若い女性に急増中の性感染症
性感染症にはさまざまな種類が
世界では「ジカ熱」が話題に上がっていますが、実は我が国では若い女性の増加が著しく見られる性感染症(STI)があります。それが「梅毒」です。
決して他人事ではない「梅毒」の脅威
梅毒の感染者は2005年の約500人に対し、2015年秋には 2037人と増えています。そして年齢別に分類しますと20~24歳の若い女性は、前年比でなんと2.7倍。「うちの娘は大丈夫かしら?」
という心配とともに
「うちの夫は??」
という意識を持っておいて損はありません。
今や「梅毒は江戸時代の花柳病」という概念は通用しません。なぜなら私が運営する夫婦仲相談所にパートナーの浮気相談に訪れる女性の言葉で一番よく聞く言葉が
「うちの夫が若い女と浮気しています」
「旦那が風俗にはまっています」
なのであります。
夫が梅毒に感染すれば、もちろん妻に伝染すことになります。 今回は、性感染症学会の代議員で厚生労働省のHIV研究に力を注いでおられる尾上泰彦先生に、性感染症の恐ろしさについて「梅毒」の実態をうかがいたいと思います。
症状が出ない性感染症は、気付かず伝染する可能性も
実態を、尾上先生にうかがいました。
尾上:約15~30%ですかね。でもすぐに身体に異常が現れないから放置する人が多いんです。気がつかないということは、病状が進行するだけでなく、性交渉を通じてパートナーまでも感染させてしまうリスクも含んでいるわけです。
二松:知らないうちに人からもらい、知らないうちに人に渡す。静かに広がってゆくのですね。
尾上:そうですね。死にいたる梅毒もありますから早めに治療しなければなりません。
二松:梅毒にはいくつか種類がありますか?
尾上:大きくわけて3つあります。一つ目に症状が現れる顕症梅毒か、症状が現れない無症候梅毒、二つ目に先天梅毒か後天梅毒、三つ目に早期梅毒か晩期梅毒があります。特殊なものにHIV感染に併発した梅毒があります。主なものを説明しますね。
●無症候梅毒
これは臨床症状は認めないが梅毒血清反応が陽性のものをいいます。
臨床的には、
1 初感染後、全く症状がでない
2 第1期から2期への移行期
3 第2期の発疹消褪期や陳旧性梅毒
などの場合があります。
陳旧性梅毒の中には、治療を要しないものも数多くあるため、むやみに患者扱いをしない配慮が必要となります。
●先天梅毒
梅毒に罹患している母体から出生した児で、生まれた時に肝脾腫、紫斑、黄疸、脈絡網膜炎、低出生体重児などの胎内感染を示す臨床症状があります。
梅毒疹、骨軟骨炎など早期先天梅毒の症例、乳幼児期には症状を示さずに経過し、学童期以後に内耳性難聴症状など呈する症例があります。
感染症動向調査の報告では、先天梅毒はこの1年で10例程度の報告があります。現在も撲滅したわけではないということですね。妊婦での徹底したスクリーニングが大切です。
●HIV感染に併発した梅毒
性行為によるHIV感染が増加しています。男性、特に男性同性愛者MSMでは梅毒患者のHIV感染率が比較的高いため、梅毒を診断した際には、患者に説明の上、HIV感染の有無を検査することが推奨されています。
特に、梅毒による潰瘍性病変(初期硬結、硬性下疳など)のある場合、HIVの感染確率が高いといわれています。
HIV感染者では、第1期梅毒の期間、無症状であったり、口腔など陰部以外に発症することがあります。第2期梅毒の症状も、悪性梅毒(異型梅毒)といってグロテスクな顔貌になる重症の例が見られます。また、神経梅毒が疑われる場合は、脳脊髄液検査を行わなければなりません。
二松:顔のパーツが原型をとどめないと聞いたことがありますが、今回、写真を見せていただいて驚きました。おそろしい病気です。
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