ランドローバー・ディスカバリーも丸くなった?
四角かったランドローバー(レンジローバー)のデザインに大きな変革をもたらしたのは、レンジローバー・イヴォークだった。日本で発売されたのは2012年3月。数多あるSUVのみならず、スポーツカーと比べても存在感は抜群。そのスタイリッシュなスタイリングは、街中の目を惹き、多くの新規顧客がランドローバー(レンジローバー)の門を叩くほどのインパクトだった。
そもそも、ランドローバー(レンジローバー)が「カクカク」したフォルムだったのは、機動力、機能性からだ。見切りの良さが非常に重要になる本格オフロードモデルにとって、自分の身体を隅々まで把握しなければ、迫り来る木々や岩場にぶつかり、断崖絶壁に足を取られるかもしれない。ボンネットの先まで見通せる「コマンドポジション」と呼ばれる、アップライトなドライビングポジションが得られるのも必須なのだ。
こうした視点で見ると、レンジローバー・イヴォークは、コマンドポジションをある程度実現という印象で、前方視界は従来のランドローバー(レンジローバー)モデルほどは確保されていない印象を受ける。
そんな中、現在のラインアップで最も硬派だったのが、ディスカバリーだ。ランドローバーは、手持ちの駒を3つ大別している。「レンジローバー」ファミリーが「ラグジュアリー」、「ディスカバリー」シリーズが「レジャー」、新型の投入も噂されている「ディフェンダー」が「デュアルパーパス」といった具合。
今回の主役、5代目新型ディスカバリーには、多用途性をもたせ、独身からディンクス、ファミリーまで幅広いユーザーのニーズに応えているのが特徴だ。
フロントから見ると丸くなった印象を受けるものの、サイドやリヤビューなどの全体のフォルムは意外と四角い。これなら本格的な悪路走行も任せられる安心感に満ちている。
3列シートの格納・復帰に採用された世界初の機構とは?
また、ディスカバリーといえば、後席にいくほど着座位置が高くなる3列シート「スタジアムシート」も特徴だが、新型にも踏襲されているだけでなく、使い勝手の面でも進化している。
それが、2列目と3列目を自動で折りたたみ、復帰させることができ、7人乗りから2人乗り(最大荷室時)の状態まで約14秒で完了。荷室のスイッチだけでなく、スマホの専用アプリでも遠隔操作が可能で、「インテリジェント・シート・フォールド」と命名し、世界初の機構としている。
日本車メーカーが得意そうなシートの自動格納、自動復帰(しかも、1列目をのぞく全席)は、実際に操作してもなかなか便利だ。荷物で片手がふさがっていても荷室のスイッチで操作できるし、あらかじめスマホで操作しておけば荷物や乗員数に応じてシートアレンジが容易にできる。もちろん、シートの上や足元などに荷物があれば下ろしておく手間は必要だが。
3列目はシートサイズこそやや大きめだが、空間的には新型ディスカバリーが目指したという身長190cmの乗員が座るには狭い。フロアが高く、足元がやや狭いため乗降性は良好とはいえないが、座ってしまえば子どもなら実用になるだろう
気になる居住性は、1列目と2列目はとくに頭上に余裕があり、足元も十分な広さが確保されている。新型ディスカバリーのコンセプトは「身長190cmの乗員が3列すべてに座れる」そうだが、サードシートはフロアが高いため乗降が大変なのに加えて、足元、頭上ともに身長171cmの筆者でも非常用の域は出ていない印象を受けた。
素晴らしい完成度の3.0Lのディーゼルとガソリンエンジン
走りの面では、オンロードの快適性が引き上げられたのが印象的だ。新たに加わった3.0L V6ディーゼルターボは、ディーゼルとは思えないほど高い静粛性が自慢だ。車内にいる限りディーゼル特有の「ガラガラ」音は、ほとんど感じられず、言われないとディーゼルとは分からないほど(車外にいると分かる程度)。音・振動対策にかなり神経が注がれているのが分かる。
また、258ps/600Nmというエンジンスペックからも分かるように、低速域からこんこんと湧き出るような圧倒的なトルク感があり(ただし、走り出しは悪路走行を考慮してジェントル)、勾配でもグイグイと加速していく頼もしさに満ちている。
340ps/450Nmの3.0L V6のガソリンスーパーチャージャーも低速域から力強く、豪快な走りが楽しめる。スーパーチャージャー特有の過給音もスポーティで、オンロード中心に軽快に走るのならガソリンが向くかもしれない。
取り回しの良さは健在
さて、気になる新型ディスカバリーの取り回し性だが、高めの着座位置と高い視界による「コマンドポジション」は健在。期待を裏切らないボディ四隅の把握のしやすさでシーンを問わず、ボディコントロールはしやすい。なお、エアサスペンションで車高を変えられるが、どのモードでも視界は良好で、さらに子どもでも乗降しやすいアクセスモードも用意されている。
スキー場のゲレンデを走るという滅多に体験できないオフロード試乗も用意されていたが、路面状況が把握しやすく、これなら日本のどんなオフロード専用コースに持って行っても容易に走破してくれるだろう。かなり凹凸があるスキー場のゲレンデでもボディがしっかりしていて非常に頼もしいのも心に残った。
なお、ヒルディセントコントロールや「オールテレイン・プログレス・コントロール・システム(ATPC)」といった滑りやすい下り坂を一定速でクリアできる機構のほか、「テレイン・レスポンス2オート」もディスカバリーで初採用されている。
非常に良くできている新型ディスカバリー。先代は670万円代からのエントリー価格だったが、新型は779万~901万円と価格もグレードアップされたが、それだけの価値は十二分にありそうだ。