義務的セックスでは妊活が苦行になる!?
「妊活のため」を意識すると、どうしても気持ちが乗らないということも……
気持ちが乗らないと、特に男性は体がうまく反応してくれず、行為におよぶことができなくなってしまうこともあります。そこで一度自信を失うと、ますます不安やプレッシャーが大きくなり、負のスパイラルに陥ってしまうこともあります。
一方女性も、「せっかくの排卵日にチャンスを逃した!」と相手を責めたり、「私に魅力がないのかしら?」と自分を責めたりし始めると、ベッドルームの雰囲気がどんどん悪くなってしまいます。「妊活クライシス」から「セックスレス」に突入です。そうなると「妊活」どころではありません。
そこで知っておいていただきたいキーワードがあります。「オキシトシン」です。オキシトシンは「愛情ホルモン」「抱擁ホルモン」などとも呼ばれ、人間同士の親密性を増幅させ、幸福感をもたらすといわれています。
愛し合っている2人がセックスをすると、男女ともにオキシトシンというホルモンが大量に分泌することがわかっています。しかもオキシトシンが分泌されることで相手への愛情がさらに深まると、軽度なスキンシップでもさらに大量のオキシトシンが分泌されるようになります。
スキンシップをとればとるほどオキシトシンが分泌されやすい体質になり、さらにお互いへの愛情が深まるという好循環が生じるのです。逆に、スキンシップゼロの期間が続き、オキシトシン不足な夫婦になってしまうと、お互いにますますスキンシップをとろうとは思わなくなります。つまり、スキンシップは、とればとるほどとりたくなり、とらなければとらないほどとりたくなくなるものだと言うことができます。
ただし、好きでもない相手とするセックスではオキシトシンはあまり分泌されません。性風俗やマスターベーションでは、オキシトシンによってもたらされる幸福感は限定的でしょう。
オキシトシンがもたらす「幸せなセックス」
セックスレスに陥りそうな夫婦が「非日常」を演出するために、ラブホテルに行ったり、セクシーな下着を身につけてみたりという工夫を試す話はネットなどではおなじみです。しかし実はこれこそが、本来すべきこととは180度真逆の、間違った努力だと言えます。オキシトシンがあふれ出ている「オキシトシン・リッチ」な夫婦なら、特別な仕掛けをしなくても、普通のセックスでたくさんの幸福感を得ることができます。オキシトシン・リッチなセックスでは、テクニックよりも思いやりが、目新しさよりも2人の歴史が、セックスの悦びを高めてくれます。
セックスについ「非日常」を求めてしまうのは、オキシトシンが不足しているからかもしれないのです。「非日常」の刺激は最初のうちこそ効果を発揮するかもしれませんが、すぐに飽きてしまいます。するとさらに強い刺激が必要になり、際限がなくなります。
オキシトシン不足な状態を脱するために本来的にすべきことは、「非日常」を演出して無理矢理興奮を得ることではなく、オキシトシン・リッチな夫婦になることです。何十年と寄り添い愛し合う夫婦が目指すべきは、演出された「刺激的なセックス」ではなくて、オキシトシン・リッチな「幸せなセックス」なのです。
セックスレス解消に「いきなりセックス」はNG
小さなスキンシップから積み重ねていき、少しずつ距離を縮めていけば大丈夫
そうなれば、「非日常」の演出などしなくても、ありのままでセックスを楽しむことが可能になります。
セックスレスの期間が長引き、「今さらどうやって関係をつくり直せばいいんだろう」「恥ずかしくって今さらセックスに誘うなんて無理」という状態にまでなってしまったら、無理していきなりセックスをしてもただのストレス。そんな場合は、小さなスキンシップから積み重ねていき、徐々にオキシトシン分泌を復活させましょう。長い間セックスレスになっていたのなら、それこそ本当に知り合ったばかりの異性同士のように、少しずつ距離を縮めていけばいいのです。
だって最初のデートでいきなりセックスに誘う人は少ないでしょう。最初はゆっくり話をして、手をつなぎ、少しずつスキンシップを増やしていき、ドキドキしながら初めてのキスをして、そのあとにようやくセックスという段階にたどり着くはずです。それと同様に、時間をかけて2人の距離を縮めていきましょう。
妊活中のセックスも同様です。「排卵日だから、さあ、しましょう!」というのではなく、日ごろから親密性を高め、オキシトシン・リッチな夫婦になっておけば、セックスが「義務」になってしまうことは避けられます。
妊活を機にオキシトシンがあふれ出る2人になれたのなら、その関係性も文字通りかげがえのない人生の宝物になるはずです。
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取材協力:ロート製薬株式会社