内幅が20mm拡幅されたこともあって、シート左右間には余裕を感じさせる
では、新型C3はどうか? もちろん金属バネなのだが、先述したように、ハイドロ復活か!? と思わせるほど乗り心地は上質。2クラス上のC5(ツーリング)のハイドロ仕様よりもソフトに思えるほど。さらに、Bセグメントとは思えないほど、座り心地の良いシートも大きく貢献しているはずで、ソフトなシートなので身体が沈み込んでもしっかりと支えてくれるコシのある感覚。腰痛持ちの私でも疲れを覚えることなく長距離ドライブを楽しめた。
また、ボディのしっかり感もちゃんと担保されていて、90年代前半くらいまでの日本車(とくにトヨタ高級セダン)のように、まるで船のように足だけでなく、ボディも大きく上下に揺すられてしまいいまひとつ操舵やボディコントロールに信頼がおけない、という状況には至らないのだ。
狭い山道では多少ロール感が大きくなるものの、運転がしにくいというわけではなく、路面追従性も良好そのもの。プジョー208やDS3などの兄弟車だけでなく、他メーカーも含めた上位のCセグメントモデルと比べても、しなやかな足さばきといえるほど。
1.2Lの3気筒ターボでも動力性能に不満はなし
乗り味ばかりになってしまったが、1.2Lの直列3気筒ターボは、現代のターボとしては多少ターボラグが大きめに感じる(アクセルの踏み方にもよるが)シーンがある。しかし、110ps/205Nmという数値以上に中・低速域のトルク感があり、高速域のパンチ力も日本の高速道路ならまず不満がないレベルに達している。
また、トランスミッションはアイシンAW製の6ATで、発進時に唐突に駆動力が伝わる(つながる)印象はあるが、それ以外のシフトフィールに違和感はほとんどない。さらに、ブレーキも日本車と比べると急激に利くタッチだから「カックン」ブレーキにならないように気を使うが、利かないブレーキより良いのは言うまでもないだろう。
荷室容量は、300LとBセグメントとしては大きめ。後席を倒せば拡大できるが、荷室フロアとシート部分には少し段差が残る。また、開口部と荷室まで深さがある設計なので、大きな荷物の出し入れはやや気を使う。ただし、4mを切る全長であることを考えると広いのは間違いない
AIRBUMP(エアバンプ)と呼ばれるボディのプロテクトであり、アクセントである奇抜な外観(日本人からすると?)ばかり目立ってしまうが、上質な内装、そして極上といっても過言ではない乗り味もあって、これぞ本当に小さな高級車といえる仕上がりになっている。
なお、写真の試乗車は、インポーターとしては完売した(9月上旬時点でディーラーなどに在庫があるかは不明)導入限定車の「C3 SHINE Debut Edition」で226万円。エントリーモデルの「C3 FEEL」が216万円、上位仕様の「C3 SHINE」が239万円。国産Bセグメントよりも70~80万円ほど高くなるが、分かる人には十分価値が感じられるはずだ。