女性に負担が偏っている
産んで欲しい夫と、産みたくない妻
「20~40代の恋愛・結婚・家庭観」に関するアンケート調査結果
その中にとっても気になる調査結果があります。「既婚子供無し」の「子供はほしくない」の割合について。男性は20代では4.1パーセント、30代では23.5パーセント、40代では66.7パーセント。女性は20代では20.9パーセント、30代では48.5パーセント、40代では71.4パーセント。20代、30代における男女差が特に大きい。「産んでほしい夫と、産みたくない妻」という構図が見て取れるのです。
妊娠・出産・育児にともなうキャリア形成への影響、心身への負担が女性に大きいことを反映しての結果ではないかと読み取れます。「子供ができると自由な時間がなくなる」。「子供ができると今までのようには仕事できなくなる」。一般にはそう言われます。その負担が、自分だけに追い被さると思うから、女性は妊娠・出産に慎重にならざるを得ないのではないでしょうか。
一般に、「女性は結婚・妊娠・出産・育児を機に、選択を迫られる」と言われます。たしかに自分の体内に命を宿し、出産できるのは女性だけです。しかし、結婚は男性にとっても人生のターニングポイントですし、育児は男性にだってできます。女性だけが選択を迫られるのはそもそもおかしいのです。
男性の多様な生き方への理解も必要
これからの男性には、たとえば、パートナーの女性が妊娠したとき、彼女にキャリア上のチャンスがめぐってきているのであれば、自らが育児休業を取得して育児を担当し、彼女のキャリアをサポートするなどという柔軟な発想が必要でしょう。実際にそのような選択をする男性は絶対数は少ないですが、増えては来ている印象があります。私にも知り合いが何人かいます。勇気のある決断だと思います。しかし、そのような男性への理解は十分とは言えません。「ヒモ」「男のくせにオンナに喰わせてもらってる」など。女性の中にも「やっぱり夫には大黒柱になってもらわなきゃ」という意識を持っている人が少なくないのではないでしょうか。本人がそうは思っていなくても「あそこの旦那、仕事していないんですって! 奥さん大変ね」などと同情の目で見られてしまったりということがあるのではないでしょうか。
武蔵大学の田中俊之さんは著書『男がつらいよ』(KADOKAWA)の中で、次のように指摘します。
さきほど、誰もが「卒業→就職→結婚→定年」という道を歩めるわけではなくなったと指摘しました。それにもかかわらず、男性に正社員以外の働き方が認められる気配はありません。男子学生はフリーターにだけにはなるまいと必死に就活をしますし、中高年の男性がスーパーでレジ打ちのパートをしていたら、「かわいそう」と同情されてしまいます。
本当の意味で女性への理解があり、「キミが望むなら、僕は専業主夫になってもいいよ」という優男がモテる世の中ではありません。それではやっぱり男性も、「バリバリ仕事してガッツリ稼いでこなくちゃ」という意識から抜け出せません。結婚しようが、子供ができようが、ライフスタイルの再設計をしようという発想にもなりません。
結果、やっぱり妊娠・出産・育児の負担は女性ばかりにいってしまうのでしょう。男性の意識が変わらなければいけないのはもちろんですが、女性自身の意識も変わらないと、変化は加速していきません。
卵が先か鶏が先かみたいな話です。要するにどっちも同時に変わらなきゃいけないってことです。「オトコが変わらないから……」「オンナはやっぱり……」みたいな話は不毛であるどころか、状況をさらに硬直化します。
人のせいにばかりしていないで、まずは自らを変えること。その積み重ねで、「子供がほしい」人の割合の男女差がなくなっていけばいいですね。
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