悪いのは「自分たち」ではなく「問題」そのもの

妖怪「サンゴクライシス」

妖怪「サンゴクライシス」や「イクジヅカレ」のしわざ!?

ストレスがたまっていると、つい相手を責めたり、相手の性格を否定したりするといった方向に進みがち。すると相手だって面白くないですから反撃を始めます。結局お互いに首を絞め合うような状態になります。いいことありません。

夫婦の間になんらかの解決すべき問題が発生したとき、それを「あの人のせい」とか「私たちは仲が悪い」などと思ってしまうと、上記のような悪循環に陥ります。そんなときに試してほしいのが、「問題を外在化してみる」ということです。

「彼が問題」「私たちの問題」ではなく、「私たちのところに問題がやってきた」ととらえるのです。悪いのは「パートナー」でも「私たち」でもなく、「問題」であると思うのです。

たとえば人前で話すときに緊張してしまうという人がいるとしましょう。人前に立った瞬間に強い緊張を感じます。でもそこで「自分は緊張している」と考えるのではなく、「『緊張という魔物』がやってきた。どうやってその魔物を撃退するのか(あるいは、緊張と共存するのか)」と考えるのです。

問題をいったん自分の外に置くことで、客観的視点が得られます。少し冷静になって対処できるようになります。「自分が悪い」という観念が薄れ、「どうやって立ち向かうか」という前向きな自己有力感が生まれやすくなります。これは心理療法で使用される「外在化」というテクニックです。

妖怪「サンゴクライシス」だって怖くない

夫婦関係に関して言えば、たとえば、夫の立場から。子育て中の妻が、やたらと八つ当たりをしてきたり、子供に厳しすぎるしつけをしているように見えるとき、「ストレスがあるのはわかるけど、なんでコイツはこうなんだ」と妻を悪者にするのではなく、「イクジヅカレ」という妖怪が妻に憑依しているだけなんだと考えるのです。

だとすれば攻撃する相手は妻ではなく、妖怪「イクジヅカレ」ということになります。妖怪「イクジヅカレ」の苦手なものが、「上手に話を聴いてもらうこと」や「感謝の気持ちを伝えてもらうこと」や「一人でリラックスできる時間」だと知っていれば、それらの武器で、妖怪退治ができますよね。

「産後クライシス」も同じです。産後に夫婦仲が悪くなるのは、当然です。新しい家族がやってきて、家族の中での人間関係のバランスが一度崩れるからです。そのことに「産後クライシス」という名前を付けたことは、その言葉をつくったテレビ局のファインプレーでした。なんとなくぼんやりしていた問題を概念化することができたからです。

次にその概念を「外在化」すればいいのです。つまり、「私たちは産後クライシスに陥ってしまった」「私たちは不仲である」「私たちが(あるいは相手が)産後クライシスをつくりだしてしまった」と考えるのではなく、「サンゴクライシスという妖怪がやってきた」ととらえればいいのです。

そうすれば、自分を責めたり、相手を責めたりしないで、どうやったら妖怪「サンゴクライシス」を退治できるかという発想に切り替えられます。そして、夫婦のどちらかだけががんばるのでは「サンゴクライシス」にはかなわない、「そうだ夫婦で力を合わせて、この難局を乗り越えなければいけないのだ」ということに気づけるようになるのです。そうしたらもう怖いものはありません。

夫婦で力を合わせなければ妖怪退治はできない

ただし、件の「産後クライシス」報道には問題点もありました。「産後クライシス」という名前を付けるまでは良かったのですが、「産後クライシス」の恐怖や破壊力をあおるばかりに、「自分たちは産後クライシスだったんだ。もう手遅れだ」などと、自分自身にレッテルを貼ってしまう人たちが続出しました。

自分たちはすでに妖怪「サンゴクライシス」にとらわれてしまっているのだと思い込み、それをパートナーのせいにして、自分たちにはその妖怪に立ち向かう能力がないと決めつけてしまうケースが増えたのです。

さらに、これから出産を迎える人たちに対しては、妖怪「サンゴクライシス」に一度つかまったら最後だから、何としても避けなければいけない、逃げなければいけないという強迫観念を与えました。要するに「あなたたちに産後クライシスに対処する能力はない」というメッセージを大々的に発信してしまったのです。それでは子供を授かりたいという気持ちも萎えてしまうでしょう。

そうではなくて、「産後クライシスはどんな夫婦にもやってくる。でも二人で力を合わせれば必ず撃退できる。そのあとにはチームメイトとしてあるいは戦友としての夫婦の絆が深まる」というメッセージを発信すべきだったのです。

夫婦の間に生じる問題のほとんどは「産後クライシス」のように、どちらか一方ががんばるだけでは解決できません。二人で力を合わせることが肝心です。二人で力を合わせるべきときに、いつまでたってもお互いに相手を責めているようでは、問題を解決できるわけがありません。最悪の場合、夫婦関係が崩壊してしまいます。

そうならないように、夫婦間の問題が生じたら「外在化」というテクニックを思い出してみてください。要するに、「ぜんぶ妖怪のせいなのだ!」と思うことです。

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