十分すぎるライドフィール
元々車高が高いストリートレーサーへとカスタムしていたので、違和感なく走り出します。ローダウン仕様のXL883N アイアンでもプレミアムサスペンションの実力は体感していたので、それ(280mm)よりもストロークが長くなったスタンダード高(340mm)で効果的な動きをしてくれるのは当然のこと。
特に好印象だったのがフロントフォークキット。一見すると見栄えが変わらない地味なポイントですが、このフロントフォークはハーレーのみならず、オートバイに乗るうえで極めて重要な部分です。なぜならば、オートバイを操るうえで不可欠なハンドルと直結している支点であり、ここの性能如何で乗り味が変わってくるからです。
テストということで、あえて道路の段差やギャップ、マンホールといった障害の上を走ってみたのですが、障害を乗り越える際の衝撃をしなやかに受け止めつつ、衝撃による不安定な状態(フォークが暴れると表現しますが)をより早く落ち着かせてくれました。ひとえにシングルカートリッジ方式ゆえの恩恵で、フォークの動きが安定すれば当然ハンドリングが邪魔されることはなく、安心してオートバイに乗っていられます。
クルマと違ってオートバイはコーナーの内側に対して倒し込むことで曲がっていく乗り物。ローダウンしていると、倒し込んだ際のステップ位置と路面が近くなってしまい、進入角が少なくなるのはもちろん、ステップが路面に当たってしまうという弊害があります。
加えて[ストローク=衝撃吸収度合い]でもあるので、ストロークが短いローダウンモデルは走行時に受け止めるギャップの衝撃に対して、ストロークの長いものほどの幅がありません。結果的にその短さが衝撃度合いを大きくし、長く走るほどにライダーの体にダメージが蓄積する……というデメリットも。タンデムしたり荷物を載せたりと荷重がアップすれば、さらにストロークが短くなって……という風に、ライドフィールが良くなることはありません。
見た目を選べば、実用性を損ねることになる。好みのカスタムスタイルによって、選ぶサスペンションが変わってくるわけです。
意外に“ちょうどいい”300mmを使うのもテ
「今のロースタイルが気に入っているけど、後ろに人を載せたり荷物を積んだりするのはちょっと不安……」というフォーティーエイトやアイアンのオーナーもいることでしょう。サスペンションに強弱を付けられるプリロード調整機能が備わったとはいえ、280mmという一番短い尺のものでは物理的な限界があります。
そこで、ちょうどいい300mmを使ってみるのはアリかと思います。上の写真の中央は300mmサスペンションに換えたフォーティーエイトで、本来は左側のアイアンのようにリアフェンダーが覆い被さるスタイル。340mmだと右側のようになりますが、300mmなら280mmとほとんど変わらないスタイルを維持できて、2cmもストロークに余裕ができます。この使い分けは結構便利だと言えますね。
また、このプレミアムサスペンションは自分の好みに合わせてスプリングの強弱を変えることができるので、普段は柔らかめにしつつ、荷物や人を載せるときにはちょっと硬めにするなど、使い分けが可能なんです。300mm以上のサスペンションなら、かなり幅広く対応してくれるでしょう。
性能とビジュアル、それぞれのメリットとデメリットを理解したうえで、自分の好みに合ったハーレーを選ぶ。さらに、乗り始めてから「もっとここが良くなれば」という点についてもカスタムで対応することができる。これがハーレーに乗る楽しさのひとつです。そして自分だけの特別な一台に出会えれば、それは一生ものの相棒になること間違いなし。ご興味がある方は、最寄りのハーレー正規ディーラーでいろいろ聞いてみてくださいね。