ガレージをピットに、コンビニまでの道をサーキットに

アバルト695ビポスト

軽量化により車重は1060kgに。0-100km/h加速は5.9秒(欧州参考値)、JC08モード燃費は14km/lとなる


まずは、誰もが気になるドグミッションの扱いから。通常、ドグミッションといえば直線上にシフトレバー動かすシーケンシャルパターンが一般的だが、ビポストには、あえてHパターンに“変換”する機構が備わっている。だから、さほど気難しく考えず、フツウの3ペダルミッションのように操作してやればいい。ただし、ノンシンクロのため、旧車と同じように、1速とバックを使う際には、完全停止の状態でレバー操作をしなければならない。注意すべきは、そこだけだ。

アバルト695ビポスト

シンクロのないレース用のドグリングトランスミッションを公道仕様車として初めて採用


エンジンをかけた瞬間から、史上最強を全身で感じることができる。たとえノーマルモデルを味わったことのない方が座っていても、そのサウンドとバイブレーションに、ぞくぞくとした感覚が沸き出してくるはず。それこそが、レーシングカーのアセットコルセ695直系たる所以だろう。

まずは、あわてずあせらず、ゆっくりとスタートすればいい。身体をマシンに慣らしながら徐々に全ての操作をスピードアップし、秘めた性能を引き出していく。そんなプロセスを楽しみたいクルマでもある。一緒に成長するわけだ。

アバルト695ビポスト

アバルトのレーシング部門が販売するレース専用モデル「アバルト695アセットコルサ」の公道版。アルミエンジンフードやOZレーシング製18インチ軽量アロイホイール、チタンホイールボルトなども備わる


意外にも、乗り心地が悪いとは思わなかった。もっと腹に響くようなスパルタンな硬さを想像していたが、それ以下だったから相対的に悪くないと思ったのだろう。ソリッドでフラットな印象はアバルト500に共通するものだし、それをさらに固めてはいるものの、ボディのしっかり感とダンパーの性能の良さが不必要な衝撃をドライバーに伝えないのだ。硬いゴム毬で支えられたような乗り心地である。まぁ、多くの人にとっては、ハードコアなシロモノだろうけれど。

加速は、さすがにすさまじい。ノーマルアバルトのようなスリルある危なっかしさとは無縁で、ガツーンガツーンとハンマーで背中全体を殴り飛ばされるような加速である。ドグリングに特徴的なダイレクトなシフトアップフィールがたまらない。

基本的に、ハンドリングのキャラクターはノーマルアバルトの延長線上にある。楽しめる領域が広がり、すべてのレスポンスがダイレクトかつシャープで、意のまま感が増している。強烈なトルクステアも、その分増しているけれど、それを制御する楽しみもまた、魅力にひとつ。

わずかなロールに自信と確証をもってコーナーに突っ込んで行けば、ピターッと張り付くようなコーナリング姿勢に感動し、旋回最中の信頼性あるコントローラブルな感覚にイマドキ新鮮な驚きを発見することだろう。要するに、刻一刻が一心同体で、楽しいマシンなのだった。

もちろん、ビポストとて、レーシングカーではない。けれども、この軽さと高剛性、高いパフォーマンス、そしてドグリング式ミッションを得たビポストの走りは、ガレージをピットに、コンビニまでの道をサーキットに、それぞれの気分を変えてしまうだけの魔力を秘めている。

アバルト695ビポスト

低回転域から高回転域までより高いパフォーマンスを発揮するデュアルステージエキゾーストシステムを装着。バルブの切り替えにより気分を高めるサウンドに


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