従業員持株制度とは
「従業員持株制度」とは、毎月の給料から一定の金額を拠出して、勤務先の株式や親会社の株式、いわゆる「自社株」を購入する制度です。「従業員持株会」や「社員持株会」とも呼ばれます。企業が持株会を作り、従業員が任意で加入します。上場企業の場合は市場価格で購入することになりますが、福利厚生の一環として、購入金額の1割程度を補助するケースがあります。また、未上場企業であっても将来の上場を見据えて従業員持株制度を導入している会社もあります。
従業員持株制度に加入するメリット
従業員持株制度に加入するメリットは主に4つあります。(1) 奨励金により、通常よりも多く株数を購入できる
従業員持株制度を取り入れている会社の多くは、購入金額の1割程度を奨励金として上乗せしてくれます。例えば、毎月1万円を拠出する場合、会社が1000円補助をしてくれることになり、1万1000円分株式を買い付けることになります。
(2) 企業の業績が良ければ、株価上昇と配当が増えて利益を得られる
会社の業績が良ければ、ボーナスがもらえ、さらに自社株の株価上昇した分資産残高が増えます。配当は再投資という形式が多いと思いますが、配当が増えれば多くの自社株を購入できるようになります。
(3) 給与天引きなので、着実に資産形成できる
従業員持株制度は給与天引きと、「先取り貯蓄」の仕組みであるので着実に資産を積み上げることができます。毎月給与天引きであるため、必然的に「積立投資」となり、自分で購入するタイミングを考えなくて良く、投資のタイミングをわけて時間を分散することで、値動きに左右されにくくなります。
(4) 未上場企業の場合、上場すれば大きなリターンを見込める
未上場企業の場合、上場したら大きな利益を得られる可能性があります。一般的に、上場すると株価が一気に上昇することが多いからです。
従業員持株制度に加入するデメリット
従業員持株制度に加入するデメリットは、主に4つ。メリットの裏返しとなっているものが多いですね。(1) 企業の業績が悪ければ、給与減の可能性と株価下落のダブルパンチ
会社の業績が悪ければ、ボーナスは減額、最悪の場合もらえなくなります。また、ボーナスだけでなく給与が減ることもあるでしょう。さらに自社株を購入している場合、株価下落した分資産残高が減ります。最悪の場合、勤務先が倒産すると仕事も資産も一気に失うことに。
(2) すぐに売却できない(売却するのに時間がかかる)
従業員持株制度は株式を共同購入するので、株式の名義人は持株会理事長となっています。このため、売却するには所定の届け出を経てからになるので、通常の株式と比べて時間がかかり、さらに希望価格で売却しにくい点もデメリットです。また、インサイダーにならないように、決算発表や新商品発表から一定時間を経ての売却になる点も注意が必要です。
(3) 株主優待はもらえない
株式の名義人は自分ではなく、持株会理事長となっているので株主優待はもらえません。
(4) 未上場企業の場合、上場しなければ儲からず換金もしにくい
上場企業の場合は、市場で株式を売却して現金化できますが、未上場企業の場合は換金しにくいですし、換金した際に損することもあるでしょう。
「分散投資」の観点から従業員持株制度には入らない方が良い
従業員持株制度に入った方が良いかどうか、結論としては、「分散投資」の観点から従業員持株制度には入らない方が良いというのが筆者の考えです。そもそも金融資産へ投資する理由は、「勤労収入だけでは資産形成が難しいから」というのもありますが、一番の理由は「働けなくなった場合や勤労収入減のリスクヘッジ」でしょう。つまり収入経路を幾つか持って(分散して)おくためということです。
それにもかかわらず、自社株を購入するということは、勤務先に人的資本(時間と労力)とお金を集中投資することになります。集中投資をすると、リターンは大きいですが、損失も大きくなります。
ただし、絶対に入るなと言っているわけではなく、メリットも多い制度なので、もし入るならば、デメリットを納得した上で、少ない金額にしておくことをオススメします。