【省エネ基準適合の義務化】2020年、住宅にも省エネ基準が義務化される
昨年は熊本地震が発生し耐震への関心がとても高かったように思いますが、日本はもともと災害の多い国です。いつの時代であっても防災対策を意識して住まいづくりが求められるのは当然のことです。さらに近年は環境に対する意識の高まりとともに住まいにも厳しい基準が設けられるようになってきています。3年後の2020年にはすべての新築住宅に省エネ基準の適合が「義務化」され、より厳しくなる予定です。これらもあわせてこれまでの住まいづくりの反省点や満足の度合いなど今後の住まいづくりを考えてみましょう。
【省エネ基準適合の義務化】省エネ基準がより厳しくなる理由
戸建住宅1棟当たりのエネルギー消費量は建築物全体からみればかなり小さいものです。しかし、住宅は作られる棟数が多い分、1棟ごとの省エネが進めばエネルギー消費量を大きく減らすことにつながります。日本において、住宅部門のエネルギー使用量は1990年に比べ大きく増加しているのですが、原因の一つが世帯数の増加です。世帯数の増加に伴って住宅の設備機器も増加しますので、当然エネルギー使用量も増加します。
特に近年は温水洗浄便器が定着し、冷暖房はルームエアコンが主流となっています。設備機器等の省エネ性能も年々向上してきてはいますが、保有台数の増加がエネルギー消費量を増やす結果になっているのです。
【温熱環境への取り組み】中古住宅はなぜ売れにくい?
国は平成32年までに住宅の耐震化率を95%まで引き上げる目標を掲げています。しかし既存住宅の耐震化が一向に進んでいないのが現状です。日本には現在総戸数で約4950万戸あるのですが、耐震性のない住まいは約1050万戸(平成20年推計値)で耐震化率は約79%です。さらに断熱性能についていえば、次世代省エネ基準(平成11年)を満たす住宅は5%しかなく、まだほぼ無断熱と考えられる住宅は4割近くあるのではないかと推計されています。気候風土による考え方もこれまではありましたが、今後は快適と感じられる温湿度環境への取り組みが生活の質を上げる意味でも重要です。また、中古住宅の流通を活発化させるためにも、重要なポイントになってくると思われます。
【満足度の高い家づくり】新築して不満の多かったところ
国土交通省は5年ごとに住生活総合調査を行っていますが、住宅及び居住環境に対して不満を持つ割合は調査ごとに減少傾向が続いています。平成25年の調査では不満を持つ割合は全体の22.1%で、昭和58年頃は約40%近い数字でしたから、住生活をとり巻く居住環境はとてもよくなってきていることがわかります。
ちなみに個別の要素で不満率が高かった所は
- 高齢者への配慮
- 地震時の安全性
- 冷暖房などのエネルギー性
となっています。
おそらくこれらが上位に挙がっているのは
- 新築時にはあまり老後のことは考えていない
- 地震に対する対策とコストバランスの問題
- イニシャルコストとランニングコストの兼ね合い
などを明確に示さないまま建ててしまい、後で少し余裕がでてきたところで気がついた、というのが原因ではないでしょうか?特に3の冷暖房などのエネルギー性能は、住まいの満足度を高めるにはとても重要な項目になってきています。
【満足度の高い家づくり】建て主が主導で決められている機器のベスト3
住まいをつくるには計画から始まり、間取り、機器選び、そして工事となります。なかでも仕事内容によって誰が何を決定していくのかも重要な役割です。特に設備機器への関心は高く、建て主主導で決められている機器が多いです。逆に建て主が主導権の役割を果たしていないのが断熱材や接合補強金物、防水シート材などです。これらの製品は設計者、あるいは施工者が主導して選んでいます。
【満足度の高い家づくり】住まいをつくる際、特に重視している項目
第1位は「費用」でここ10年ほとんど変わっていません。次に「間取り」と「耐震性」が続きます。※新建ハウジング 2016年4月10日発行(新建新聞社)近年は省エネに対しても関心が高く上位の方にランクされます。特に窓まわり(サッシ+ガラス)の性能や取り付けの位置、大きさにも配慮している計画が多く見受けられるようになりました。これは冬に窓からの熱損失が48%以上になることから、窓の対策をすることで大きな省エネができると一般の建て主も分かってきているからです。特に満足度の高い家は夏涼しく、冬暖かい家づくりです。
ガイド佐川旭のアドバイス
東日本大震災を境に、ここ数年住まいをつくる際の考え方が東日本大震災を境に大きく変化しました。震災前は間取りやデザインを重視する傾向にありましたが、震災後は耐震性能、耐久性、立地(災害などに対する安全性)に関しても高い関心が寄せられています。
私は常に住まいには4つの寿命が大切であると言ってきました。物理的寿命、生活的寿命、心理的寿命、そして資産的寿命です。
建て主が住まいづくりに参加することで住まいに愛着が生まれます。それは建物を丁寧に使う心を育んでくれます。また、丁寧に使われておらず、みすぼらしい住まいになってしまうと、中古住宅としても売れにくくなります。
物理的寿命、生活的寿命そして心理的寿命のある家が少しずつ見受けられるようになってきました。残るは資産的寿命のある家づくりです。今年の気になるキーワードはまさにこれから資産的寿命をつくるヒントになる項目ではないでしょうか?