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標高3003mの立山・雄山は天候が変わりやすい。(撮影:和田隆昌)


 

春の山はどんなところ?


春は非常に天候が急変しやすく、特に下界が晴れていても「山の天気」はなかなか安定しません。5月になっても降雪のある場所もあり、防寒着や雨具の用意は欠かせません。山の気温は100m上がるごとに0.6℃下がるということをご存知でしょうか? 2000mの山でふもとから12℃下がることになり、出がけにとても暖かいからといって、シャツだけで出かけてしまうと、頂上付近では場合によっては零度近くになり、凍えてしまい、動けなくなってしまうことも考えられます。もしも風が強ければ体感温度はさらに大幅に下がることになります。

またこの季節は、北側の斜面などに残雪の残っている場合があり、アイゼンなどの雪用の装備がなければ滑落などの事故の可能性も大きくなります。また雪の影響により、登山道が分かりにくくなっていることもあり、道迷いによる遭難も起きます。昨年、ゴールデンウィーク期間に奥多摩(雲取山・標高2017m)では複数の行方不明者が出ていて、駅前で遭難者の捜索協力依頼のチラシを配っているところに遭遇しました。(その後遭難者は無事に保護されました)実際に昨年、奥多摩だけで50件の遭難事故が発生しており、低山と言っても油断は禁物です。

山の事故は主に下山時に多く発生します。道迷いの結果、夜間になり身動きがとれなくなってしまうのは一番多い事例ですが、滑落や転倒も体力の落ちる下山時に起きやすくなります。地図やコンパスなどを使用するための知識や習熟度が足りていない、メンバーの体力に合わない無理なスケジュールを組んでしまい、日没までに下山することが出来ないなどが事故・遭難の原因になります。春山の天候の急変に対する認識の甘さ、ビバーク(野営)する際の装備・技術・体力不足などは生死を左右するということを知っておくべきです。


どんな装備が必要なのか


まず、当日の天候に関わらず、上着や防水の雨ガッパなどは必ず用意しましょう。下山不能になった場合に備え、サバイバルシートやカイロなどのビバークの用意もあった方が安心です。また、登山時には常に地図やコンパスは忘れないようにしましょう。事前のコース確認はメンバー全員が十分に行いましょう。山の中ではふもとよりもずっと早く周囲が暗くなります。そして日没に備えてヘッドランプなども必要です。ナイトトレッキングをすると分かりますが、夜の山道は経験者であっても大変危険であり、滑落や事故の可能性が非常に高まります。日が落ちかける前にふもとに着けるように、リーダーはメンバーの中の一番体力の少ない人を基準にして余裕を持ったスケジュールを決めるようにしてください。

日帰りの登山の場合は、つい軽装備になってしまう人が多いかと思いますが、基本的な山の装備とともに非常食(カロリーの高いもの)や携帯の予備バッテリーなども忘れず用意しておきましょう。スマートフォンは地図代わりにもなり便利ですが、肝心の時に電池切れしていては役にたちません。必ずその山域の通信状況なども事前に確認しておきましょう。またコースに急坂や岩場などが含まれる場合は、必ずヘルメットも装着しておくべきです。そして少なくともリーダーは不測の事態に備えて、救急用品や薬も用意します。さらにメンバーに初心者がいる場合は、リーダーが装備や準備を事前に十分に説明しておくこと。そして他のメンバーはリーダーに依存しすぎないことも必要です。


登山届を書こう


2014年、御嶽山の噴火により多くの人が犠牲になりました。この時、提出されていた登山届が救助隊の安否確認や捜索救助活動に大きく役立ったことから、各山域で登山届の義務化が進んでいます。これまで登山届は任意であったために、遭難救助を要請した人の約8割は登山届を出していませんでした。今後は義務化、罰則規定も随時進んでいくことと思います。登山届はまず登山計画を立てることから始まります。あらかじめ登山計画を立てておいてメンバーと共有することで、無理な計画をたてずに体力・装備・技術に合った登山を楽しむことが出来ます。さらに万が一の遭難事故にも素早い対応が可能になります。

登山届に必要な内容は、パーティの名称及び所在地、緊急の連絡先、目的の山域や山の名称、登山の期間、日程・行動予定、参加者名簿、装備や食糧などのリスト、持参する通信手段(携帯電話番号)などで、日本山岳協会や管轄の警察署のホームページからダウンロード出来ます。メンバーと共有した上で家族に渡して、現地の登山届ポストや登山地域の警察署などに提出します。オンラインで受付可能な地域もあります。登山届がない場合は、たとえ山岳保険に入っていても事故や遭難時に保険金が支払われないという事も知っておきましょう。



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