問題の根っこは曲げて伝えられていることがよくある

増え行く少年犯罪。「自分とは違うから」と安心してはいけない現代の重要な課題

増え行く少年犯罪。「自分とは違うから」と安心してはいけない現代の重要な課題

世間で何か悪いことが起こると、人々はその原因を探りたくなります。そして自分にはない原因を見つけると、ほっとします。

子育ての分野でもこれと似たことがよく起こっています。たとえば、子供の問題行動、非行、ひいては犯罪……。このようなことが身の回りで起きたり、大きくニュースで取り上げられたりすると、

「なぜこの子は○○したのか?」
「家庭環境はどうだったのか?」
「親は何をしていたのか?」

ということに目が向けられ、他と違う特徴が見つかると、「だからこうなったのだ」とメディアもここぞとばかりに、その部分をクローズアップします。

私は犯罪心理を学び、今は子育て心理学が専門です。だから、親の無責任な言動や行動には憤りを感じ、子供のことを顧みない身勝手な行動には腹が立ちます。また、不適切なしつけ、虐待、ネグレクト、険悪な家庭環境など、親としての質に目を向けるのは正しいと思います。しかしその中でも、間違って取り上げられがちだと感じるのが「ひとり親家庭」。


「ひとり親家庭」への誤解

まるで、ひとり親であることが問題の要因のようにクローズアップする、あれはいかがなものでしょう。非行心理の研究では、「1人で子供を育てる」ということが、子供の問題行動の直接的な要因ではないということが立証されています。上に挙げた「不適切なしつけ」「虐待」「ネグレクト」のようなリスクファクターと同列ではないのは明らかです。

離婚率が年々上がっている昨今、1人で子育てをしている方はたくさんいます。もちろん、簡単に結婚して、子供を産んで、上手く行かないから離婚、というのは大人の身勝手な行動ですが、世の中には、もっと様々な理由でひとり親になった方々がいることを忘れてはいけないと思うのです。何らかの避けられない理由(DV、死別など)で1人になって懸命になって子育てしているのに、その質を見ずに、うわべだけでひとくくりにしてしまうのはあんまりではないでしょうか。

子育てで求められるのは「質」です。両親が揃っていても、いがみ合っていたり、子供に愛情を注いでいないなど、質がともなわなければダメなのです。要は、1人だとダメ、2人いればOKという問題ではなく、ここで問うべきは、「子供に”精神的な孤独”を感じさせていないか?」ということ。


日本の子供の孤独感は世界で何位?

2007年に国連児童基金(ユニセフ)が行った諸外国の子供達の幸福度調査があります(*)。当時話題になったので記憶にある方もいらっしゃるでしょう。この調査で明らかになったのは、日本の子供達はずば抜けて「孤独」ということ。

以下、2007年2月14日の読売新聞からの抜粋です。
国連児童基金(ユニセフ)は14日、先進国に住む子どもたちの「幸福度」に関する調査報告を発表した。それによると、子どもの意識をまとめた項目で、「孤独を感じる」と答えた日本の15歳の割合は、経済協力開発機構(OECD)加盟25か国29.8%と、ずば抜けて高かった。日本に続くのはアイスランド(10.3%)とポーランド(8.4%)だった。

「自分が孤独だと感じますか?」の問いに「はい」と答えた子供の割合(%)

「自分が孤独だと感じますか?」の問いに「はい」と答えた子供の割合(%)



「孤独感」こそ問題行動のリスクファクターとして特別視すべき

他の国々の一桁の数字が並ぶ横で、日本だけが抜きん出ているこの結果、どう思われますか? 私は最近の少年犯罪の増加は、この「孤独感」が影響を及ぼしていると考えています。というのも、「健全な所属感」が子供の非行を防止する大事なファクターの1つであることを、非行研究の権威・ハーシ博士が見出しているからです。

「自分は守ってもらっている」
「自分には守るべきものがある」

この2つの引き合う力こそが、子供達の逸脱を防ぐと論じています。それを踏まえると、その対極にある「孤独感」は、問題行動のリスクファクターになりやすいと考えられるのです。

要は、ふたり親でも、ひとり親でも、子供が孤独を感じていれば逸脱のリスクが上がり、孤独を感じていなければリスクは下がる、というわけです。

どんな家族形態であれ、子供がひとりぼっちになっていないか、これを優先事項として考えていくことこそ、大きな意味での非行防止につながっていくはずです。                            

*出典:UNICEF Innocenti Research Centre(2007)「Child Poverty in Perspective: An Overview of Child Well-being in Rich Countries」より

http://www.unicef.or.jp/library/pres_bn2007/pdf/rc7_aw3.pdf





※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※乳幼児の発育には個人差があります。記事内容は全ての乳幼児への有効性を保証するものではありません。気になる徴候が見られる場合は、自己判断せず、必ず医療機関に相談してください。