川崎が残した、歴史的なインタビュー
しかし、そんな中でも1人、やけにはしゃぐ日本人選手を発見した。ブルージェイズの川崎宗則内野手(34)である。
ブルージェイズはア・リーグ地区シリーズの相手レンジャーズに2連敗のあと3連勝し、22年ぶりのリーグ優勝決定シリーズへの進出を決めた。出場選手登録から外れていた川崎は、盛り上げ役としてチームメートを鼓舞し、試合後のシャンパン・ファイト(日本のビールかけ)にも“参戦”した。感動を呼び起こしたのは、その際、地元テレビ局から受けたインタビューの内容だった。
「僕らは何も恐れない。余計なことは考えず、打って、投げて、捕る。そして勝つ!」
川崎は英語で力強く話したのだ。この明るくユニークなキャラクターが一発で伝わるコメント映像は、全米中で話題となり、専門誌スポーツ・イラストレーテッド電子版などは「後世に残るインタビューだ」と伝えた。つまり、「歴史的」インタビューを川崎は残したのである。
川崎は今季、マイナー契約でスタートし、メジャーとマイナーを5度、行ったり来たりした。メジャーでの成績は、23試合、28打数6安打の打率.214、0本塁打、2打点、0盗塁に終わった。不本意なシーズンだったことだろう。昨年オフにオファーがあったといわれる古巣ソフトバンクでプレーした方が、はるかに年俸も高く、成績も良かったに違いない。ということは、純粋にメジャーリーグが好きで、ブルージェイズが好きで、トロントが好きなのだ。その愛情が行動やコメントでわかるため、地元トロントでは絶大な人気を誇っているのだろう。
日本人は自分の「感情」や「気持ち」を伝えるのが、あまり得意ではない。川崎はその明るいキャラクターから「感情」や「気持ち」を伝えるのがうまい1人だが、海を渡っての4年間(2012年のマリナーズを皮切りに、2013年から15年がブルージェイズ)でさらにうまくなった。チームメートに陽気なヒスパニック(スペイン語圏の出身者)が多いことや尊敬するイチロー(現マーリンズ)がメジャーのユニホームを着続けていることもその要因だが、何よりも“水”が合ったといえる。
今季、大幅な戦力補強をし、躍進したブルージェイズ。22年ぶりの世界一になるかならないかはまだこの時点ではわからないが、「チアリーダー」として川崎がチームに貢献していることは間違いない。トロント市民はそのことを知っている。