シェンゲン協定と実際の出入国の問題について
現在、イギリスとアイルランドを除くヨーロッパのほとんどの国では、「シェンゲン協定」と呼ばれる取り決めにより、協定加盟国内での出入国審査が原則としてありません。これは、EU域外の国民でも同じです。我々日本人も、例えばスペインから陸路ではるばるバルト三国のエストニアあたりまで行っても国境でのチェックはありません。シェンゲン協定について、詳しくはこちら
しかし、出入国審査がないのはシェンゲン域内の移動であって、最初にシェンゲン加盟国へ入国する時には入国審査があり、域外へ出るときには出国審査があります。
今回のテーマは、ヨーロッパ出入国自由化の流れの中で起こりうる、一部の旅行者(つまり我々日本人など!)へのしわ寄せについて。最初と最後の出入国手続きまでもが簡略化されてしまったり、国によって温度差があったり、さらにイギリス、アイルランドや東欧の非シェンゲン加盟国が絡むことによって話はややこしくなり……。様々な問題が起きています。
パスポートに入国スタンプがないと……
入国スタンプを押されずに入国してしまうということは、いつどこで入国したのか証拠がないということです。つまり、外見上不法入国と変わらなくなってしまいます。したがって、現地の入国審査官が考える以上に、我々はこの事を重く受け止めるべきです。警官の職務質問時にはパスポート、入国記録がチェックされます
そんなことになる前に、我々にできること、万が一の時の対処法などを考えてみたいと思います。
現状、日本国パスポートがどう扱われているか
これは私の学生達から聞いた話なのですが、彼(女)らがヨーロッパ研修でイタリアへ行った時の入国審査の際、パスポートにスタンプを押される人と押されない人がいたそうです。女子学生の中にはスタンプではなくリップサービスをもらったという人も……明るく大らかなイタリア人。パスポートチェックも大らか?! (写真はカーニバルの様子)
それも多少あるような気がしますが、答えはNoです。なぜなら押すべきパスポートにはしっかりとスタンプが押されるはずだからです。問題の背景は、日本のパスポートがスタンプを押さなくても大丈夫な(少なくとも審査官はそう思っている)パスポートになりつつある(なっている)ということです。これってどういうことなのでしょうか?
EUにおける海外パスポートの区分
EU諸国へ入国してくるパスポートには、大きく分けて三つの区分があると言えるでしょう。一つは「自国民」扱いに近いEU諸国のパスポート、二つ目はシェンゲンビザを取得した上で入国してくる世界の大半の国のパスポート、三つ目は例外的にビザを免除されている日本、アメリカ、オーストラリアなどの、言わば「信頼ある」パスポートです。現在は出入国手続きが省略化されていく過渡期にあると言えるでしょう。どんなものでも過渡期においては現場の混乱を伴うものです。この混乱のしわ寄せが上記三つのどのパスポートに来ているのかが問題です。
しわ寄せは日本などの「信頼ある」パスポートに!
EU市民はすでにそこに住んでいるのですから入国スタンプなんてなくても問題ないですし、ヨーロッパ入国にビザが必要な国のパスポートは、入国時に比較的厳格なチェックを施されますのでしっかりとスタンプが押される可能性が高いです。一方、言わばEU市民に準ずる扱いの日本やアメリカのパスポートが、どっちつかずの宙ぶらりんであるがゆえに、現場の裁量や混乱、時には不手際によってスタンプが押されたり押されなかったりということが現実として起きていると考えられます!また、国によって温度差があるのも確かなようです。どちらかというと、観光客が多い国ほど入国手続を簡便に行う傾向があるようです。
イタリアやフランスのラテン系のノリ? でフリーパス入国したものの、厳格なドイツで問題が発覚する。こんな例はずいぶんとあるようです。確かにヨーロッパは言葉も文化も違う多くの国々の集まりですので、全ての国の現場職員たちにまできちんと意思統一されているとはやはり思えません。
世界的に信頼の高い日本国パスポートでも、入国スタンプは必要です
この問題に関する在スペイン日本大使館からの注意喚起はこちら
実際に被拘留者まで出ているのですから、やはり軽々しく考えられる問題ではないことが分かります。
次は、シェンゲン加盟国の滞在可能日数などの問題について