異色のアメリカン バルカンS
2015年にカワサキから異色のアメリカンバイク・バルカンSが発売されました。アメリカンバイクの特長といえば丸型で小型のヘッドライトやV型エンジン、ローロングスタイルなどが定番ですが、このバルカンSは異型ヘッドライトを採用し、エンジンは並列二気筒エンジンを搭載しています。
バルカンSは2015年6月15日にリリースされましたが、2015年12月現在、カワサキのアメリカンバイクとしてラインナップされているのは海外向けも合わせてバルカン1700、バルカン900、そしてバルカンSの三車種となっていて、バルカンS以外はVツインエンジンと丸目一灯ヘッドライトを採用しています。
他の国内メーカーのアメリカンバイクを見てみても異型ヘッドライトや並列二気筒エンジンを搭載している車輌はありません。バイクの心臓部ともいえるエンジンや顔とも言えるヘッドライトが他のアメリカンと違うだけでバルカンSはかなり異色な存在であると言えます。
ゆったりとした町乗りや深めのバンク角がもたらすスポーツライディングなど、普段使いからツーリングまで幅広く対応するというバルカンSですが足を前に投げ出すフォワードコントロールポジションを採用しています。
ハーレーなどの伝統的なアメリカンバイクで採用されることが多い足を前に投げ出す形になるフォワードコントロールですが、身長があまり高くない筆者にとっては車体の大きな大型バイクのフォワードコントロールはポジションが遠いので扱いにくいイメージがあります。
では、実際に試乗してみるとどうなのか? 今回もバルカンSを一週間都内の通勤で試乗してインプレッションをお届けします。
まずはバルカンSの装備をチェック
バルカンSの最大の特徴はエンジンに並列二気筒エンジンを搭載していることです。並列二気筒エンジンは一般的なアメリカンバイクに搭載されるV型エンジンに比べて構造上、横に広くなってしまうため車体の幅が広く見えるはずなのですがエンジンはとてもコンパクトです。
また、現在は環境規制への対応などのためにアメリカンバイクも水冷エンジンを搭載していますが、伝統的なアメリカンバイクのスタイルは空冷エンジンです。バルカンSは水冷エンジンを搭載していますが、エンジンの外観上のデザインを空冷エンジンのように見せるようにフィンがついています。
シートは幅広でクッション性の良いシートを採用していますが、シート高は705mmなので足つき性は身長165cmの筆者でも停車時に両足がべったり付きます。
そして、懸念していたフォワードコントロールのポジションですが、ステップ位置は三段階で調整可能で、日本仕様はデフォルトのセッティングは一番後ろ(最もポジションが楽なセッティング)になっているようです。そのため海外からの逆輸入車輌やハーレーなどに比べるとポジションは楽で、私でも足が伸びきる感じはありませんでした。ただ、リアブレーキをかけるときに若干きつい印象はありました。
ハンドルポジションはシートの一番前に意識的に座れば少しひじに余裕がある程度ですが、ハンドルを切る際には意識的に前傾ポジションにしないと余裕がなくなってしまい、街中での小回りの際に思ったよりもラインが膨らんでしまうことがありました。しばらく乗れば慣れてしまうことではあるのですが、オプションでシッティングポジションを53mm前方にするカスタムシートが用意されているため、私のように小柄な方はこちらのシートに変更することをおすすめします。
バルカンSは様々な体格のライダーに合うように数々のアクセサリーが用意されているため、ノーマル状態でポジションが合わなくても自分に合うようにカスタムが可能です。ポジションが最適化された際の操舵のしやすさは格別ですので、ピッタリのポジションにあうようにアクセサリを選ぶのが良いでしょう。
次のページでは街中で実際に試乗したインプレッションをお届けします。