三尊天井?下落基調に入りつつあるニューヨークダウ
日本株が堅調な値動きになっているのとは対象的に、米国株はニューヨークダウが7日続落中となるなど弱く推移しています。米国株の代表的な株価指標の中で最も弱い形をしているのがニューヨークダウであり、上のチャート図に描いたように、教科書通りの右肩下りの三尊天井パターンとなっています。そして間もなく50日線移動平均線が200日線移動平均線を下に突き抜けるデッドクロスも発生する予定であり、下落トレンドの姿を映し出しています。もっとも、30銘柄で構成されるニューヨークダウは米国株全体の状況を正確に表すものでなく、例えばITバブル期の隆盛と暴落時のダウを見ていても、その当時何が起きていたかを正確にイメージできません。主要500社で構成されるS&P500指数はダウほど弱くなく、横ばいの動きを続け、200日移動平均線は上回っているものの50日線を割り込んでいます。市場の勢いのトレンドを最も如実に示すナスダックの平均線は右肩上がりの上昇を続けているのですが、8月7日(金)の終値では50日移動平均線を少しだけ割り込むところまで調整しています。
軟調な要因はドル高と商品価格の下落による企業業績の不調と利上げへの懸念
ニューヨークダウが軟調な理由の1つはドル高にある・・・
8月7日(金)に7月の米国雇用統計が発表され、21万5千人の増加と市場予想とほぼ市場予想通りでした。非常に強いとは言えませんが十分堅調な数字を続けており、直前月の速報値についても上方修正されました。失業率は2008年以降最良となる5.3%で変わらずです。
全般に米国経済やインフレ圧力は強いとは言えないものの、緩やかな成長を十分長く続けており、9月の利上げの可能性が高まってきていると思います。利上げは当然短期的に株価にはマイナスになります。それゆえ、米国株は年初からモタモタした値動きとなっていました。
そして景気が良くなりつつあり、利上げが意識されていることもあって(欧州、日本は逆に量的金融緩和を行っていることもあって)、米ドルに資金が流れ込み、昨年後半からドル高が進行し、これが米国のグローバル企業のドル建ての業績の重しになっています。また、米国企業ではエネルギー企業や商品企業の時価総額も大きいのですが、現在、商品価格は急落を続けています。商品価格は米ドル価格に反比例することや、商品の大量消費者である中国の経済失速、商品で大きな構成ウェートを占める原油の需給関係が悪化していることがその理由です。
米国の油田における稼働リグ数は反転上昇に転じており、シェールガス・オイルの掘削企業は50ドル以下でも採算の取れる革新技術を開発中です。今後も米国の原油産出量が増え、加えてイランと米国の歴史的合意によって、イラン産原油も国際市場に出てくることで、原油は新安値を試す段階に入っています。中国株暴落の起きる直前に60ドルだったWTI原油価格はついに週末値として3月の安値を割り込みました。
以上を考えると、グローバル企業が大きな構成ウェートを占めているニューヨークダウの調整はもう少し続く可能性があります。ただ、米国の景気は良い状況が続いており、年末に向かって米国が牽引役となり、世界経済が回復基調になってくるのであれば、調整後はいずれ上昇トレンドに戻れる可能性があると思います。
参考:米国株通信
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