今シーズンの田中を悩ませた「一発病」
ヤンキースにとって3年ぶりのポストシーズン進出となり、5万113人の大観衆がヤンキースタジアムに詰め掛けて、田中の背を押した。しかし、今シーズンを悩ませた「一発病」がまたも顔を出してしまった。
二回、先頭のラスマスに右翼へ運ばれた。四回にも先頭のゴメスに左中間に叩き込まれた。ともに初球。「両方とも捕手が構えたところに投げ切れていない球を打たれてしまった」と振り返った。
田中は今季、154投球回で25本塁打を許した。昨季よりも10本も多い。その中でも目を引くのが、19本というソロ本塁打の多さだ。走者を置かない場面では、少しでも少ない球数で長いイニングを投げ抜くために、ストライクを取りに行く傾向にある。しかも、「初球ストライク」がメジャーの流儀であるため、打者も狙っている「初球」に「何となく取りに行く」確率も高まる。
この日の2本塁打もまさに走者のいない、その回先頭の打者への初球だった。日本に比べて球数を考えなければいけないメジャーならではの壁といえるが、田中の来季3年目の課題が大一番で浮き彫りになってしまった。
明確になった「絶対的エース」としての反省と課題
昨年の右ヒジの不安を払拭することから始まった今季だが、開幕投手を務め、後半戦も初戦を任された。4月に右腕上腕部、9月に右太もも裏痛と2度戦列を離れたが、「もう右ヒジのことは聞かれなくなった。後半戦はリズムに乗れて、不安はなかった。それは自信になってきました」という。しかし、田中に求められているのでは、そのような低いレベルのことではない。開幕投手(今季は敗戦)はもちろん、ポストシーズンなどのビッグゲームで「エース」として勝ち切ること。「絶対的な投手になれば、あそこでマウンドを降ろされる(5回83球)ことはないだろうし、そういう投手にならなければいけない。より高いところを目指して投げていくだけです」と言い切った。
絶対的なエースとしての反省と課題が明確になった。体のケアはもちろん、万全なオフを過ごさなればいけないが、勝負のメジャー3年目となる来季、結果を求める目が厳しくなるのは確かであり、その期待に応えるためにより高みを目指す姿勢がポイントとなる。