10年前に比べ、100倍に増えた偽造医薬品
日本人向けに作成されたサイトが扱うED治療薬の約4割は偽造品。健康被害を招く恐れも
インターネットによる医薬品の入手が問題なのは、健康被害と経済被害をもたらす可能性がある点です。ED治療を扱う4社が手を携えて「偽造ED治療薬合同調査」を行うのも市民向けに注意喚起を促すのが大きな狙いです。
4社は2009年に当時の実態を発表し、インターネットで入手したED治療薬の多くが偽造品であることを啓発してきました。しかし、いまだに多くの偽造品が流通し続けており、健康、経済両面の被害も後を絶たないことから、改めて実態を明らかにすることにしました。
調査は日本とタイの調査会社に依頼して行いました。「個人輸入代行」業者のインターネットサイトを通じて発注、入手したED治療薬を鑑定したところ、国内外の発注分合計で約4割が偽造品であることが判明しました。国別では国内発注分が約4割、タイでの発注分の約5割が偽造品でした。
今回発注したサイトはすべて日本人向けに作成されており、言語は日本語、振込先も日本になっていました。日本人をターゲットにした“包囲網”はそれほど巧妙に仕掛けられているということです。
「本物」「海外製ジェネリック」に要注意
現在国内で承認されているED治療薬には3種類の先発品とジェネリック医薬品(後発品)があります。偽造品は先発品に外観が極めて似ているものが多いのが特徴です。インターネット上では「本物である」「海外製のジェネリック医薬品である」と偽って販売されているので注意が必要です。偽造品を見分ける最も簡単な方法は用量です。薬の色や形が本物そっくりであっても、正規品にない用量は偽造品と考えて差し支えありません。国内では認可されていない用量や、そもそも正規品では国内外共に存在しない用量のED治療薬はレッドカードです。
2009年の調査では、偽造品の割合が55.4%でした。今回は40.0%ですから、数の上では減少しています。しかし、依然としてインターネットを介して入手するED治療薬の多くが偽造品である実態も明らかになりました。
これらの偽造品の成分分析結果や品質にはバラツキがあります。有効成分含有量が承認用量を超過あるいは不足しているものや、まったく含まれていないもの、他の成分や複数の不純物が含まれるものも確認できました。
オンライン薬局の97%が不正品を販売
世界中に約35000~50000あるオンライン薬局で販売される処方医薬品の97%は不正品
そのうちの約2000~3500が日本語のサイトです。日本では制度上、個人輸入が認められているものの、99%以上は医薬品医療機器等法(薬機法)に違反して運営されているのが実態です。日本では、広告した時点で違法とみなされます。
同社は厚生労働省やFDAなど、各国の政府機関やインターポールと提携しており、2015年度は年間10000件以上の不正医薬品販売ウェブサイトを閉鎖に追い込みました。このうち、日本語サイトは1900件以上に及びます。
どんどん消されているにもかかわらず、不正サイトが依然として存在するのは、不正サイトを運営する犯罪組織が消されない所を探して新たなドメイン名を登録するから。一種のいたちごっこです。
インターネットを利用した安易な購入は犯罪組織の活動を助けます。つまり、知らず知らずのうちに利用者も加担していることになります。その点が恐いのです。
まず医療機関を受診して医師に相談を
今回の調査結果について、昭和大学藤が丘病院泌尿器科の佐々木春明教授は「承認されていない用量や表示されている用量とは異なる成分量が含まれる偽造品も散見された。こうした偽造品を入手するリスクは非常に高いことから健康被害を危惧している」と断言。「製薬各社に寄せられた有害事象報告からもインターネットで購入したED治療薬で体の変調を訴える情報が見られた。EDは糖尿病や脂質異常症など生活習慣病や肥満、ストレス、うつ病が原因となって発症する場合が少なくない。医療機関を受診して医師に相談することを強く勧めたい」と警鐘を鳴らしています。
これまでみてきたように、インターネットを通じて入手した偽造品は購入者の健康被害を招くだけでなく、正規品の侵害という形で経済被害をもたらします。手軽に入手できる利便性と、かけがえのない健康のどちらをとるか。答は自明のはずです。
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