一部の銘柄に偏っているETF市場
ETFの動向をチェック
同ETFが月間の売買代金に占める割合は7割ですから、残り3割の売買代金が200銘柄超で分け合っていることになるのです。単純に平均すれば1銘柄当たりの月間売買代金は82.5億円。株式市場が開いている日を20日とすれば、1日当たり4125億円の売買代金に過ぎないのです。
実際には単純計算のようにはいかず、たとえば日経平均株価の終値が2万円台に乗せた2015年4月22日ですら、売買が成立しなかった銘柄が30超もあるのです。ETF市場の現状は、見かけは好調に推移しているものの、蓋を開ければ一部の銘柄が活況であるのに過ぎず、ETFが持つ機動性(流動性)はほとんど供給されていない状況と言っても過言ではないのです。
日興アセットマネジメントの5銘柄が繰上償還
かなりの数のETFが人気の圏外に置かれていることから、一部の銘柄しか純資産残高が堅調に増えず、反対に解約が進み純資産残高は減少する状況になっているのです。純資産残高が減少すれば、運用の基本方針に則った運用の継続が困難な状況になるのです。このような状況を背景に、日興アセットマネジメントが運用するETF5銘柄が2015年7月3日を取引の最終売買日として、7月8日に繰上償還となったのです。繰上償還となる5銘柄は、「1316、上場インデックスファンドTOPIX100日本大型株」、「1317、上場インデックスファンドTOPIX Mid400日本中型株」、「1318、上場インデックスファンドTOPIX Small日本小型株」、「1544、上場インデックスファンド日本株式(MSCIジャパン)」、「1556、上場インデックスファンド日経中国関連株50」です(最初の4ケタの数字はコード番号)。
日興アセットマネジメントHPにある「コラムもっと知りたいETF!」のNo35「上場廃止・繰上償還」によれば、上場インデックスファンドTOPIX100日本大型株は2009年6月3日の追加設定以降、他の4銘柄に至っては当初設定以来1度も追加設定が行われませんでした。
上場廃止・繰上償還が増える可能性も
上場廃止、繰上償還が行われるのは5年振りのことですが、純資産残高の減少だけがその理由ではありません。繰上償還に関する税制上の扱いが明確になったからのようです。従来ETFを繰上償還するには、投資家からETF証券を回収して現物株を返却することが前提であったものが、小口投資家である個人投資家に現物株を返却するのは困難になるため、現金(お金)で返却することができるように関係省庁に確認。その後、繰上償還を受けた投資家の税制上に取り扱いが定められたことも、その理由と言われているようです。
個人投資家が繰上償還が予定されているETFを保有している場合、上場廃止までに売却すれば上場株式等と同じ扱いが変わることはありません。仮に上場廃止までに売却しなかった場合、ETFの受益証券が特定口座から外れることになり、償還時の価格が取得元本より高ければ、みなし譲渡所得として確定申告を行う必要があります。
運用会社にとっては投資家の税制上の取り扱いが定められたため、上場廃止・繰上償還を行いやすくなったのは事実。先に述べたように、見かけ上はETF市場が活況であっても、一部の銘柄が賑わっているだけで、その他多数の銘柄の売買代金はお寒いという状況です。
今後も上場廃止・繰上償還は増えると思われてなりません。
投資家は半ば強制的に売却しなければならないのですから、売買が活況ではないETFへ投資する際には、純資産残高を必ず確認すべきでしょう。