ハーレーダイナはひと粒で二度美味しいビッグツイン
<目次>
CVOやストリートという新しいスタイルを含めると、計8つのカテゴリー(ファミリー)から成るハーレーダビッドソン。そのなかで6種類のモデルを持つのが、今回紹介するダイナというファミリー。“スポーツ走行が楽しめるビッグツイン”という位置づけで、エンジンをツインカムとしながら高剛性フロントフォークとツインショック構造のフレームを持っていることがその特徴です。ダイナの祖先となるFX スーパーグライドが登場したのが1971年。それまで大陸横断を目的としたビッグクルーザー(現在のツーリングモデルやソフテイル)か、ストリートシーンを軽快に駆け抜けるXL(現在のスポーツスター)のいずれかしかなかったラインナップに、“クルーザーのエンジンを持つスポーツバイク”というそれぞれの良いとこ取りのモデルとして生み出されたのです。手がけたのは、創業者のひとりウィリアム A.ダビッドソンの孫ウィリアム G.ダビッドソン。まったく新しい考え方から生まれたカテゴリーゆえ、デビュー当初は振るわなかったというFXシリーズですが、時代の流れとともに市民権を獲得した同カテゴリーは、ウィリーGとともにハーレーダビッドソンに欠かせない存在へとなっていきました。
ハーレーダイナの40年の歴史を持つモデルを解析
1971年にFXがデビュー。以降、ショベルヘッドエンジンをベースにFXSなどが開発され、FXRを境にエヴォリューションエンジンへと以降。その後、ツインカムエンジン、フューエルインジェクション化、大径化を経て現在に至る
1971年のデビューから数えると、40年以上の歴史を持つダイナ。その間、さまざまな姿へとモデルチェンジをはたしてきました。そんなダイナモデルのこれまでの流れ(変化)をざっとまとめてみました。
[1971年]
ショベルヘッドエンジンのFX スーパーグライドがデビュー
[1977年]
不朽の名車 FXS ローライダーがデビュー
[1985年]
新型エンジン『エヴォリューション』がFXモデルに搭載
[1999年]
新型エンジン『ツインカム88』がFXモデルに搭載
[2006年]
49mmフロントフォークに高剛性フレーム、リアタイヤが160mm化
ダイナ全モデルがフューエルインジェクション(電子制御)化
ほかにも細かい変更点はありますが、同ファミリーにおける大きな流れはこんな感じかと思います。エンジンの新型化に伴う進化は当然のことながら、交通環境や道路事情に合わせた変化も無視できません。
新車を買うべきか、中古車にすべきか……。ハーレーダビッドソンのみならず、オートバイを購入する際に当たる問題ですが、ハーレーダビッドソンのなかのダイナファミリーから選ぶにあたって、知っておきたい基礎知識を次ページにてご紹介します。
選ぶタイプによってキャラクターが大きく異なる
いわゆる初期型となるショベルヘッドエンジン搭載モデル(旧車)となると、かなり上級者志向となるので、ここでは1985年のエヴォリューションモデル以降について整理しましょう。大きく分けると、【1】 1985~1998年
・エヴォリューションエンジン搭載
・キャブレター仕様
・5速トランスミッション
【2】 1999年~2005年
・ツインカム88エンジン搭載
・キャブレター仕様
・5速トランスミッション
【3】 2006年
・ツインカム88エンジン搭載
・フューエルインジェクション(電子制御)仕様
・49mmフロントフォークや高剛性フレームなど車体が大径化
・5速トランスミッション
【4】 2007年~
・ツインカム96エンジン搭載
・フューエルインジェクション(電子制御)仕様
・49mmフロントフォークや高剛性フレームなど車体が大径化
・6速トランスミッション搭載
という区分になります。エンジンの排気量のみならず、車体も大きくなっているのです。これは、アメリカや日本の道路環境がますます発達したことで、より快適なハイウェイライドが楽しめるようになったことから、オートバイとしてのクルージング能力を高めるために進化したということ。つまり、後期型になればなるほど、高速走行の快適性はアップするわけです。現行モデルにあたる【4】の6速トランスミッションなどはその最たる例で、ツーリングモデルやソフテイルモデルにひけをとらないクルージング能力を有しているポイントです。
一方、大径化という進化と引き換えに失った要素もあります。ひとつが、カスタムです。正しくは、カスタムのバリエーションに限りが出てきたということ。ダイナファミリーの祖先であるFX スーパーグライドが生まれたのは1971年で、一世を風靡した映画『イージー・ライダー』の封切り(1969年)から約2年後のこと。いわゆる“ファクトリーチョッパーモデル”という呼び名とともに世に送り出されたFXです、チョッパーの語源であるチョップ(削る、削ぎ落とす)などからも分かるとおり、カスタム向きと言われる細身のスタイルが魅力でした。
しかし、【3】2006年の全面的な改変により、ダイナのサイズ感はより大柄に。オートバイとしての性能を高めた反面、以前のようなシャープなスタイルは失われてしまいました。昨年発表された新型ローライダーは、1978年のオリジナル ローライダーのグラフィックを再現したモデルとして注目を集めました。その一方で、オリジナルにはオリジナルの味わい深さ、風格などが備わっており、いくら模しても超えられない壁があります。
旧モデルには旧モデルの、新モデルには新モデルそれぞれにメリットとデメリットがあるダイナ。徹底的に本物志向となるか、快適なライドフィールを優先するか。ここも購入車両を決めるうえでの大きなポイントとなってくるのです。
ハーレーらしさを求めるならエヴォがオススメ
ハーレーダビッドソンに乗るのであれば、エヴォリューションエンジン搭載モデルである【1】がおすすめです。誰もが思い描く、いわゆるハーレーらしいドコドコという鼓動感を持ち、それでいて壊れにくい上質なエンジン。ショベルモデル直後ということでボディ自体も大きくありませんから、カスタムするのにも最適。クルージング能力はツインカムには劣るかもしれませんが、それを補って余りある魅力的なタイプだと思います。年を追うごとにモデルの精度は上がっていっているので、90年代後期のエヴォリューションモデルがあれば、目をつけておきたいところですね。
続いては、そんなダイナのカスタム法とベース車両選びの重要なポイントをご紹介します。
ハーレーダイナはカスタムのバリエーションが豊富
スポーツライドが楽しめるビッグツインというキャッチからも、比較的日本人にも乗りやすいサイズ感なダイナモデル。年式が古いモデルになればなるほど、チョッパーライクなスタイルがよく似合いますが、現行モデルとて手の入れ方次第でガラッと雰囲気を変えられます。
2015年ラインナップは計6台で、注目を集めた復刻版FXDL ローライダーをはじめ、限定モデルのレーサー型 FXDBB ストリートボブリミテッド、そのベースモデルであるチョッパーモデル FXDB ストリートボブ、フレイムスが注目を集めるチョッパーモデル FXDWG ワイドグライド、問答無用の直線番長 FXDF ファットボブ、そして快適ツーリング仕様のFLD スイッチバックから成ります。
>>2016年のラインナップはこちら
ノーマルスタイルの多様化は近年のハーレーダビッドソンでは珍しくない傾向で、どんなライフスタイルにも合わせられるダイナモデルの許容量の大きさを表しているとも言えます。よりリアリティの高いチョッパースタイルを目指すのであれば、リジッド風フレームを備えるソフテイルモデルをおすすめしますが、「ある程度の走行性能を兼ね備えたビッグツインに乗りたい」という方にはダイナが最適でしょう。伝統的なツインショックのフォルムも、ハーレーらしい味わいあるものですから。
2005年以前のダイナモデルだと、カスタムのバリエーションは豊富。その反面、古くなればなるほど中古車の程度に開きが出てくるので、「古いダイナモデルをベースに、自分だけのカスタムバイクを手にしたい」という方は、信頼できるディーラーやカスタムショップに良い車両を選んでもらうのがベスト。
信頼できるショップを探すことが、ベストなバイクを買う最善の道
これはダイナに限らず、どのオートバイを買ううえでも言えることですが、信頼できるショップを探すことが、自分にとってベストなバイクを買う最善の道です。その基準は、自分で情報を集め、そのうえで気になるショップに自ら足を運んでみること。対応してくれるスタッフに自分が求めているものをすべて話し、「親身に対応してくれているな」とご自身が感じ取れれば、そこは信頼に足るショップだと思っていいでしょう。ネットの口コミだけで判断したり、安いからとネットオークションで買おうとすると、あとでイヤな思いをする……なんてことも。バイクに詳しくない人をサポートする知識と審美眼を持つショップ探しこそが、もっとも重要なことなのです。
モデルによってキャラクターが変わるユニークなファミリー、ダイナ。選び方次第でさまざまな表情を見せてくれるビッグツインモデルは、ライディングはもちろん、所有することの喜びも実感させてくれるものと言えるでしょう。