建築家である私のもとに実際に寄せられた質問を例に、Q&A形式で、壁量計算と構造計算について詳しく解説します。
Q:壁量計算と構造計算は何がどう違うの?
近年大きい地震が起きているので耐震性のある木造住宅をつくりたいと考えています。設計者との打ち合わせで耐震性について質問した際、「構造計算はしていませんが壁量計算はしてあります」と言われました。私は両方とも同じ意味だろうとボンヤリ考えていたので「エッ!?何が違うの?」と思いながらも結局聞き返せませんでした。
改めて何が違うのかをわかりやすく教えてください。(東京都40代男性)
A:壁量計算は水平力、構造計算は水平力+鉛直力
建築物は地震や風の力を受けた時、その力を上から下へ流します。その際、上階で受けた力を下階へスムーズに伝えるためには耐力壁が必要です。そしてその壁はさらに上下階でつながっていることが構造的にはとても有効に働きます。壁量計算とはこういった地震力や風圧力などの水平力に対して建物の構造が安全であるように耐力壁の量や配置などを簡易な計算で確かめる方法です。一方、構造計算は一般的な木造受託であれば許容応力度(部材が破壊しない安全な強度のこと)計算のことを言います。積雪荷重、屋根荷重及び床荷重などの鉛直力(垂直方向に作用する力)に対して、柱や梁(はり)などの構造部材が安全であるか、さらに地震力や風圧力などの水平力に対しても建物が安全であるかを確かめる計算となります。
つまり壁量計算は水平力のみに対して必要な壁量を求めるのに対し、構造計算では水平力だけでなく鉛直力に対しても建物の構造が安全であるかを確かめる計算です。そうであれば木造2階建てでも構造計算をすることでより安全と思われますが、建築基準法では必要ないと定められています。ただし、木造3階建ての場合は高さがあるため構造計算が必要と定められているのです。
耐力壁の入れ方は木造からはじまる
局部的に過大な応力を発生させないバランスの良い配置が重要
地震に対して耐力壁がとても重要だということがおわかりいただけたかと思います。では、どのように耐力壁を入れたらよいのかというと、実は決まりはないのですが、仮に開口部を広くして空間を確保する間取りにすると局所的に強い耐力壁を設けることが必要になります。その部分に力が集中してしまい負担が大きくなるため破壊が生じやすくなってしまうためです。
つまり強い耐力壁を局所に使うのではなく、多少弱い耐力壁であってもできるだけ縦方向、横方向バランスよく設けることで、より耐震性が高まる家になるのです。
木造2階建ての最高屋根の高さは7~8mで、3階建ては10mがひとつの目安です。したがって木造2階建ては、局部的に過大な応力を発生させないバランスの良い配置をすれば、構造計算はしなくても心配する必要はないということです。