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日本サッカーの「2015年の一文字」は?

2015年の世相を表す漢字に、「安」が選ばれた。日本サッカーには、どんな一文字がふさわしいだろう。年末恒例の企画をお伝えする。

戸塚 啓

執筆者:戸塚 啓

日本代表・Jリーグガイド

2ステージ制と2人の代表監督

2015年の日本サッカーを表す一文字には「2」をあげたい。

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J1リーグは今年から、「2」ステージ制へ変更された。サッカー人気回復の起爆剤として、2004年まで行われていた2ステージ制へ変更し、チャンピオンシップも復活させた。各ステージの優勝争いに加え、年間王者を決めるチャンピオンシップを開催することで、メディアに取り上げられる回数を増やしたいとの狙いである。

年間王者に輝いたのは、サンフレッチェ広島だった。「2」年ぶりの頂点に輝いた森保一(もりやす はじめ、47歳)監督のチームは、2012年以来「2」度目の出場となったクラブW杯で、オークランド・シティ(ニュージーランド)、マゼンベ(コンゴ)に連勝してベスト4まで勝ち上がった。

アルゼンチンの強豪リーベル・プレートとの準決勝も、臆することなく戦った。チャンスの数では相手を上回ったと言っていい。勝ちきれなかったのは悔やまれるものの、過密スケジュールのなかでチームの持ち味を発揮した。サンフレッチェの戦いぶりは、間違いなく称賛に値する。

日本代表は「2」人の監督に率いられた。1月のアジアカップ終了後にハビエル・アギーレ監督(57歳)が更迭され、3月にヴァイッド・ハリルホジッチ新監督(63歳)が就任した。

突然の監督交代は健康や家庭の事情などでなく、試合の結果が発端でもない。かつて仕事をしたスペインで八百長疑惑が生じ、日本代表の監督を続けることに支障が生じると危惧されたからだった。

いずれにせよ、想定外の出来事である。日本代表は6月の開幕したロシアW杯アジア2次予選で首位に立っているものの、その戦いぶりからは躍動感が読み取れない。ハリルホジッチ監督のもとで13試合を消化しているが、チームの成長はゆっくりとしたものに止まっている。


違う角度から「2」を見つめると……

「2」という数字を、少し違う角度から解釈したい。

2015年は両親の国籍が「2」つのアスリート、つまりハーフのアスリートが注目を集めた。たとえば、プロ野球の楽天イーグルスにドラフト1位指名を受けたオコエ瑠偉(18歳)であり、世界陸上に短距離代表として出場したサニブラウン・アブデル・ハキーム(16歳)だ。

オコエやサニブラウンのような選手の取り込みは、いまや世界のサッカーの常識となりつつある。昨夏のブラジルW杯で優勝したドイツ代表には、両親がトルコやポーランド出身の選手、父親がチュニジア人の選手らが名を連ねている。

隣国と国境を接するドイツと島国の日本を単純に比較するのは、無理があるかもしれない。移民に対する政府の考えかたも違う。それは分かっている。日本サッカー界が自覚するべきなのは、「待っている」だけでは優秀な人材は集まらない、ということだ。


Jリーグのクラブは「待ち」の姿勢が強い

Jリーグのクラブは、小学生や中学生をセレクションによって集めている。J1リーグの強豪ともなれば、自分たちのチームに合った選手を「選ぶ」ことができる。高倍率を突破した将来性溢れる才能を、自分たちの手で育てることに注力している。

その結果として、選択肢が狭まっているのではないだろうか。

ホームタウンで評判になっている俊足の子どもを、練習に参加させているクラブがあるだろうか。同級生でズバ抜けて背の高い子どもに、「一度ボールを蹴ってみない?」と声をかけるクラブがあるだろうか。

まったくないとは言えない。ただ、圧倒的に少数派だというのが、僕自身の肌触りである。

サッカー以外のスポーツをやっている子どもたちを、奪い取れというつもりはない。サッカーの楽しみに触れる機会を、Jリーグのクラブに提供してほしいのだ。

幼少期に様々なスポーツを経験するのは、子どもたちにとって悪いことではない。むしろ、自分では気づいていない才能を発掘できるかもしれない好機だ。Jリーグの理念である「日本のスポーツ環境を豊かにする」ためにも、競技同士の連携を図っていけないものだろうか。


ラグビー界が抱える危機感

先のW杯で日本国内を熱狂させたラグビーのトッププレーヤーたちは、「ブームで終わらせたくない」との危機感を抱いていると聞く。ならば、人気回復を目ざすサッカー界とラグビー界が、手を組むことはできないだろうか。J1リーグを「2」ステージ制にするといった仕組みの変更ではなく、同じ思いを持つ競技段階と手を組むことからも、現状を打破するきっかけを探れるはずである。

それもまた、「2」を今年の一文字とした理由だ。

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