株価大幅上昇!テンセントを抜いたアリババの凄さとは?
アリババの時価総額は日本円で48兆円となり、テンセントを再び抜いて中国最大企業となっています。両社は売上、利益とも近い規模で争っています。アリババをモバイル端末から利用する月間アクティブ・ユーザー数は5億2,900万人ですが、このうち4割が日常的に利用するデイリー・アクティブ・ユーザーになってきています。この比率は年々、四半期ごとに増しており、単に多くの人と繋がっているだけでなく、より高い頻度で繋がり、生活に欠かせないものとなってきているのです。
一年前のアリババは、売上高に成長加速の兆しが見られたものの、株価はダブルボトムを抜け出そうかというところで、長い低迷期にありました。その要因の1つは同社のビジネスモデルがバナーなどの広告収入が主力だったことがあります。
同社はマーケットプレイス(ネット上の売り場)を提供しますが、取引額に手数料をかけるのではなく、バナーなどの広告収入が主力であったため、取引額が伸びても同社の売上が伸びない現象がありました。これは中国でもネット閲覧がモバイルに移行したのですが、モバイルはPCと比較して画面が小さい上、通信速度も当初は遅かったことがあります。しかし、近年では大画面化と通信速度の向上が同社にとって追い風になっています。
アリババの強みはフリーキャッシュフローの創出能力
アリババは3月決算で、上は17年3月期までの年次推移です。アマゾン(AMZN)、メルカドリブレ(MELI)、JD.com(JD、売上高でアリババを上回る)などの各地域の首位級ネット通販各社もそうなのですが、先行投資費用による利益成長の逓減で株価低迷することはあっても、どの会社も売上高の急成長が止まったことはありません。eコマースは完全に時代の流れとなっており、モバイルの普及に合わせ、各社ともデータ分析を駆使した、より洗練された手法で消費者にアプローチしてきているからです。利益に関しては一時的な要因を除いた営業利益の推移を見てください。アマゾンや JD.com のように直販を行わず、マーケットプレイス(ネット上の売り場)の提供をするのみの同社は、その分仕入れ、梱包、配送に係る事業投資(フルフィルメントセンター建設・運営)が少なくて済み、利益は昔からしっかりとしていました。
業績の成長とともに、14年に世界最大級の上場を果たして得た資金力も活かし、数々の買収を行ってきました。直販モデルでない同社は消費品の販売額が売上とならないため、売上規模に比べてバランスシートは大きすぎるように見えますが、内容は健全です。
アリババの強みはフリーキャッシュフローの創出能力です。莫大な営業キャッシュフローが積みあがっていますが、一方設備投資・買収などの資本的支出額は少なく済み、多くがフリーキャッシュフローとして残ります。配当も支払っていないため、その全額を将来の事業投資、或いはアップルのように自社株買いに回せます。
データを駆使、購買意欲の創出に磨き
2018年3月期第1四半期(4-6月)の売上高は前年同期比+56%増の501.8億元、株式報酬等を除いた調整後一株利益は+62.2%増の7.95人民元でした。売上は市場予想平均値を5%上回り、利益は同28%も超過する特に強い決算となり、株価も上昇しました。テンセントの同四半期売上566億元と比べても近い規模であり、研究開発費も似たようなものとなっていますが、営業利益額や同利益率ではアリババが勝っております。なお、テンセントの同四半期純利益も大きな伸びとなったのでしたが、本業以外の特別利益(事業売却や補助金等)もかなり多く含まれていました。営業利益にそうした特別要因は加算されません。
eコマース(コア・コマース)事業が営業利益の全てを稼いでいます。同部門の営業利益は+69%増の248億元で、利益率は58%へと上昇しました。会社全体の営業利益額は175億元であり、差額は残り全部門の赤字となります。他の事業はシナジー効果があるものの、まだ赤字です。赤字ながら、同社は様々な消費者と接点をデジタルによって持つことで、膨大なデータを収集できています。そのビッグデータを解析することで、各人の消費嗜好に沿ったマーケティングが可能となり、今後AIによってそれはより高度に洗練されて行くでしょう。パーソナライゼーション・テクノロジーの進化により、どうすればより多くクリックするかが解き明かされており、実際同社eコマース事業におけるクリック数は大幅に増大しています。
テンセント同様、注目できる中国の大手ネット企業
日本で言えば楽天というとわかりやすいと思います。コア・コマース事業で稼いだフリーキャッシュフローで次々と新たな分野に投資を行っていきます。データを駆使した購買意欲の創出についても同業他社では、規模的にも資金的にも追随できないレベルに達しています。テンセントと同様に、時価総額的にここから急激に大きく上昇というよりはたとえば数年かけて2倍程度を目指していくイメージですが、テンセント同様、注目できる中国の大手ネット企業と思います。
参考:中国株通信
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