『この世界の片隅に』の広島市内の聖地(ロケ地)めぐり
(C)こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会
2018年夏にはテレビドラマも放送されました!
この映画のスクリーンに描かれた風景を手がかりに、戦後70年を経て戦争の記憶が今なお残る広島で、『この世界の片隅に』の聖地(ロケ地)をめぐりたいと思います。
今回のコース
<江波地区>
<広島市中心部>
すずの故郷、広島市江波地区へ
映画の主人公、浦野すずの故郷・江波地区は、天満川と本川(太田川)に囲まれた三角州の南東部にあります。改めて、地図で見てみると、広島市の市街地というのは、幾筋もの川が流れる中洲を中心に発展していることが分かります。広島市内を走る路面電車(広島電鉄)
広島は全国でも希に見るほど、路面電車(広島電鉄)がしっかりと残っている街。かなりレトロな車両から最新型まで様々な電車が走っているので、鉄道ファンにとってはたまらないでしょう。
江波方面への路面電車は、広島駅の新幹線口とは反対側の在来線側の出口を出て、すぐの所に発着していますが、色々な路線があるので、間違えないように! 江波までは、江波行きの電車で40分ほどです。
すずの故郷、江波。2014年に全線開通したばかりの広島高速3号線が頭上を走る
高速に沿って東に向かうと、太田川の川べりに出て、丘の上に丸子山不動院という寺院があり、境内からは周囲の街並みを一望できます。すずの実家・浦野家は、この江波の漁師町で海苔(ノリ)などを作っていたという設定です。
映画にも登場する「松下商店」の建物。小学校に通うすずが、店の前を走っていた
丸子山不動院のすぐ北側には、映画にも登場する「松下商店」の建物がありますが、もうだいぶ前に営業をやめているようです。
江波山に登ってみましょう
江波を訪れたなら、もう一ヶ所、ぜひ訪れたいのが江波山。絵を描くのが得意なすずが、初恋の人(と思われる)水原哲に学校の課題の絵を描いてあげ、その絵の中の「波のうさぎ」がとても印象的だった場所。江波山へは、衣羽神社(えばじんじゃ)の境内から登るのが近道で、山の上は公園として整備されており、北東の隅には、元気象台の建物を利用した「江波山気象館」という博物館があります。
すずが「波のうさぎ」を描いた場所。現在は、海は見えづらい
すずが「波のうさぎ」の絵を描いた場所を探し求めてみたところ、どうやら、公衆トイレの先の、ベンチが置かれている辺りのようです。
「安芸小富士」と呼ばれる広島湾に浮かぶ似島(にのしま)の山も見えますし、場所は、ほぼ間違いなさそうですが、残念ながら手前に木が茂っているのと、海までの間にマンションが建っているので、景色はそれほどよくありません。
「江波山気象館」の屋上からは、江波の街並みも一望できる
むしろ、オススメなのは「江波山気象館」の屋上からの眺望。先ほど歩いた、すずの実家付近の江波の街並みなどを一望することができます。
<DATA>
■江波山気象館
住所:広島市中区江波南1-40-1
休館日:毎週月曜日(祝日・休日の場合を除く)、祝日の翌日、年末年始など
開館時間:9:00~17:00(入館は16:30まで)
入館料:大人100円
ホームページ → 江波山気象館ホームページ
広島市街地の中心部へ戻ります
江波の散歩を終えたら、先ほどの路面電車に乗り、「十日市町」駅まで戻ります。ここから相生(あいおい)通りを100mほど東に歩くと、映画の冒頭で、すずと、後にすずの夫になる周作をさらった"ばけもん"が歩いていた「相生橋」が見えてきます。相生橋上を走る路面電車と原爆ドーム。相生橋は、とても珍しいT字型の橋で目立つことから、原爆投下の目標とされた
映画では、相生橋から「広島県産業奨励館」が見えていましたが、これが、原爆投下の爆風でドーム部分の骨組みだけが残り、現在は「原爆ドーム」として保存されている建物。また、映画と同様に、現在も橋の上を広島電鉄の路面電車が通過して行きます。
米軍による原爆投下の目標となったのが、この相生橋。原爆は、実際には、相生橋から原爆ドームを挟んで反対側の路地の中にある、「島外科内科」(当時の名称は「島病院」)の上空600mで炸裂(さくれつ)しました。
島外科内科の傍らに立つ、「爆心地」であることを示す案内板
現在、島外科内科の傍らには、「爆心地」であることを示す案内板が立っています。
平和記念公園へ
さて、「爆心地」の案内板の場所から元安川に架かる元安橋を渡ると、元安川と本川(太田川)に挟まれた中洲が「平和記念公園」として整備されていますが、ここは、かつては中島本町と呼ばれる市内でも有数の繁華街・歓楽街だったエリアで、子供の頃のすずが、ここへお使いに出かけてきました。旧「大正屋呉服店」の建物。現在はレストハウスに使用されている
当時の街の面影をわずかに残しているのが、旧「大正屋呉服店」の建物で、現在はレストハウスに使用され、観光案内所や休憩所、売店などが入っています。
「平和の灯」と「広島平和記念資料館」
広島平和記念資料館は、内装・展示変更のために現在、本館を閉鎖しており、リニューアルオープンは2019年春になる見込みとのことです。
福屋百貨店八丁堀本店
このほか、広島市内の『この世界の片隅に』関連の聖地としては、すずが嫁ぎ先の呉から里帰りした際に、スケッチに出かけたときに登場する「福屋百貨店」の建物が現存しています。
なお、主人公のすずの声優を担当したのんが、物語の舞台となった広島県呉市を巡る姿を追った写真集「のん、呉へ。 2泊3日の旅~『この世界の片隅に』すずがいた場所~」が12月16日に発売になっています。
引き続き、「聖地巡礼!『この世界の片隅に』の舞台・呉をめぐる」もお楽しみください。
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