保健師/保健師の学校について

西南女学院大学 現場の思いを大切にした教育

保健師になるための学校を個別に紹介します。第17回目は福岡県北九州市の西南女学院大学保健福祉学部看護学科です。現場保健師の視点を学ぶ教育に力を入れています。

西内 義雄

執筆者:西内 義雄

保健師ガイド

選抜は2年前期

西南女学院大学はキリスト教に基づく女子教育を行っている大学です。創立は1922(大正11)年、看護学科は1994(平成6)年に開設され定員は90人。そのうち保健師コースに進むことができるのは18人となっています。

キャンパスは北九州市小倉北区にあり、JR鹿児島本線の戸畑駅、小倉駅、JR日豊本線の南小倉駅から、それぞれバスが出ています。

保健師コースへの選抜は2年前期が終了した時点の成績(全科目)を重視しつつ、小論文、面接も考慮しながら決めています。同大学の場合、選択性を採用してからすでに2回の選抜を行っているわけですが、保健師希望者は1回目が約30人、2回目が約50人とのことでした。

現場保健師の視点を学ぶことを重視

保健師教育で特長的なのは、そこに関わっている教員全てがひとつののこだわりを共有していることがあげられます。それは統合教育の頃からの伝統で、とくに実習ではありきたりの体験をさせるのではなく、現場の生の声を聞くことに力を入れています。その意義について、看護学科の伊藤直子教授は、

「本学では保健師にとってもっとも必要なものは何かを問いかけ、常に考えさせながら教育を行うことを重視してきました。一般的には家庭訪問や健康教育を経験させるものですが、それよりも現場の保健師さんたちの視点を学ぶことに時間を費やします。といいますのも、学生が実習で行う健康教育は、本物の現場保健師の足元にも及びません。だけど、話を聞いてくれた住民の皆さんは温かく迎えてくださるので、妙な満足感を得てしまい、保健師の仕事が分かったような気になってしまう。そうじゃない、私たちはそれを体験させたいのではなく、何が大切なのか、そのエッセンスに触れることを重視したいとの思いがあり、現場の保健師、住民さんたちの話を聞くことを第一に考えています」

左から布花原明子准教授、伊藤直子教授、石井美紀代准教授

左から布花原明子准教授、伊藤直子教授、石井美紀代准教授

と説明してくれました。学生たちに本物の現場を感じて欲しいとの思いが伝わってくる言葉ですね。

こうした背景があるからでしょう、西南女学院大学の学生は卒業してすぐに保健師として活動することは少ないものの、臨床経験後、訪問看護や行政の保健師として活躍するケースが増えているそうです。なぜそうしたのか理由を聞くと、『あの実習が忘れられなくて』と答える人が多いもの先生たちの自慢です。

現場と教育をつなぐ

もちろん、選択制になってからの実習でも、教員が学生ひとりひとりの学びの状況に合わせた、よりきめ細かに対応する体制も整えています。また、保健師教育に携わっている6人の先生たちの背景がバラエティに富み、県の保健師経験者の伊藤教授を筆頭に、政令市、市町、包括、産業を経験してきた先生たちがタッグを組み、現場と教育をつなごうとしていることも注目に値します。

看護学科全体の特長に目を向けると、第一にあげられるのは急性期に力を入れていることです。看護師課程の実習は県内だけでなく、県外の救急救命センターに足を運ぶこともあります。同大学には助産別科(1年課程)があることから、をウイメンズヘルス分野も強化。遺伝看護学やジェンダー論を学ぶこともできます。
もうひとつ、先生たちの異動が少ないため、卒業した学生が気軽に寄ることのできる、アットホームな安心感もあります。

先生からのメッセージ

伊藤直子教授から受験生に向けたメッセージです。
「看護学科では、人に対して興味関心のある方に入って欲しいと願っています。これはとても大切なことです。人とつながりを持つことに喜びを感じられたら、幸せだと思うのです。それから、私たちの領域では公衆衛生看護と在宅看護の両方に取り組んでいますので、高齢者のターミナルや特定疾患の方と接します。すると、どうしても『死』と向き合うことが増え、必然的に『生きる』ということを考えなければいけなくなります。あらためて看護観をどう考えるのか、私たちとしっかりディスカッションしていきながら進んでいきましょう」

(大学データ)
西南女学院大学保健福祉学部看護学科公衆衛生看護・在宅看護領域:伊藤直子教授/布花原明子准教授/石井美紀代准教授/鹿毛美香助教/佐藤優助教/水原美地助手
定員:90人
保健師コース:18人
保健師コース最終選抜時期:2年前期終了時

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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