最終盤での順位変動もあり得る
チャンピオンシップの出場チームは、第1、第2両ステージの優勝チームに加え、第1、第2ステージの総勝点=年間勝点の上位3チームまでが出場の可能性をつなぐ。
「可能性をつなぐ」という抽象的な表現にしたのは、ステージ優勝のチームは年間勝点でトップ3に入るのが濃厚だからだ。実際に、第2ステージを6試合残した28節終了時点(9月23日時点)では、第1ステージ優勝の浦和レッズが年間勝点1位、第2ステージ首位のサンフレッチェ広島が年間勝点2位となり、年間勝点3位のFC東京を加えた3チームがチャンピオンシップを争うことになっている。
ただ、28節終了時点の順位が、さほど説得力を持たないのも事実だ。リーグ最終節までの残り6試合で、順位が変動する余地は十分にある。
過去5シーズンまでさかのぼって、終盤の戦いぶりをおさらいしてみよう。
昨シーズンの28節終了時点の順位は、以下のとおりだった。
1位:浦和レッズ(勝点56)
2位:ガンバ大阪(勝点52)
3位:サガン鳥栖(勝点50)
4位:鹿島アントラーズ(勝点49)
5位:川崎フロンターレ(勝点48)
上記の順位から6試合を消化して、最終的な順位はこのようになった。
1位:ガンバ大阪(勝点63)
2位:浦和レッズ(勝点62)
3位:鹿島アントラーズ(勝点60)
4位:柏レイソル(勝点60)
5位:サガン鳥栖(勝点60)
※勝点が同じチームの順位は、得失点差、総得点によって決定(以下、すべて同)。
残り6試合で、浦和と鳥栖は2敗、ガンバ大阪と鹿島は1敗を喫した。それによって首位が交代しただけでなく、鹿島が3位にランクアップした。
対照的だったのは柏レイソルだ。残り6試合に全勝し、28節終了時は8位だった順位を4位まであげている。
2013年のF・マリノスが直面した「重圧」
2013年はどうだろうか。28節終了時点の順位はこうだった。1位:サンフレッチェ広島(勝点53)
2位:横浜F・マリノス(勝点53)
3位:浦和レッズ(勝点51)
4位:鹿島アントラーズ(勝点50)
5位:セレッソ大阪(勝点47)
そして、最終的な順位はこのようになった。
1位:サンフレッチェ広島(勝点63)
2位:横浜F・マリノス(勝点62)
3位:川崎フロンターレ(勝点60)
4位:セレッソ大阪(勝点59)
5位:川崎フロンターレ(勝点59)
28節終了時の首位は広島だが、その前後はF・マリノスが首位に立っていた。ところが、31節、33節、34節(最終節)と終盤に3つの敗戦を並べてしまい、広島に優勝をさらわれてしまったのだった。
F・マリノスを牽引したのは、日本代表で長く活躍したディフェンダーの中澤佑二(37歳)であり、この年のJリーグMVPに輝くミッドフィールダー中村俊輔(37歳)である。2015年現在もチームの主軸を担うふたりは、数多くの難局を乗り越えてきた経験者だ。その彼らを擁したF・マリノスが優勝を逃してしまうところに、シーズン最終盤の難しさがある。
カギを握るのは浦和レッズか?
トップ3の順位が、残り6試合で変動しなかったシーズンもある。2012年だ。首位の広島を2位の仙台が追いかける展開で終盤を迎え、広島がそのまま逃げ切った。上位2チームを追いかけた浦和も、3位を維持してシーズンを終えている。
2011年はハイレベルな攻防が繰り広げられた。残り6試合で勝点「16」を積み上げた柏が、ガンバ大阪を交わして史上初のJ1王者に就任した。同じく残り6試合で勝点「18」をプラスした名古屋も、首位だったガンバを押し退けて2位でフィニッシュした。ガンバは3位に転落した。
2010年は名古屋が独走でゴールテープを切った。28節終了時点で2位の鹿島に勝点「11」の大差をつけ、最終的には勝点10差で2位以下を振り切っている。
2位以下はすべて変動した。残り6試合の時点で2位だった鹿島は4位に転落し、3位だったガンバ大阪が2位にランクアップした。また、5位だったセレッソ大阪が3位に食い込んでいる。
2015年シーズンの年間順位は、28節終了時点で以下のとおりである。
1位:浦和レッズ(勝点61)
2位:サンフレッチェ広島(勝点59)
3位:FC東京(勝点53)
4位:ガンバ大阪(勝点51)
5位:川崎フロンターレ(勝点47)
6位:鹿島アントラーズ(勝点47)
ここまで年間勝点首位の浦和は、残り6試合で鹿島、ガンバ大阪、FC東京、川崎フロンターレと、上位陣との対戦を4つも残している。第2ステージの行方とともに、年間勝点の争いにおいても、浦和はカギを握る存在と言えそうだ。
広島もFC東京、川崎フロンターレ、ガンバ大阪との対戦がある。上位チームの潰し合いは多い。残り6試合で順位が入れ替わる可能性を、十分に含んでいると言っていいだろう。
昨シーズンの国内3冠王者・ガンバ大阪は、リーグ戦以外にも射程圏内にとらえるタイトルがある。アジア最強のクラブ王者を決めるチャンピオンズリーグと、Jリーグカップで、ともにベスト4まで勝ち上がっているのだ。
さらに加えて、日本代表の肩書を持つ選手も多い。9月のW杯予選にはゴールキーパー東口順昭(29歳)、DF丹羽大輝(29歳)、米倉恒貴(27歳)、フォワード宇佐美貴史(23歳)の4人を送り込んでいる。国内のクラブでは最多だ。日本代表は10月、11月にアウェイでのW杯予選を控えており、彼ら4人は長距離移動や時差とも向き合わなければならない。コンディションを維持できるかどうかが懸念される。
シーズン終盤の攻防を左右するのは、タイトルへの「飢え」だ。タフなメンタルで肉体の限界を乗り越えた選手がスポットライトを浴び、そうした選手を擁するチームが栄冠をつかむことになる。