細かな装備に物足りなさも
エンジンは直噴の2.0Lターボのみ。TTは211ps/350Nmから230ps/370Nmに増強されている。TTSは286ps/380Nmまでアップされていて、全車にデュアルクラッチトランスミッションの6速Sトロニックが組み合わされる
ついでにいうと、エンジンスターターを押して、効果音がしてメーターが表示される一連の流れはアウディらしくクールだが、クーペモデルだけにシートベルトが自動で出てくるメルセデスやBMWのハンドオーバー(オートマチック)機能も欲しいところ。
また、クルーズコントロール、アウディサイドアシスト、アウディアクティブレーンアシスト、リヤビューカメラ、パークアシスト、アウディホールドアシストからなる「アシスタンスパッケージアドバンスト」はオプション設定となっているので、とくに後方視界が限られるボディ形状だけにぜひチョイスしたい。
エンジンは2.0Lの直噴ターボのみで、アウディTTクーペとTTロードスターが230ps/370Nmを、アウディTTSが286ps/380Nmに増強され、全車6速Sトロニックが組み合わされている。
アルミと高張力鋼板を使ったハイブリッドボディは、どんな速度域でもかっちりとした剛性感が得られているし、昔のアルミボディにあったようなフロアから微振動も当然ながら感じられない。今回は、オープンボディのロードスターには試乗できなかったが、ボディのしっかり感でいえば、モデル末期のBMW Z4やポルシェ・ボクスターはもちろん、ケイマンよりも高く感じたほどだ。
大雨の中でも絶大な安心感が得られる
今回の試乗では、台風による大雨によって路面が川のような状態になっている場所もあり、音や振動面も含めて、走りの実力の一端もうかがえなかったが、高速道路では一部乾き始めている場所もあり、少し速度を乗せていってもクワトロ仕様は万全の安定性と、高いライントレース性を披露してくれた。
TTSになるとパワーも公道ではまったく不足はなく、もう少しソリッドな味付けでもいいかなと思うハンドリングで破綻の様子は皆無。ピュアスポーツでありながらもGTカー的な安定感もあり、誰もが安心してステアリングを握れるスポーツクーペに仕上がっているのは間違いない。
新世代のクワトロは、普通に運転している際はフロントアクスルに駆動力が振り分けられ、高速でコーナーをクリアする際や全快加速時など、前後輪に速度差が生じると後輪にも駆動力が配分されるシステムだが、感知することはできなかった。
ほかにも「アウディドライブセレクト」で省燃費運転の「エフィシェンシー」モードを選ぶと、アクセルオフ時にエンジンをドライブシャフトから切り離し、コースティング状態のようになる「フリーホイーリング機能」も用意されているが、こちらも試乗日には確認できなかった。当然ながらそれだけ違和感のない切り替えができているということだ。
上記以外にも革新的な装備を数多く採り入れているアウディTT。クワトロという武器を最大限活かしているのは新型TTもそうだが、近年のアウディに期待されている「クール」なイメージを内・外装のデザインや装備でこれだけ具現化しているという意味では突出している。
個人的な趣味嗜好で乗る意味合いが強いクーペだからこそ実現できているのだろうし、個性や主張が大切になってくるジャンルだけに好きな人には猛烈に「刺さりそう」。
動力性能やハンドリング、官能面までは今回はチェックできなかったが、新型アウディTTはアウディらしくクールな仕立てでありながら、誰もが気軽に楽しめるスポーツクーペに仕上げられているのは間違いない。