横浜市開港記念会館(地下):柳幸典さんの3作品が地下空間に
横浜美術館のほかに主会場となっているのが、横浜市開港記念会館の地下。ここには、昨年「BankART Studio NYK」で開催された個展で反響を呼んだ柳幸典さんの3作品が展示されています。地下会場へは正面入口ではなく海側に設けられた入口からの入場となりますので、ご注意ください。柳さんは開幕前の記者発表会で「現在、瀬戸内海の犬島に住んでいて“ガラパゴス”状態なのですが、ヨコトリでも“ガラパゴス”になるとは……(苦笑)」と、場内の笑いを誘っていました。
柳幸典《Project God-zilla-横浜市開港記念開館の地下室-》2017……薄暗い空間にゴジラの頭をかたどった作品が。よく見ると、廃棄物──産廃や放射性物質、津波で流されたものをイメージしたもの──でできています。瞳の中にはさまざまな映像が映し出されます。ヨコハマトリエンナーレ2017展示風景(2017年8月3日撮影)
※2016年に開催された個展の模様は⇒公式ガイドブログ
体験型&大型インスタレーション多数:横浜赤レンガ倉庫1号館
横浜赤レンガ倉庫1号館では、体験型や広々としたスペースでの大型インスタレーションが多い印象。ヨコハマトリエンナーレならでは、わかりやすい作品が並びます。3階から2階へ、順路に沿って鑑賞していきます。小沢剛《帰ってきたK.T.O.》2017……2001年の第1回出展以来、2回目。歴史上の人物を題材に物語を構築する「帰ってきた」シリーズの新作を発表。横浜生まれ、明治から大正にかけて活動した美術史家のインド・コルカタ(=カルカッタ)での足跡をたどり、現地の看板職人や音楽家らと一緒に作品(絵画+映像+テキスト)を制作。ヨコハマトリエンナーレ2017展示風景(2017年8月3日撮影)
クリスチャン・ヤンコフスキー《重量級の歴史》2013……広いスペースに身体と公共彫刻の関係性について言及する作品が並びます。横浜の公共彫刻の気の流れをよくするため、マッサージ師が診断を行う新作も。ヨコハマトリエンナーレ2017展示風景(2017年8月3日撮影)
宇治野宗輝《プライウッド新地》2017……美術作品の輸送に使われる大型の木箱をビル群に見立てた作品。そこでは、突如、楽器とミキサーやテレビなどの生活用品を組み合わせた装置が、自動で光と音を発するパフォーマンスを始めます。ヨコハマトリエンナーレ2017展示風景(2017年8月3日撮影)
キャシー・プレンダーガスト《アトラス》2016……都市、町村以外をインクで塗りつぶしたヨーロッパのロードマップ100冊をヨーロッパの地形に見立ててフロアに並べた作品。白い点が星のよう。ヨコハマトリエンナーレ2017展示風景(2017年8月3日撮影)
ドン・ユアン《おばあちゃんの家》2013……区画整理のため解体されてしまう作家のおばあちゃんと隣接する叔父さんの家の中の家財道具や食卓などを描いた作品群。ヨコハマトリエンナーレ2017展示風景(2017年8月3日撮影)
ラグナル・キャルタンソン《ザ・ビジターズ》2012……ビデオ9面、64分の映像作品。ヘッドフォンから聞こえる他者の演奏音を頼りに、異なる部屋で一つの曲を奏でようと試みるようすを9つのスクリーンに投影。孤独な作業から生まれるハーモニーをお楽しみあれ。ヨコハマトリエンナーレ2017展示風景(2017年8月3日撮影)
Don’t Follow the Wind《ウォーク・イン・フクシマ》2016-2017……放射性物質による汚染で期間困難区域となった場所で撮影された、没入型360度映像が見られる作品。ヘッドセットは福島出身のアーティスト・毒山凡太郎さん監修のもと、立ち入り制限区域の外側の田村市に住む三世代の家族が制作したもの。作品解説のミニリーフレットは必読。ヨコハマトリエンナーレ2017展示風景(2017年8月3日撮影)
横浜赤レンガ倉庫1階には「SHOPトリエンナーレ2017」がオープン。ヨコハマトリエンナーレ公式グッズのほか、横浜市内在住・在勤の多彩なクリエイター約40組が制作する家具、ファッション、食品、ステーショナリー、書籍などの商品を販売(2017年8月3日撮影)
会場間の移動は無料バスで
バスの車体にも作品が。ジェニー・ホルツァー「《自明の理》より、1977-79」2017。みなとみらい駅のコンコースでも展開されています。ヨコハマトリエンナーレ2017展示風景(2017年8月3日撮影)
期間中は、主会場(横浜美術館、横浜赤レンガ倉庫)と「セット券」で楽しめるアートプログラムの2会場(BankART Studio NYKと黄金町エリア)を結ぶ無料バスが運行します。チケットを提示すると乗車可。
横浜美術館と横浜赤レンガ倉庫を30分間隔で結ぶAルートと、横浜美術館と横浜赤レンガ倉庫、BankART Studio NYKと黄金町エリアを巡るBルート(60分に1本)があります(土・日・祝日の昼間は増便)。
料金は? ほかのアートプログラムも見られるセット券がお得!
ヨコハマトリエンナーレ2017の鑑賞券は一般1800円、大学・専門学校生1200円、高校生800円、中学生以下と障害のある方とその介護者(1名)は無料。横浜美術館、横浜赤レンガ倉庫1号館、横浜市開港記念会館地下に会期中、1回ずつ入場できます。同時期に開催されるアートプログラム「BankART Life Vパスポート」「黄金町バザール2017パスポート」がセットになった「セット券」は、横浜でアートを満喫したい方におすすめ。プラス600円で両プログラムに何度でも入場できるパスポートがつきます。それぞれ購入するよりもお得になっています。
期間中、他のアートプログラムもいろいろ開催
上記「BankART Life V」「黄金町バザール2017」のほかにも、ヨコハマトリエンナーレ2017のテーマと結びつくような施設や歴史的背景を持つ場所や建造物を紹介する「ヨコハマサイト」、公開対話シリーズ「ヨコハマラウンド」、同展テーマに即した映像作品や作家のドキュメンタリーを上位する「ヨコハマスクリーニング」、テーマを読み解く展示や横浜を舞台とした作品を上演する「ヨコハマプログラム」などが関連イベントや連携プログラムとして紹介されています。横浜でさまざまなアートに触れてみてはいかがでしょうか。くわしくは公式サイトをチェックしてください。
- ヨコハマトリエンナーレ2017 島と星座とガラパゴス
会場:横浜美術館(横浜市西区みなとみらい3-4-1、横浜赤レンガ倉庫1号館(横浜市中区新港1-1-1)、横浜市開港記念会館地下(横浜市中区本町1-6)
開館時間:10:00~18:00 (10月27日~29日、11月2日~4日は20:30まで)※最終入場は閉館の30分前まで
休館日:第2、4木曜日
料金:一般1800円、大学・専門学校生1200円、高校生800円、中学生以下無料
URL:ヨコハマトリエンナーレ2017 http://www.yokohamatriennale.jp/
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