タテの変化からヨコの変化へ
2試合連続の7回、無四球、省エネ(87球)では、メディアも褒めるしかない。ニューヨーク・タイムズ、ニューヨーク・ポスト、デイリーニューズなど地元紙はこぞって田中を称賛し、とくに昨年7月と今年4月の故障の際に「トミー・ジョン手術は避けられない」と指摘していたポストのケビン・カーナン記者が、「タナカは手術を避け、ヤンキースに新たな息吹をもたらせてくれる」と主張を変えたのが印象的だった。新たなチャレンジを見せた復帰2試合ともいえる。田中といえば、ストレートとスプリット。もちろん、スライダーとツーシームも投げるが、どちらかといえばスプリット中心の“タテの変化”が持ち味だった。ところが、スライダーとツーシームを多投する“ヨコの変化”を主にした。
しかも、フロントドア(打者の内角ボールゾーンからストライクゾーンへ入ってくる球=左打者ならツーシーム、右打者ならスライダー=でストライクをとること)とバッグドア(打者の外角ボールゾーンからストライクゾーンに入ってくる球=左打者ならスライダー、右打者ならツーシーム=でストライクをとること)を有効に使ったのだ。これぞ、昨季までチームメートだった黒田(現広島)の最大の武器。
「投げていたのを見ていました。(投球の)幅を広げたかったですから」と田中は黒田の“置き土産”で復活を遂げたともいえる。
いずれにしても、たった2試合で完全復活を果たした田中。またしても全米中を巻き込むセンセーショナルなピッチングを続けてくれそうだ。